Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「ヴァニラの木」ジョルジュ・ランブール著(小佐井伸二訳)白水社

2009-04-27 | 外国の作家
「ヴァニラの木」ジョルジュ・ランブール著(小佐井伸二訳)白水社を読みました。
ヴァニラの香りに魅せられたオランダ人のチョコレート商ヴァン・ホーテン。
彼はヴァニラの木を原産地メキシコからインド洋上のレユニオン島に移し、人工栽培に乗り出します。
ところがヴァニラの花はいつまでたっても実を結びません。
ある日黒人奴隷エドモンのある行動から人工授粉が発見され、ヴァニラは実を結ぶことになります。

できごとのあらましだけを聞けばサクセス・ストーリーになりそうなこの話。
しかし少女ジェニー、そしてその母はヴァニラの人工栽培に反対していました。
利益・対費用効果、生産性を重んじる生粋の商売人ヴァン・ホーテン。
ヴァニラの栽培は人間の「成功」でしたが、同時に自然の「屈服」でもありました。
そして最後は商業主義が島を覆い始めます。
皮肉なことに、ヴァニラが実をつけたのと同日に、「人工受粉」された乳母セイラの子どもも生まれます。
自然をねじまげる人間の意図には終わりがありません・・・。