隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1142.謎解きはディナーの後で

2011年03月14日 | ユーモア
謎解きはディナーのあとで
読 了 日 2011/03/04
著    者 東川篤哉
出 版 社 小学館
形    態 単行本
ページ数 255
発 行 日 2010/09/07
ISBN 978-4-09-386280-6

 

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て今回は、ユーモア本格推理ということで、大分評判を呼んでいる本書を選んだ。僕は書店の店頭で、タイトルから何とはなしに、安楽椅子探偵をイメージして、読んでみたいと思ったのだ。
幸い1月に高校時代のクラスメイト、磯野氏(かずさDNA研究所の常務理事で理学博士)から頂いた図書カードや、ガソリンスタンドのポイントカードで交換した商品券などがあったので、アピタの中の熊沢書店で本書を手に入れた。
実は僕が本書にひかれたのは、タイトルだけでなく写真では取り除いてあるが、本書には帯がかかっており、そこには「失礼ながら、お嬢様の目は節穴でございますか?」という、本文中の登場人物のセリフと思えるコピーが記されており、目を引いたのだ。
セリフの語調からすれば、あまりにも無礼な物言いが気になるものの、良家のお嬢さんに対する執事のセリフであろうかと思われるが・・・・。
名探偵の執事の話では、アイザック・アシモフ氏の「黒後家蜘蛛の会(Black Widowers)」が有名だが、反対にお嬢様の名探偵ぶりには、北村薫氏の「覆面作家シリーズ」がある。黒後家蜘蛛の方は、典型的な安楽椅子探偵だが、覆面作家シリーズの方は家を出て体を使っての探偵だから、安楽椅子型ではないのだが、推理の組み立て方が一部分でそうした傾向を示しているところが面白く、ユーモアという観点からすれば、こちらの方が近いか。

 

 

物語の主人公は、お嬢様・宝生麗子(ほうしょうれいこ)と、執事兼運転手の影山、そして警視庁国立署の捜査一課の風祭警部たちである。
宝生麗子は大企業・宝生グループの総裁宝生清太郎の一人娘で、正真正銘のお嬢様なのだが、彼女はなんと警視庁国立署の捜査一課に所属する刑事なのだ。事件が起きる都度、風祭警部とともに捜査にあたる刑事という設定に、なんとなく胡散臭さは感じるが、かてて加えて、捜査の指揮を執る風祭警部もまた、風祭モータースという割と大きな会社の御曹司ということで、殺人現場にはシルバーメタリックのジャガーで乗り付ける。
とまあ、そんなところがユーモアミステリたるところなのか!
そして執事というから初老、もしくは白髪の老人をイメージするが、これまた予想を裏切って、30代半ばの青年執事なのだ。この執事だが、どういった経歴で、あるいはどんな経緯で執事になったのかなどということは一切不明だ。この執事、お嬢様に対して普段は執事らしく慇懃な話しぶりが、時に帯のキャッチコピーのような失礼極まる物言いになるところは、なぜなのだろうと考えさせる。
ストーリーは事件発生から、風祭警部とお嬢様刑事が現場に駆けつけ、事件の状況を把握、そして帰宅してからお嬢様の事件の概況を聞いて、執事が謎を解くといったパターンが主流を占め、それ以外の要素は極力排しており、純粋に推理を楽しませる方向付けがされている。

 

 

のような形式は従来も数多く発表されており、本書が初めてではないのだが、簡略化された人物像や、それぞれの生活を感じさせないなどの描写が、新しい読者を開拓したのか?
流れは違うものの、ある面では刑事コロンボに見られるように、あるいはそれを模した?古畑任三郎同様、事件とその真相を探ることだけに的を絞ったドラマが語られるという点で、似ているかもしれない。
だが、総体的な感想を言えば、まあまあ面白くなくもないのだが、読者というのはわがままなもので(ことによったら僕だけか?)、特に評判の高い小説を読むときには、それなりに期待も高くなるというものだ。それが、期待ほどでもなかった時には、「なんだ!大したことはないではないか」というようなこととなる。帯に書かれたキャッチコピーは、あくまで宣伝のためのコピーなのだから、必ずしも内容と合致しているわけではないと、承知してはいるものの、その通りであって欲しいという欲求も生まれる。
まあ、今までに読んだ読者にとっては、この作品集が期待通り面白かったのだろうということで、納得することにしようか。

 

初出一覧
# タイトル 紙誌名 発行月・号
1 殺人現場では靴をお脱ぎください 文芸ポスト 07年冬号
2 殺しのワインはいかがでしょう きらら 09年2-3月号
3 きれいなバラには殺意がございます きらら 09年4-5月号
4 花嫁は密室の中でございます きらら 09年6-8月号
5 二股にはお気をつけください 書き下ろし  
5 死者からの伝言をどうぞ 書き下ろし  

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