Men's wear      plat du jour

今日の気分と予定に、何を合わせますか。 時間があれば何か聴きましょう。

人は鏡

2012-03-31 | Others
 白洲さんの本で繰り返し読んだ回数がもっとも多いのは、「遊鬼」と「いまなぜ青山二郎なのか」の二冊だと思います。
前者は読むたびに魅力的な人や、実在したはずなのに読めば読むほどフィクションとしか思えない不思議な人たちが描かれて、折りにふれ思い出しては読みたくなります。
後者は主に物の見方について、やはり忘れた頃に、何故かまた手にしている気がします。
電車のリズムに合うのかも知れません。



それとは別の文庫本「夕顔」に収められた「人は鏡」という話に.......

先年お目にかかったある高名なお坊さまは、ふつうの人が耐えられないほどの厳しい修行をされた。さぞかしいいお話が聞けると思って期待していたら、実に下らないお喋りしかなさらない。総理大臣にはじまって、連日新聞紙上を賑わしている有名人、作家から画家に至るまで、およそ芸術とは無関係なように見える人たちの名前を、ただ知っているというだけで並べたてるのだ。もちろん相手は大臣だって似非芸術家だって何だって面白ければいっこう構わない。が、次から次へ名前だけ無意味に並べられたのでは困ってしまう。
                    ―中略―
おもうに人間とは非常に弱いものなのだ。命を賭した荒行も、終ってしまえばもとの木阿弥で、何らかの形で持続して行かないかぎり、偉い修行をしたという虚栄心しか残らない。
その時は愚かな坊主メと癪にさわったが、今になってみると、人間の弱さとか、持続することの難しさを、身をもって示してくれたお坊さまは、私にとっての「善知識」であったとありがたく感じている。「人は鏡」とはそういうことである。

気が付けばしだいに日は長くなり、日射しも力強さを増しつつあります。
明日から四月、マンネリと闘いながら、下らないお喋りと苦しい時の長い引用を怖れない覚悟を新たにしたところです。






Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

本当に好きですね

2012-03-28 | Rock
 前回の話で「好きな人」についてちょっと書いた直後、お邪魔したところで積んであった雑誌の中から一昨年のゲーテ11月号を見ていると、音楽関係の特集でCharのインタビューがありました。



「'60~'70年代のクラプトンはプリミティヴ。ところが'80年代中ごろからお洒落になった。レコードからCDになって音楽シーン全体がデジタル化し、ロックが商品化され、プロデューサーが表に出てきた時期です。プロデューサーの手で加工された音を好むか好まないかはリスナーしだい。ただ、音楽が洗練されるとスリルは失われます。最近のクラプトンのライブは、企業の部課長がきれいどころの女子社員を連れていく音楽ですよね」

その対極にいるのがジェフ・ベックだそうで。

「ジェフは“ギターで歌う”ことを毎日徹底的に追い求めているから、今も新しい。アームの精度は信じられないレベルです。僕、本当に弾いているとは思えなくてね。ステージ下まで行って見たほど。世界中のギタリストがジミ・ヘンドリックスの亡霊を追い求めるのがロックギターの歴史。27歳で死んだジミヘンはエレキギターとアンプで成しうることはほぼ全部やってしまいましたから。そのジミヘンが表現できなかった音を弾いたのが、ただひとり、ジェフです」

とのこと。
思わず前に行ってしまうような、こういう人はもちろん相当「好きな人」ですね。

因みに、最後にCharの「人生の5枚」というのが挙げてあります。
レッド・ツェッペリンの1枚目('69)、グッバイ・クリーム('69)、ダニー・ハサウェイのライブ('71)、クリムゾン・キングの宮殿('69)、グランド・ファンク・レイルロード登場('69)だそうです。

Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Let's goシマホ! Pt.2

2012-03-24 | Others
 週に三度も四度も顔を見せていた、さすらいのギャンブラー・シマホさんがめずらしく来ないと思ったら、三日振りに顔を見せました。
何処かでスッていたんですか?とからかうと、相好をくずしてテレくさいような嬉しいような表情を見せます。
その最中には脳内に快楽物質が分泌されるそうなので、好きな人はスッてさえ楽しいのかと思ってしまいます。

