水産北海道ブログ

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『図解 知識ゼロからの現代漁業入門』濱田武士監修(家の光協会)

2017-11-01 18:53:01 | お知らせ

 漁業権開放など規制緩和の論調が強まる中で、新聞やテレビでもよくわからない…漁業現場の動きや背景にある制度、仕組みはどうなっていのか?

そんな疑問に答える。日本漁業の「これだけは知っておきたい!」基礎知識と最新動向がよくわかる!そして一般教養、ビジネスに役立つ!へぇー、本当?

『図解 知識ゼロからの現代漁業入門』を監修した濱田武士さん(北海学園大学教授)に聞いてみた。

ーこの本を書いた理由はなんですか?

 昨今、漁業の改革論が盛んになっています。そのことは悪いことではないのですが、よく聞いていると「漁業の基本」が抜け落ちている内容も少なくありません。「漁業の基本」を知るには、本書で取りあげているような歴史や現場に根付いている仕組みをきちんと理解することが大切です。基本が抜け落ちた議論は空論になってしまいます。改革論がそうならないように願うとともに、本書がこれから漁業のことを学ぶ方々にとって、役立つ一冊になれば幸いです。

ー漁業の改革論とはどんなものですか?

 漁業は海外では成長産業なのに、日本では衰退産業だとして、改革が必要だという議論があります。内閣府の規制改革推進会議においても海外で進んでいるような養殖業への企業参入をうながすといったところが論点となり、次いで制度改革論として、特定区画漁業権の優先順位についての規制改革が的になると思います。

ー実際の動きはありますか?

 東日本大震災の被災地では、東日本大震災復交特別区域法第14条において特定区画漁業権の優先順位の緩和が可能となり、2013年の免許更新において、宮城県で優先順位第1位の漁協からの免許申請が退かれ、直接企業に免許されるという事例が1件のみ実現しました。この1件は、「未来の水産」をつくるということを大義名分にして、周囲の漁民の理解を得ないまま、県知事主導のもと行政が強引に推し進めたため、地域社会に暗い影を落としました。

ーどうすればいいのですか?

 漁場は公有水面です。漁場利用者が漁場をどのように使うか、そして漁場を使っていることに対して労力や金銭をどう負担するかは、すでに利用している漁場利用者の慣習を参考にせざるを得ず、新たな利用のあり方を模索するのならば、漁場利用者が集まり民主的なルールに基づいて考えるほかありません。その受け皿として漁協があるのですから、参入企業はそのメンバーになるのが最良なのです。

ーどうしてそうなのですか?

 漁業改革の議論の多くはこうした基本的な事柄が理解されていないまま進められています。漁場における利用者間にある利害関係の問題・課題は普遍的なものがあります。詳しいことはこの本の「第2章漁業を支える組織、制度を知る」の「3. 漁業権」のところを読んでいただきたいと思います。

ー今は資源管理や養殖が万能のように語られていますね?

 様々なメディアで頻繁に語られる資源管理の強化や養殖の促進は、これからも漁業の未来を決める大事な要素です。しかし、そのことだけで未来が決まるわけではありません。歴史を介して形成された漁業、水産業に生きる人々と魚食文化を、改革によってどう活性化させるかがもっとも肝要なのです。これが本書の制作に当たり、思い込めた点です。

(以上は仮想インタビューです。もっと知りたい方は本書を読んでいただくか、直接、濱田先生にお聞き下さい)

【構成】
第1章 日本の漁業の特徴を知る
第2章 漁業を支える組織、制度を知る
第3章 漁業の仕事と経営を知る
第4章 日本の養殖と栽培漁業を知る
第5章 水産物の流通・消費を知る
第6章 水産物と国際関係を知る
第7章 漁獲資源の保護と環境保全を知る

定価(税込)1,728
発行日2017年11月1日
判型A5判 212ページ
ISBN978-4-259-51864-6

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