Men's wear      plat du jour

今日の気分と予定に、何を合わせますか。 時間があれば何か聴きましょう。

1129

2019-11-29 |  その他
昔、鎌倉幕府の成立は「イイクニ作ろう」で1192年と言われていましたが、今は1185年と習うそうです。
子供の頃、イイフク作ろう鎌倉幕府と間違えて覚えてしまって鎌倉にしました、と使わないでもありません。

そんなこんなで今日は「イイフク」の日です。
私が勉強させてもらった先生は、「ノボリ襟」など業界用語らしき名詞が雑誌で使われると、経験を踏まえ「もし襟が首につき過ぎていると、疲れる服になってしまいますよ」と、中途半端な知識が流布するのを案じました。
また、「動きやすい服は、結果的にラインも美しい」と仰います。
この仕事をやっていれば誰しも「良い服」ってなんだろうと考えることでしょう。

私どもが作っているのは何もないところから新しいものを生み出すわけでなく、趣味の良い男たちが踏襲してきた伝統的なスタイルの延長線上にあって、着る人の体型に合わせてモディファイするだけ、というと身も蓋もありませんが、例えば昔の俳優のポートレートが証明するように、本人のバランスに合ってさえいれば流行り廃りと関係なく、時間を超えて多少の瑕疵さえ味になる場合まであります。

そうした基本にそいながら、これまで見てきたものや会ってきた人から受けた影響が、作るものを形作っているように思います。


A.カラチェニのC.アンドレアッキオ氏。      L.バルベラ氏。

以前たいへんお世話になった取引先のトップの方から、今日温かい絵葉書をいただきました。
絵は、安野光雅さんの「注文の多い料理店」という作品だそうです。
そのお取引先は「注文が多」かったわけではありませんが確かに厳しい環境でしたから、試行錯誤するうちに自ずと納めるもののレベルは上がり、知らないうちに鍛えてもらったのかもしれません。
ありがたい事です。



宮沢賢治の「注文の多い料理店」は、言われたままにして行くと最後自分たちが料理されてしまう話で、「イイ肉」とも読める今日にぴったりです。
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Heavy Irish Linen Jacket

2019-11-24 | 生地
久しぶりにBlues Brothersのファースト「Briefcase full of blues」を聴いて、腕利きのバンドの巧さにあらためて感心しました。
メンバーはスティーブ・クロッパー、ダック・ダンのMG'sの二人を中心に、その頃引っ張りだこでこのライブの日も快調だったスティーブ・ジョーダン、ギターのマット・マーフィー、そして普段はスタジオの仕事で鍛えられた人たちで、当時人気の番組から出た企画でなかったら顔を合わせることのないメンバーだったでしょう。
大人がみんな本気で遊びに取り組んでいるような面白さがあります。

このバンドだったら誰が歌っても良く聴こえるんじゃないかというほどですが、ジョニー・テイラーをマッチングさせていたら名盤が出来たのではと想像しました。



上は以前ご紹介したL.バルベラのコメントです。
この季節になるとツィードのことばかり考えて忘れていましたが、上掲のコメントにインスピレーションを得て、アイリッシュリネンのジャケットを作りました。

これから春を迎えるというまだ寒い時期に麻を着る...というのにヒントを得て、素材感のあるちょっと重い英国生地を以前取り寄せていました。
生地を厚くしてしまうと、夏がまたやって来ることを実感するというバルベラ氏のニュアンスと外れますが、夏の平板な生地にはない面白味のある素材です。
もちろん他に夏にも着られる重めのもご用意できますが、画像の生地は夏に向かないようなウェイト。



素材では遊んでいますが、作りはシュランクからすべて手抜きなく真面目に時間をかけて、他の製品と同じく定評ある岩手花巻の工房での縫製です。
アイリッシュリネンの色は真っ白でなく、生成りのような色合い。
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柿色

2019-11-23 | 生地

Illustrated by Charles F. Peters.

八百屋の店先に数種の柿が並んでいます。
地味なルックスのせいか、味なのか、子供の頃は好んで食べていたとも言えません。
大人になって奈良で初めて「柚子巻き柿」を食べて、他の干し柿も食べるようになり、その後に生も毎シーズン食べるようになった気がします。

更に、たいていのイタリア人が熟してからスプーンで食べるものだと思っていると教わってから、ちょっと放置しておくとすぐ熟してしまうのもあって、食べ方のバリエーションが広がりました。

前にも書きましたが、イタリアでも「カーキ」と言い、語尾が「i」なのでイタリア人はイタリア語の複数形だと思いこんでいる人も多いそうですが、日本語の「柿」から来てるのでした。

そんなわけで、この季節は柿の葉寿司をみても、落葉を見てもツィードの色の組み合わせに見えてしまいます。



落ち着いたベースの色に配された柿色(オレンジ)が、暖か味を増してます。
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Lovat green

2019-11-21 | 生地
先週末イベントがあったのに、それに合わせたように風邪をひいてしまいました。
当日は立っているのもしんどいくらいでしたが、ようやく落ち着いてきました。
午前中暖かかったのに午後急に下がったり危険がいっぱいです、皆様もどうぞご自愛ください。



1930年代のエスクァイアを眺めていると、Lovat tweedとかLovat greenとかの文字を見つけることが出来ます。
日本ではHarris TweedやDonegal Tweedに比べるとずっと知名度が低いと思いますが、すでにその時代から欧米では色を例えるのに"lovat green"と言えば、イメージが伝わったらしいことが推測されます。