その日、何処か「遠くに行くから、もうしばらくは来れない」と言います。
初めて誘われ出かけると、シマホさんの人生をダイジェストで聴かせてくれたので、一夜のうちにすっかり詳しくなりました。
だからって、何かの役に立つようなことは全くありません。
何より本人の言うとおり、ギャンブルと女性の二本立てだったことだけはよく分かりました。

脱サラしたシマホさんは、一時150台の自動販売機を所有していたそうです。
猫にカツブシと申しますか、日々入る現金を握りしめて、毎日のようにどこかで開催されるギャンブルにつぎ込むと、さすがに四年後にはツマってしまいました。

「その頃は金勘定が仕事だった」というくらい、運動もしないで贅沢な食生活をおくっていたら、急激に太って患った挙句、しまいには胃をほとんど切りました。
スリムなところしか知りませんが、90キロ近くあったそうです。
小金も胃も失った高額納税者シマホさんは、それでもエネルギッシュに御婦人を追いかけ廻し、50代後半の今日に至るそうです。
そういうタイプの人によく見られるように、アルコールはあまり飲みません。
喋るのと食べるのに忙しいので、飲んでるヒマなんてないくらいです。

藤沢周平さんの書く市井の悪党みたいな風貌のシマホさんは、マゲをのせたらさぞ似会うだろうと思います。
数か月前初めて会った時は強面でしたが、今ではすっかりいい味のおじさんとなり、サンテグジュペリがキツネと星の王子さまに仮託して書いたように、馴染んだ人たちをすこし寂しがらせることでしょう。



好きだなぁ、で思い出しましたが、

先月だったか、久しぶりに「ホントに好きなんだね」と言われました。
たまにそういう事がないわけではありません。
しかし私の周りには、そうじゃない本当に好きな方々が何人かいらっしゃいますので、私自身はそう感じたことは一度もないんですよ、ホント。







Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新しい出発

2012-03-21 | Others
 先々週健ちゃんが誘ってくれて、少し早目に梅を観に鎌倉まで行きました。
二年振りに覚園寺を訪ねると、その日午後からの好天に誘われたように、ウグイスが鳴いていました。
私共が住む近くは大規模な開発の最中でもあり、例年聴くことの出来たウグイスの声も今年は聴けそうにありません。



会社の方々が送別会を開いてくれました、と祥子さんからメールがありました。
27年間勤めた会社を辞め、ほっとした思いと前途への期待で晴れ晴れした心持ちでしょう。

27年と言いますと、おぎゃーと生まれて、人によっては結婚・出産まで経験しようかというくらいの年月です。
決して短くはありませんが、夢中で一つの事に取り組んでいるとあっと言う間、という場合もないわけではありません。

海外のショッピング・ガイドなどで紹介店舗の価格帯を示す場合、Affordable, Moderate, Expensive, Very Expensiveというような表現があります。
高額品を扱う場合にはめずらしくありませんが、そのModerateに該当する商品を扱って多くの顧客に頼られ、最盛期には一人で年間一億円の売上を作り、景気が厳しいといわれる状況下でもつねに業績を積み重ねてきたのですから、本当にお疲れ様でした。



Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

暑さ寒さも.......

2012-03-16 | Others
 大陸から寒気がつぎつぎ流れ込んでいるそうで、日陰に入ると空気が冷え冷えしています。
しかし今週は、まぎれもない春の日差しが降り注いでいました。
向こう岸にあと少しで泳ぎ着くみたいに、お彼岸が待ち遠しい。



今朝、久しぶりに駅で白井さんに会うと、白井さんは中が厚くて綿のコート、私は中が薄いのにコートはウィップコード。
通勤の皆さん人それぞれの装いが、逆にこの時期の難しさを物語ります。

でも私みたいに寒いからって何時までも冬っぽいのを着て、薄いとはいえ襟元にもカシミヤまで巻いていると、春らしい装いの方に会った時、反則して恥ずかしいような、防寒着にしがみついてイケてないような気持ちになること請け合いです。
なのに帰りにちょっと風が吹くと、あぁもっと厚いの着てくればよかったなんて思っています。

そんなの気にすること自体、一面極めて日本人的な感覚ですが.......






Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

震災から一年

2012-03-13 | Others
 日曜日、大震災から一年を迎えました。
その時刻を、特別な感慨をもって迎えられた方も多かったことと思います。
ニュースで、同時刻日本中で哀悼を表す光景を見ましたが、私共もやはり同様でした。
あらためて、犠牲になられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。
また、被災された方々に一日も早い復興を実感される日のくることを願ってやみません。



先月、仙台からずっと北上してその途次、被災の状況を目の当たりにしたという人の話を聴くと、現状はTVで見る以上で、現地は瓦礫また瓦礫の山だったそうです。
その時一番最初にわき上がって来た思いは、国は何をやっているんだということだったと言います。

私共もたいした事が出来るわけではありませんが.......
仕事がら、買ったはいいけど着ていない服というのがあります。
そうした着るあてのないコンディションの良い服を持っているという方々にも声をかけ、まとめて送る等、物質的にはとりあえず出来る事から家内が手を付けました。

Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

春はあけぼの..........

2012-03-09 | Others
 三日以降は、徐々に春めいて......なんて信じたのが馬鹿でした。
馬・鹿といえば.......



大泉さんの方から「新しいモデリストがついたって言うんだけど、これどう?」とスーツとジャケットを持って来ました。
昔「象が踏んでも大丈夫」というのもありましたが、それは着たまま馬に乗れる、つまり前方への腕の動きがスムーズな設計というのが売りだそうです。
それを聞くと「馬にゃ乗らんやろ」と聞こえてきそうですが、伝統的なジャケットが具える条件を満たすという点で、志はイーネ!という印象でした。

試してみたところ、肩の向きが言うようになっていません。
もちろんアームホールが小さめなのは言うまでもありませんが、肩の運動の範囲を捕捉しておらず形状がズレています。
融通の利く素材じゃないのに袖の上腕部までも細くし過ぎたので、総体として動き易さ・柔らかい着心地は実現できていません。

どこがどう違うか、面倒なのでその日私が着ていた上着を試してもらって差異を説明しました。
大泉さんも向こうでいくつかの工場に出入りしていたと言うし、自分の店で手作業を多用した既製品も扱っていたというので、「そうそう、これだよな」と出来の違いをすぐ理解してくれました。
「おかしいなぁ、サンプルの時はもうちょっといいと思ったのに。あの人は最後まで見てないのかな」としきりに首をひねってます。

その2週間前、ばったり会った樫本さんとお茶をしていると、提げていたジャケットを出して「これどう?」と言います。
ミディアムグレー無地で構造物とコストを省いた作りっぽく見えたので、
「どこかの制服ですか」と尋ねると、
「制服?バカ、違うよー。今はこんなモンなんだよー」とご立腹で、かくかくシカジカに納めるOEMだとのこと。
気心が知れていると、つい言い過ぎてしまいそうになるのを抑えて手にとって見ました。
更にどう言っていいか分からないですが、芯地が上手く処理されてないのかラペルが勝手に返ってきているので、購入者が困るだろうなと思って言うと「ファースト(サンプル)だからさ」との事です。

偶然の二つの話で感じたのは、十年強の間あんなに高品質の製品が氾濫して勉強の材料には事欠かない時期があったはずなのに、大袈裟なようですが、やはり血肉になるまでには至らなかったのかという残念な思いの再確認でした。
素材によらず上衿を何でもかんでも二枚で作っているのに、袖口が額縁だから本格的な作りですと言っていたような時代に逆戻りするでしょうか。

一年以上前に植えたはずの庭木が、台風で根こそぎ傾いたのを見たような心持ちです。
と同時に去来したのは、本当のプロって意外に少ないのかなという感慨でした。

Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

七十二候

2012-03-07 | Others
 年度初めと関係あるか分かりませんが、久しぶりの人に最近よく遭遇します。
数年振りの人ですと変わりませんねなんて言われますが、十年を超えるくらい久々の人のなかには「さすがに少し年とった?」なんて言ってくれる方もありました。
十年も変ってなかったらそれもまた不自然なので、社交辞令多めの言葉より客観的な感懐を伝えてくれていると思います。

他に「相変わらず○○○だねぇ」なんてのもありましたが、○○○は好きな言葉をいれて楽しんでください。



しばらく前から、JR車内に「七十二候」という暦を紹介した映像が流れています。
二十四節気というのは以前から聞きますが、一年が52週ですから、72となるとずいぶん細分化された暦です。
その映像を意識し始めてから、たしかに自然現象を的確に捉えているなと思うことが一度や二度にとどまりません。

因みに現在は「蟄虫啓戸」だそうで、虫などが出てきてコブシの花も咲き始めるとのこと。
その次は、「桃笑始」で桃の花が開きはじめる時候だそうです。
寒暖が日替わりでやってくる対応の難しい季節ですが、風邪などひかずに何とか乗り越えたいと思います。

暦に則して土中から出て来るように、先の方々も来てくれたものでしょうか。

Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

J・シムカスを凌ぐ........

