Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「琉球の風 (三) 雷雨の巻」陳舜臣著(講談社)

2009-04-01 | 日本の作家
「琉球の風(三)雷雨の巻」陳舜臣著(講談社)を読みました。
裏に徳川政権の巨大な圧力をみせて殺到する薩摩軍。
その薩摩に吸収されながら、明(みん)に対しては独立王国の体面を見せなければならない琉球の苦悩。国の再興へ、南海王国建設へ、人々は立ち上がります。

なんだか作品の描写に、歴史的事実の列挙が多くて、ドラマチックさに欠けるというか、いろいろな人が登場しすぎて視点が散漫になるというか・・・いつ盛り上がるんだろうと思いながら終わってしまいました。
今思うと、二巻の薩摩侵攻が一番の盛り上がりだった。
ということで、この最終巻はながーい後日談的です。よくこれを大河ドラマにできたなあ・・・。

尚寧王は江戸で家康との面会を終え、やがて王国に戻ります。
啓泰は母と再会(ここもすぐ終わりあっけない・・・)、
そして阿紀を妻にめとり(ここの恋物語もなし・・・)、
啓山は羽儀と結婚(この恋物語もなし。無論悲恋もなし。)、
やがて薩摩でも明でもない、各国の島の人々がつながる南海王国の建設にのりだします。
歴史物といえば人間ドラマ、と私が勝手に思い込んでいたせいか、ちょっと消化不良な読後感です。
でもこれはあくまで個人的な感想なので、純粋に歴史が好きで読む人にはこれくらいのあっさりさがあざとくなくていいのかもしれませんが。

でも今まで知らなかった歴史をいろいろこの本で学びました。
迫害されたキリシタンの島をつくろうと、台湾をめざした村山等安。
大坂城の落城の際に海の向こうへ落ち延びようとした武士たちがいたこと。
オランダが台湾を手にいれていた時期があったこと。

後世の私から見れば一本道のように見える歴史も、当たり前ですがその時代に生きた人々からすれば幾つもの選択肢を選び、または選ばされ、いくつもの要因が重なって築きあげられたもの。
今自分がここに生きてある不思議。
現在の後ろにある歴史、途方もなく長く大きなものに思えます。
沖縄の歴史って深いなあ・・・。