Men's wear      plat du jour

今日の気分と予定に、何を合わせますか。 時間があれば何か聴きましょう。

続・Milano

2021-08-28 |  その他
ここ数年毎年どこかで起きる豪雨災害がニュースになるほんの少し前、フロリダ州マイアミのマンション崩落がニュースになっていました。
東南アジアで似たような崩落事故が以前からニュースになっていた時は、ズサンさによる事故かと思っていましたが、それだけではないかと思うような出来事でした。



偶然その一週間前の0時前後の番組で、コンクリートの建物を支えるような太い鉄筋を溶接して補強する圧接工という仕事を紹介していました。
細かい部分にも気を抜かず完遂する仕事を見ていたら、「このくらい神経を配って作ったら、さぞかし良い服が出来るだろうな」と思いました。

一頃イタリア等の手仕事を多用した服作りが話題になった頃、その行き着く先として着心地もそれ相応に話題になっていました。
もしかしたら数年置きに「着心地」が記事になっているかもしれませんが、イタリアの一定レベル以上のよく出来た既製服を普段から着ている方はそのレベルが身体に馴染んでいるでしょうから、話題になるならないに関わらず冷静に着心地を判定できることと思います。

ただ建築物などの検査と違って数値や仕上がりのキレイさだけでは判別できませんから、そこがちょっと難しくもあり面白いところでもあります。

そんな事を書いてしばらく経ち、前々回のお話のスーツが出来上がりました。
ご了解いただいたので、画像を使わせていただきます。



ご用向きは、
「ミラノの顧客に初めて会いに行くので、その時着る濃紺のダブルブレステッド・スーツ」
料理ではありませんがルセットとしては、G.アニエッリ少々、パンツにエレガントな揺れを少々、というイメージをいただきました。
幸いなことに、打ち込み具合といい原毛の良さからくる自然な艶といい最適な生地がタイミングよく
手に入り、新鮮な着心地をちょっとした驚きをもって喜んでいただけたようで、現地でお役に立てそうな予感がしてきました。
シャツ、ネクタイのバリエーションを楽しんで頂き、当初の目的以外にもハレの席など大いに活用いただけたらと思います。



 


アニエッリでなく今回はゲイリー・クーパーの画像を付録に。

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28年ぶり

2021-08-08 | 映画
先日、ヴィム・ヴェンダース監督"Paris, Texas"撮影中のオフショットをいくつか上げている方がいました。
記憶の中では索漠として救われない印象だっただけに、当たり前かもしれませんが、シーンに映らないところで皆んな楽しそうにしている様子に36年越しで救われた思いです。

また、大映作品シリーズのDVDに付いてくるオマケみたいなものに当時のスタッフの方々にインタビューした画像があって、例えば市川雷蔵さんを良く知る方の証言で普段の様子が語られていました。



その中に、雷蔵さんがイタズラをして撮影の合間に山本富士子さんに乗っかって、「アレ〜、助けて〜」なんて山本さんの声が聞こえて来てねぇ、雷蔵さん悪いんですよ、なんて話があります。
「眠狂四郎」第5作で中村玉緒さんにのし掛かるシーンの練習をしてた訳でもないと思いますが、普段の姿はその辺りにいてもまったく気づかれないくらいだったというのに撮影に入ると別人のよう、という面白い人だったそうです。


(この撮影の合間でしょうか)

少し前の事ですがお誘いいただいて待ち合わせた店に行くと、知らない方が一緒にテーブルにいました。
その知らない方が立ち上がって「お久しぶりです!」と言われたことに驚きながら眼を覗き込みましたが、まったく心当たりがありません。
名乗ってくれたので「あの人かな」というところまで漕ぎつけ、マスクを外してくれてようやくご本人と分かりました。
昔たまに行く店のカウンターで出会った同業の方で、「28年ぶり」とのことです。



その頃はまだ雷蔵映画を観てなかったから気づきませんでしたが、その人がちょっと雷蔵さんの鼻筋を太くしたりアレンジしたような顔なんですね。
こちらのことは棚に上げて、28年前に戻って相手が変わっているのをイジったり、その人の武勇伝を思い出して懐かしく語り合いました。
時系列で伺うと当時知らなかった話がたくさんあり、今は私と正反対にカジュアルなものを作る会社にお勤めで、こんな時勢ですから大手の抜けた部分を補ってお忙しいそうで、それを聞いたので良い日になりました。
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Milano

2021-08-04 |  その他
梅雨が明けましたが、連日湿度高め体感温度高めの日々が続いてます。
2年間湿度に悩まされ続けたトラウマか、移転して初めての梅雨がどうなるか非常に気になっていましたが、まったく問題なくやり過ごせたことに一安心です。

そして今は連日オリンピックに一喜一憂で、終わったら抜け殻のようになるんじゃないかと心配です。
それまで絶対的な存在だった人が切り開いた道を、更に押し進める若い選手が現れるのを何度も観てきました。
人類が100メートルを5秒で走れるとは思いませんが、どんな競技も限界を少しづつ更新し続けています。
そういった瞬間にひきつけられ、知らず知らず見入ってしまうのかもしれません。

その前少し自由な頃、人数制限を守りながらお誘いいただく場合にはたいてい参加しました。
大人数で楽しくという訳にいかないのが残念ですが、やはり声をかけて頂くのはたいてい服好きの方ばかりで、競技ではありませんが話しているとそういう方々の足音がヒタヒタと迫って来るのを感じます。
それくらい皆さん散財したり失敗を繰り返したり、それぞれに工夫をこらしながら好きを維持というか興味を熱心に育てているので、互いに話してる内容は他人からは笑い話に聞こえるかもしれませんが、生業にしている平均的な人も凌ぐレベルです。



先日初めて伺った方は、状況が改善され次第ミラノに行くので「ミラノで恥ずかしくないスーツを」というリクエストでした。
以前にも書いた話ですが、イタリアで洒落た街やそれに見合ったお洒落な男性がいる都市はもちろん日本より多いですが、唸るような人がゴロゴロいる訳でもありません。
ただ平均的なレベルが日本よりずっと高く、その全体的な雰囲気を支えているのは一定年齢以上のクラシックな装いをした男性と、美意識が高く男性のそうした装いの価値も理解しているご婦人方です。

中でもミラノはそういう意識が他よりずっと高い街という印象があります。
不況以降行っていませんからどう変化したか分かりませんが、一昨年懇意の方がミラノへ寄って、馬具と靴の店だったスティヴァレリア・サヴォイア・バッリーニという店がトータルアイテムを扱う"Stivaleria Savoia"となり、とても活気のある店内だったという話を聞かせてもらいました。

「今迄行ったどこの店よりも、他の客の圧を感じた」という話を聞いて、ルチアーノ・バルベラが相対した人の服を上から下まで眺める儀式や、色々な店での視線や質問責めにあったことを思い出しました。



また紳士服店を出たあと家内が、
「さっきの店で背後にいたオジサンが、商品も見ないでずっと上から下まで見てたの気づいた?」
と教えてくれるのもミラノが一番多かったと思います。それくらい男性も着る物に心血を注いでいるように見えます。

そんな手強い街にも、バルベラみたいな人はそうはいません。
服はいいけど靴が何かおかしいとかその逆だったり、ホーズなどコーディネイトやバランスを含めてこれはというような人は3日くらいいても一人いるかいないか。

注文頂いた方は業界の方ではありませんが、そのスーツがミラノでの仕事や人間関係を円滑に進めるパスポートになってくれたら、これ以上の喜びはありません。

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