2012-03-05 | Soul
 きっと、今日は何を食べようか、なんて考えながら歩いていたんだと思います。
知り合いのなかで最もスリムな、ラリー・ウィリアムズのBony Moronieよりスキニーな、永井さんが向かいからやってくると産休に入ると教えてくれました。
言われても分からないくらい、相変わらず細いことに変わりありません。
とりあえず百回くらいおめでとうを言って、喜びを伝えました。



あれ以来、昼と言わず夜と言わず頭の中でオージェイズが鳴り続けます。
そのDVDの前に、ロベール・アンリコ監督ジャン=ポール・ベルモンド主演の「オー」も買っていたのですが、あのジョアンナ・シムカスよりも、おじさんたちを繰り返し見たり聴いたりしたくなってしまうのも困ったものです。
クマの子みたいなルックスのE.Levertもさることながら、Walter Williamsが歌うパートでの節回しが、以前にもましてとても気になっています。

Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

The O'Jays

2012-03-03 | Soul
 雛祭りは関係ないので、今日は耳の日です。
最近地獄耳なんてあまり聞きませんが、死語の仲間入りでしょうか。
私は人並みていどに耳がよく聞こえるので、電車で二人むこうに並んだ人の音漏れもよく聴こえて困る場合があります。



「ところであなたの正体は?」
「クレオパトラです」
と元祖いいかげん男・高田純次さんはますます快調ですが、由紀さおりさんも歌でブレイクするだけでなく、すっかり面白いおばちゃんになってとても楽しそうです。
昔、遊びにきた同級生が、母に由紀さんに似てると言ってたのもあって懐かしいです。

先日見つけたThe O'JaysのライブDVDは、2010年に出た50周年の公演を収めたものでした。
Eddie LevertとWalter Williamsの二人は70歳近いはずですが、とてもそうは見えませんし、声も同様です。
スムーズなW・Wの声質と、もうとっくに嗄れていてもおかしくないようなE・Lの対照的な歌の絡みが醸すステージは、往年のヒット曲の再現以上のものがあります。
惜しむらくは、数がそろっているのに音がスカスカのバンドが、緻密なオリジナルの演奏が耳にこびり付いている人にとってさびしい事このうえもありません。

でもテンプスやデルズやドラマチックス、レイ・グッドマン&ブラウン等など好きなグループは色々ありますが、「やぁオージェイズって本当にいいですね」と言いたくなります。

Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

三月の水

2012-03-01 | Others
 年明けから二カ月が経過し、今日から三月です。
昨日と打って変って気温が上昇したので、積っていた雪もあらかた融け、日常に支障はありませんでした。
朝でかける時は用心に用心を重ね、いつもより底のゴツい靴を選び、それに合わせた格好になるのは致し方ないところでしょう。



アステアやケイリー・グラント、ゲーリー・クーパーのことをよく取り上げていたのに、最近まで閃かなかったのは、この三人と共演したオードリー・ヘップバーンのことです。
例えばグレイス・ケリーとイングリッド・バーグマンは、ともにグラント、クーパーと共演していますが、アステアとはありません。

自伝みたいなものがあれば三人について書いているだろうと思いつき、集英社文庫「オードリー・ヘップバーン物語(上)バリー・パリス著」というのを読みました。
結論としてはあまり面白くないどころか、アステア、クーパーにいたっては年寄り扱い、かろうじてグラントには少し行を割いている程度です。
ヘップバーン本人が二人について語っていないというより、著者の趣味の問題のようです。

映画について読むにしても、山田宏一さんや川本三郎さんのような対象にそそぐ並々ならぬ愛を感じないことには、楽しめなくなってしまいました。
そういう意味でこの本は対極の存在です。

Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする