水産政策の改革については、水産庁が9月20、21日の両日、法案の検討状況を都道府県水産担当者に説明会を開く。同じ内容を2グループに分けて説明するもので、連続した検討内容2部構成で説明するものではない。都道府県の水産担当者は、事前に内容の具体的な情報提供を受けているわけではなく、様々な憶測も出ている。
水産庁は「現場の理解を得るために丁寧な説明」に努めるが、内容に関しては「上意下達」であり、都道府県に対しても一方通行のようだ。そのため、沿岸域における漁業権の許可や海面利用秩序について免許、調整を任せされることになる地方行政は戦々恐々としている面も。他方、法案化の過程では、省令や通達など煩雑な決めが必要なので、少し議論をスローダウンすることを期待する向きもある。
これを受けて全漁連も9月25日の東京を皮切りに大阪、福岡の3ブロックで水産庁の改正法案の検討状況をテーマに、対応を協議する。漁協系統の方向は難しい面をもつ。規制改革推進会議や日経調第二次高木委員会(小松委員会)の動向を考えると、農協の二の舞は避ける観点から水産庁、全漁連の「あうんの呼吸が大事」という理解をしている系統人は、水産庁の荒っぽい手法もやむを得ないと見ている。
新しい自民党総裁就任、内閣改造などの政治日程を経て、10月下旬には災害復旧など補正予算や法案を議論する臨時国会が開かれ、水産政策の改革法案も提出される予定。今のところ、漁業法、水産資源保護法、TAC法(海洋生物資源保存管理法)、水協法の「大幅改正および法律の統廃合が行われるのでは」との見方が聞かれる。多くの地方の漁協系統では、今回は「浜が要望した改革ではなく、上からの改革」。しかも「内容決定のスピードが速く、プロセスも従来とまったく異なる」と当惑を隠せない。下からの議論の余地も時間がなく、方向性をめぐる議論より、漁業の成長産業化を実現する予算や政策の獲得に注力する方針に切り替えざるを得ない状況も予想される。
実際に浜では、東京での議論(自民党、水産庁、全漁連のやり取り)が伝わりにくく、法制度の議論は身近には感じられない。養殖業を行う特定区画漁業権や漁業権の優先順位の廃止などは、5年後の2023年にならないと実行されないため、その影響をイメージアップするのが難しい。水産庁は説明会での主な質疑をまとめたQ&Aをホームページに掲載したり、長谷長官の肉声をユーチューブで流すなど、いろいろと手回しがいい割に、説明の内容がいまいち説得力に欠ける。やはりもう少し、体系立った「漁業の成長産業化」構想を専門家を交えてやるべきだったのでは?そうでないと、3,000億に拡大した予算が結局、つぎはぎの項目にタレ流され、総合的な効果を出さずに終わる可能性もある。
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