Men's wear      plat du jour

今日の気分と予定に、何を合わせますか。 時間があれば何か聴きましょう。

春はあけぼの..........

2012-03-09 | Others
 三日以降は、徐々に春めいて......なんて信じたのが馬鹿でした。
馬・鹿といえば.......



大泉さんの方から「新しいモデリストがついたって言うんだけど、これどう?」とスーツとジャケットを持って来ました。
昔「象が踏んでも大丈夫」というのもありましたが、それは着たまま馬に乗れる、つまり前方への腕の動きがスムーズな設計というのが売りだそうです。
それを聞くと「馬にゃ乗らんやろ」と聞こえてきそうですが、伝統的なジャケットが具える条件を満たすという点で、志はイーネ!という印象でした。

試してみたところ、肩の向きが言うようになっていません。
もちろんアームホールが小さめなのは言うまでもありませんが、肩の運動の範囲を捕捉しておらず形状がズレています。
融通の利く素材じゃないのに袖の上腕部までも細くし過ぎたので、総体として動き易さ・柔らかい着心地は実現できていません。

どこがどう違うか、面倒なのでその日私が着ていた上着を試してもらって差異を説明しました。
大泉さんも向こうでいくつかの工場に出入りしていたと言うし、自分の店で手作業を多用した既製品も扱っていたというので、「そうそう、これだよな」と出来の違いをすぐ理解してくれました。
「おかしいなぁ、サンプルの時はもうちょっといいと思ったのに。あの人は最後まで見てないのかな」としきりに首をひねってます。

その2週間前、ばったり会った樫本さんとお茶をしていると、提げていたジャケットを出して「これどう?」と言います。
ミディアムグレー無地で構造物とコストを省いた作りっぽく見えたので、
「どこかの制服ですか」と尋ねると、
「制服?バカ、違うよー。今はこんなモンなんだよー」とご立腹で、かくかくシカジカに納めるOEMだとのこと。
気心が知れていると、つい言い過ぎてしまいそうになるのを抑えて手にとって見ました。
更にどう言っていいか分からないですが、芯地が上手く処理されてないのかラペルが勝手に返ってきているので、購入者が困るだろうなと思って言うと「ファースト(サンプル)だからさ」との事です。

偶然の二つの話で感じたのは、十年強の間あんなに高品質の製品が氾濫して勉強の材料には事欠かない時期があったはずなのに、大袈裟なようですが、やはり血肉になるまでには至らなかったのかという残念な思いの再確認でした。
素材によらず上衿を何でもかんでも二枚で作っているのに、袖口が額縁だから本格的な作りですと言っていたような時代に逆戻りするでしょうか。

一年以上前に植えたはずの庭木が、台風で根こそぎ傾いたのを見たような心持ちです。
と同時に去来したのは、本当のプロって意外に少ないのかなという感慨でした。

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