年末閣議決定された31年度予算と30年度補正予算は、漁協系統・水産団体にとってどんな評価だったのだろうか?
11月〜12月にかけての臨時国会で、改正漁業法が成立した。水産庁が策定し、政府が認めた「水産政策の改革」にほとんど沿った中身で法案を国会で通した。強行採決こそなかったが、それに近い荒っぽい国会運営に終始し、衆参の農林水産委員会ではとても十分な審議が尽くされたとは言いがたい。
改正漁業法は、資源の数量管理を強化するTAC魚種の拡大、IQ(船別割当)の導入、沿岸漁場への民間参入を促す漁業権の優先順位および漁協が管理する特定区画漁業権の廃止、海区漁業調整委員を公選制から任命制に変えるなど、かつてない法制度の転換が行われる。首相が標榜する戦後レジームから脱却する70年ぶりの大改革が断行される。
漁業法から「民主化」の文字は消え、立法事実(法改正をする必要、現実的な背景)は明確化しなかった。水産庁は、詳細はすべて今後2年かけて整備する政省令で決めると何度も説明した。既存の漁業権を「適切かつ有効に活用」している漁協組合員には引き続き漁業権は安堵されると約束した。
これだけの法的な権利の後退を飲んだ漁協系統は、まさに断腸の思いだった。その代わり、概算要求で水産庁が出した3千億円は絶対に確保してほしいというのが本音だったと思う。
結果はどうだったのだろうか?当初(2,167億円)と補正(877億円)を合わせた水産予算規模は3,045億円。これに「既存基金の活用拡充分や他局計上の水産関係予算」を加えた総額で3,200億円と発表されている。前年度の30年度当初と29年度補正の合計は2,327億円だ。正規の予算3,045億円はそれに比べ1.3倍にすぎない。実は前年度の倍率も当初(1,772億円)と補正(TPP対策関連555億円)の合計は同じだった。
漁協系統は「騙された」のか?当初予算対比では2割程度増えたので、全く成果がなかったとは言えないが、補正はあくまで補正で、次年度にどうなるかはわからない。トランプ大統領の暴走で、株価、為替は乱高下し、燃油価格も上昇している。消費税を10月に増税した場合、景気対策でまた補正が組まれるかもしれない。しかし、当初予算で3千億円を確保し、改正漁業法の影響が続く今後半世紀くらいは、それ以上の予算規模を続ける。お金で換算すれば、それくらいの価値に相当する譲歩だったはずである。
沿岸漁場の将来を安く売ったツケが、新たな漁業の担い手に重くのしかからないよう改正漁業法の政省令はしっかり疑念を解決し、浜の意見が反映されるような歯止めをかける必要がある。
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