降版時間だ!原稿を早goo!

新聞編集者の、見た、行った、聞いた。
「降版時間」は新聞社整理部の一番イヤな言葉。

★主人公は元整理部長である④

2014年02月15日 | 新聞/小説

【 きのう2月14日付の続きです。
写真はイメージです 】

ミステリー小説『原子炉の蟹』(長井彬さん)は1981年に江戸川乱歩賞を受賞、同年に単行本、84年に講談社文庫。
そして、2011年27年ぶりに新装版として復刊された(←ありがとう、講談社文庫)。
作者の長井彬さん(1924~2002年)は毎日新聞の元整理部記者で、
同ミステリーの主人公「曾我明編集委員」は元整理部長という、ユニークな設定。
整理部長は新聞社編集局からおいそれと動けないから、たぶん動きやすい遊軍的編集委員に設定されたのだろう。

▼ 時代を感じる見出しなのだ

原発で起きた殺人と遺棄工作を、支局記者が裏をとらずトバシた「中央新聞」は、バカハデ紙面展開をし、下記の見出しをつけた(きのう2月14日付でも引用しましたが、再び引用します)。

『被曝死体をドラム缶詰め、九十九里原発で』
『放射能の塊、四つに切断』
『被害者は下請けの社長、北の海で自殺とみせかける』

( 小説内で中央新聞がつけた見出しです )


うーむ。
現在の一般紙には見られなくなった、昭和を感じる見出し展開( ←すみませんっ、長井先輩)。

1本目の『被曝死体をドラム缶詰め』。
恐らく、ベタ白ヌキ凸版地紋横見出し。
そして「マドつき」ではないか。
マドつき地紋凸版は現在(一部の業界紙・専門紙を除き)一般紙から消えた。
例えば、天地14倍の横凸版のアタマやケツに、少し小さくしたケイ囲み「マド」をつくり、
場所(どこで)や主語(誰が)を入れたもの=写真の「高速増殖炉」がマドに当たる。

ミステリー小説『原子炉の蟹』は1980~81年を舞台にしているから、新聞社は鉛活字を使った活版で紙面を組んでおり、
恐らく樹脂版か金属板「凸版見出し」と推測される。
( 日本で初めて新聞コンピューター編集=CTSがスタートしたのは、日本経済新聞東京本社のCTSシステム・アネックスで、1978年のこと。
1960年ごろからCTSを研究・開発していたのは、日経東京本社と朝日東京本社の2社。
朝日は1966年には実用化できていた、と言われていたが、
1980年に築地新社屋でCTSシステム・ネルソンを始動させた)

…………ということはさておき、
「九十九里/原発で」( マド )
「被曝死体をドラム缶詰め」
になるのだろーけど、なんとなく新聞見出しとしては(小説内とはいえ)こなれていない気がするのだけど。
今なら、複数面で展開し
A面「九十九里原発で殺人か」
「『建屋内で男性刺殺』原発総務部長が告白」
B面「被害者、下請け会社社長か」
「『自殺工作もした』被曝の原発部長」
ぐらいかしらん。



(=゜ω゜)ノ