上はL.フェロウズやL.サールバーグと同じかそれ以上、エスクァイア誌で描いていたロバート・グッドマンのイラストで、他の人が描いたのはあまり見かけませんが、まさにLovat greenかというスーツが描かれています。

今回はイラストのイメージにぴったりの生地がありました。
基調となる色はグリーンとブルーで構成され、他の繊維が混じって微妙な奥行を感じさせます。
実際のこの手のバンチには、もう少しモスグリーンに近い色合いの方がバリエーション豊富です。



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後日談

2019-11-19 |  その他
イタリアの色々な店を訪ね、盛り上がっては記念写真を撮っていた時期がありました。
懇意の方がそんな中の一つをスマホにおさめてミラノに行くと、入った店でその画像に写る女性に遭遇し、20年以上前の姿に予想外に盛り上がってくれたそうです。
その店に集うお客さんは一味違っていて、買物に慣れた人でも緊張感を伴うような空間だったと言いますから、思わぬところで役に立ったと後から聞いて、うちで懐かしがりました。

もちろん然るべき店に入る時、その道のパスポートと言うかきちんとしたカッコをしてたつもりですが、その頃私どもは向こうの人からよほど若く見えたのか、それだけでは説明がつかないくらい親切にされたこともあって、機会があれば何かその真似くらいできたらと思っていました。




読んで頂いている方の中には、「あの話は、その後どうなったの?」と気にしてくださる方がいらっしゃるかも知れません。
高校生からコメントをいただいた話です。

退屈を見かねた神仏が呼んでくれたのか、私なんかより上から下まで重装備で、ある日彼は来てくれました。
特に何をということもありませんが、語り合って興味のありそうなモノを見ていただき、聡明そうな彼はSNSでは伝わりきらない何かを感じてくれたかなと思います。
名残は尽きませんでしたが、お家は遠そうだし次の寄港地もあることだし、二時間半くらいで切り上げて「横浜信濃屋」白井さんのところへ向かわれました。
翌日白井さんからもお電話いただいて、感心な高校生をひとしきり話題にさせてもらった次第です。

というわけで、藤井さんメッセージをありがとう。
目前の入試、頑張って下さい。
その後、読み切れなかった資料で何か気になるものがありましたら、いつでもどうぞ。
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Brown Jacket

2019-11-10 | 生地


『アメリカが1930年代に初めてオックスフォード、ケンブリッジファッションの影響を受けて以来ずっと大学生の間で変わらない人気を誇っている、ブラウンのジャケットとグレーのフランネルのズボンの組み合わせです。
もちろんこのバリエーションもいろいろと考えられます。
この絵の学生はV字襟、三つボタンのシェトランドジャケットを着ていますが、柄は濃い大きめの格子縞で、フラップのついたパッチポケットがついています。それに重要なのはサイドベンツが入っている点です。

この組み合わせを完璧にしているのはアタッチカラーのついたブルーと白の縞のオックスフォードシャツ、ストライプの入ったクロッシェのタイ、ブルーのカシミヤのベスト、茶のフェルトのスナップブリム帽、それに茶のスエードの靴です。
この絵の学生はブルーチャータイプの靴をはいていますが、バックスキンのブローグタイプでももちろんかまいません。
このカジュアルなアンサンブルはカレッジ服として最適なばかりでなく、カントリーウェアとしても非常に適した組み合わせといえます』

(アパレル・アーツ1934年秋号のキャプション)



イラストに描かれた茶も良いですが、まったく同じイメージのものがすぐ見つからなかったので、ちょっと気になっている色の組み合わせをご紹介します。
全体のトーンはカーキっぽいですが紺のペインとうまく合っていて、これも良い味だと思います。
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グレーヘリンボーン

2019-11-04 | 生地


1936年のキャプション。
『抑えた地味な服装にもなかなか捨てがたい味があります。
この杉綾織りの生地は昔からある丈夫なウーステッドで、長い襟のダブルスーツに仕立てられています。
このスタイルは一時は特異なものと見なされていましたが、今ではエレガントなトラッドスタイルの一つと考えられています。
黒のネクタイの強さが白い真珠のネクタイピンとオックスブラッドのマドラスシャツによって和らげられています。胸ポケットにさされた無地のハンカチがエレガントな雰囲気をより一層強調し、幅の広い襟が装いにおもしろさを添えています。
これにグレーかブルーのオーバーコートと、黒のハンブルグ帽を加えれば完璧です。』





前回の生地とは異なり、糸が引き揃えられ、柄も整理されたようにクリアな印象を受けるかと思います。
ヘリンボーンの幅によっても、多少印象が変わるかも知れません。

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Gray herringbone

2019-11-02 | 生地


昼間20℃以上あったのに、帰る頃には風が冷たくなってきました。
ようやく、ボリュームのある素材にふさわしい季節がやって来ます。

初めてのツイードジャケットはグレーのヘリンボーンだった、という方もいらっしゃるかと思います。
また紺やグレーでピッチの狭いヘリンボーンのスーツを、昨日仕事でお召しだったかも知れません。
馴染みのある、代表的な柄の一つです。

このL.フェロウズのイラストは、誇張され過ぎているのではと思うくらいピッチが広く描かれているグレーのヘリンボーンスーツ。
下の画像は、一般的なジャケットに使われる甘撚りで厚みを感じるものでなく、風を通さないくらい目の詰まった生地で、不均一な糸と霜ふりの濃淡が見慣れた柄に奥行きを与えていて表情があります。


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