水産北海道ブログ

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道水産物加工連「かずの子の日」制定記念初イベント 三國シェフ「味覚の授業」や「親子料理教室」

2016-05-02 16:57:07 | ニュース

 

 子孫繁栄の縁起物・数の子をもって食べてもらうと、道水産物加工連(加工連)は「こどもの日」の5月5日を「かずの子の日」に制定した。それを記念した初のイベントが4月30日、札幌市中央卸売市場で開催された。加工連の中陳憲一理事長が制定の理由などを説明し、増毛町出身の世界的な料理家で数の子親善大使も務める三國清三シェフの「味覚の授業」、数の子を使った「親子料理教室」を行って優れた健康食品であることをアピールした。イベントに参加したのは、小学3年~6年の児童21人とその親。テレビ局など報道陣も多く詰めかけた。

 すでに日本一の数の子生産を誇る留萌市では、学校給食に数の子を使ったメニューが出されたほか、「かずの子の日」当日は市内船場公園で数の子加工品の試食・販売や数の子の歴史パネル展、三平汁の振る舞いなどを行う。また、5月1日~5日までコープさっぽろ、北雄ラッキーなどで「かずの子の日」を記念した売場づくり、販促が展開される。

 5月5日の「こどもの日」は1948年に制定されたものだが、加工連では子供の成長を願う祝日にちなみ、「かずの子の日」にしたいと決め、昨年10月30日に登録された(日本記念日協会認定)。加工連は大阪でのイベントや「築地市場まつり」(5月3日)に参加してPRし、関東の寿司チェーン「すし常」と提携し数の子にぎりの半額サービスを行う。

 中陳理事長は「正月のおせち料理で欠かせない数の子を、もっともっと広く食べてもらいたいとの気持ちを込めた」「皆さんに実際の数の子を味わってもらい、新しい感性で料理をつくってほしい」と語った。

 

三國シェフが子供たちに味覚を豊にする魔法を

 三國シェフは「故郷の増毛はニシン、数の子の一大産地だったが、生まれる前にニシンが獲れなくなってしまい、自分はニシンの生まれ変わりと思っている」と語り、出席した21組・42人の親子を相手に「本日はムッシュ・ミクニン(NHKEテレ「天才てれびくん」)の魔法で数の子大好きにする」と宣言した。「数の子は北海道が誇る食材で、第一に頭を良くする。そして美容にも良く、栄養価も高い。もっと普及させ、優秀な子供たちを育てたい」と感性を豊かにする「味覚の授業」の抱負を語った。

 午前9時から開かれた「味覚の授業」はイタリアのスローフードやフランスのシェフたちが1985年から始めている子供たちの味覚を教育する世界的な活動。三國シェフも2000年から取り組んでいる。授業では味覚の基本となる五味(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)を開花させるテイスティング(食味)を通じて、子供たちから味を判断する能力を引き出した。「うま味」の素になるコンブなどの道産食材を子供たちがピタリと当て、さらに用意した3種類の数の子(国産塩・輸入塩・味付け)も正解するなど、三國シェフもびっくり。親子で味を感じる味蕾(みらい)の機能がピークを迎える12歳までに様々な味覚を体験することの大切さを学んだ。

 

親子料理教室で楽しい数の子料理に挑戦

 

 このあと、午前10時から親子料理教室を開き、丸や岡田商店(苫前町)の岡田真由美さんが数の子ミニセミナーで、数の子が正月に欠かせない理由、優れた栄養とその効果、プリン体が多いとの誤解を解く正しい知識をわかりやく語った。岡田さんは「ニシンの卵である数の子はその粒の多さから子孫繁栄、子宝を連想させ、縁起物として古くから食べられてきた。数の子に含まれる栄養素(DHA、EPA)も注目され、血液がサラサラになり、精神が安定し、勉強が楽しくなるなど効果が期待できる。痛風の原因となるプリン体も極めて少なく、家族皆さんで食べてほしい」と強調した。

 調理の実習は、料理研究家の坂下美樹さんが数の子の扱い方、料理の手順などを説明し、「数の子の鯉のぼり生春巻き」「数の子と塩昆布の和風パスタ」「数の子ポテトサラダ&ポップオーバー」の3品のコツを手ほどきした。

 参加者は、7つのテーブルに別れて実際の調理にチャレンジし、親子でレシピと奮闘しながら、丁寧につくり上げた。

 昼頃には完成し、お待ちかねの試食を行って数の子料理の美味しさを堪能した。食後には加工連が用意したアンケートに熱心に意見を書き入れていた。

 

低迷している需要回復に向け新たなメニュー・市場掘り起こしも

 

 塩数の子の生産は、平成2年(1990)には7千トン近くあったが、25年(2014)には約3分の1の2千トン台に低迷した。道内で8割以上が生産され、特に留萌市は約5割を占め、日本一の生産地となっている。

 輸入抱卵ニシンの供給を行っている加工連では「かずの子の日」制定を機に、消費の減少に歯止めをかけ、若い世代に数の子を見直してもらい、年間通じた需要が望めるよう販促、PRに力を入れる。従来からの関西市場に加え、関東圏など東日本の市場掘り起こしが課題になる。また、正月のおせち料理にこだわらない新しいメニューの提案も必要にななろう。

 今のところ、「こどもの日」のスーパー魚売場は、ワカメ(繁茂)、ブリ(出世魚)が縁起物としてPRされており、手巻き寿司のコーナーなどでもなかなか数の子の入る余地は狭い。「かずの子の日」制定を契機に、子供の喜ぶメニュー提案や製品開発を期待したい。