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曽田修司の備忘録&日々の発見報告集

ラウンドテーブル「創造都市の連携と交流に向けて」

2008-02-17 09:16:33 | アーツマネジメント
去る15日(金)、大阪市立大学都市研究プラザの主催による「創造都市の連携と交流に向けて」というタイトルのラウンドテーブル(少人数によるディスカッション)にスピーカーとして呼ばれたので大阪に出かけた。

「創造都市」という言葉は、都市研究プラザ所長の佐々木雅幸教授が1997年に出版された「創造都市の経済学」という著書(著者は出版当時金沢大学経済学部教授、その後、立命館大学を経て現職)をきっかけに日本でも少しずつ知られるようになった。

近年では、ナント(仏)をはじめとするヨーロッパの創造都市の実例が紹介され、日本でも広く知られるようになった。また、2002年の中田市長の就任以来、「クリエイティブシティ・ヨコハマ」を都市戦略として推進している横浜市の事例が注目され、日本国内でも政令指定都市やそれに近い都市規模を持つ都市では、さかんに「創造都市」あるいはそれに類する都市政策が語られるようになってきている。


創造都市の経済学
佐々木 雅幸
勁草書房

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創造都市への挑戦―産業と文化の息づく街へ
佐々木 雅幸
岩波書店

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創造都市への展望―都市の文化政策とまちづくり
佐々木 雅幸,総合研究開発機構
学芸出版社

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大阪市立大学の都市研究プラザは2006年4月に開設され、2007年には、「文化創造と社会的包摂に向けた都市の再構築」というプロジェクトが文部科学省の「グローバルCOE」に採択されている(2011年まで)。

当日受け取った会議資料によると、開設準備の時期からさまざまなセミナー、シンポジウムが開催されていることがわかり、文字通り、創造都市の実践的研究を牽引している精力的な活動ぶりには目を見張らされる。これまで開催されたシンポジウム等を列挙すると以下のようになる。

2005年12月 国際シンポジウム「創造都市と大阪再生」
2006年 3月 国際シンポジウム「日独ホームレス問題の現状と課題」
2006年10月 国際セミナー「変貌する上海の社会・経済と空間」
2006年12月 国際シンポジウム「21世紀の都市像」
2007年 3月 国際セミナー「アジア・アートマネジメント会議」
2007年 4月 国際セミナー「日韓の都市内の条件不利地域における地域再生」
2007年 6月 政策フォーラム「メディアアートと関西の可能性」
2007年10月 世界創造都市フォーラム2007 in Osaka

昨年10月の「世界創造都市フォーラム2007 in Osaka」では、「創造都市の発展と連携を求めて」というアジェンダが採択されている。

このような流れを受けて、今回のラウンドテーブルでは、札幌市、仙台市、横浜市、金沢市の、それぞれの「創造都市」に向けての実践が紹介された。

スピーカーは、札幌が札幌市立大学教授の武邑光裕氏、仙台が仙台市企画市民文化スポーツ部長の志賀野桂一氏、横浜が横浜市立大学准教授の鈴木伸治氏、金沢が金沢創造都市会議実行委員の水野雅男氏(水野雅男地域計画事務所代表)の各氏であった。
私は5人のスピーカーの最後に話をさせていただいたのだが、横浜の創造都市の取り組みの紹介というよりは、NPO法人STスポット横浜の事例をもとに、NPOが社会的なサービスを提供し、地域の課題の解決につなげていくためのしくみづくり、特に行政や企業との協働を進めるためには何が必要か、という点について私の考えを発表させてもらった。

武邑氏、志賀野氏、鈴木氏の話は、どちらかというと行政機関の創造都市に向けての取り組みの紹介が主であったのに対し、水野氏の発表は市民の側の自発的な取り組みが注目を集めた事例であり、その活動の多彩さと自由闊達ぶりが大変印象に残った。

現在の、日本国内の各都市における創造都市論に対する注目は、行政機関の中での政策論という色彩がやや強く出ていて、そのように誤解して受け取っている人も多いかもしれないのだが、当然のことながら、行政だけが創造都市論を語ったり、行政が主導して創造都市を目指すのは現実的ではないし、そもそも、創造都市論は、そういう発想とは真逆のところから出てきていることはあらためて強調しておきたい。

(参考)
→ Creative Beaurocracy (2007/07/27)

ラウンドテーブルの司会を務めた杉浦幹男氏(大阪市立大学都市研究プラザ特任講師)は、そのあたりのことを意識して、議論を進めるポイントとして、それぞれの都市のクリエイティブ・キャピタル(創造的資本:これは今回の武邑氏の発表にあった言葉)となるものは何か、創造都市をつくるときのプレイヤーは誰か、創造都市形成への活動が持続するためのしくみは何か、の3点を挙げていた。

この種の議論では、最初の事例報告にある程度時間を割かなければ共通認識を持てないので、どうしてもディスカッション自体に当てる時間が短くなってしまうのは仕方がない。

しかし、創造都市といっても、その取り組みは都市ごとに異なるものであること(それぞれの都市に独自の創造的資本が存在している、または、それを発見すべきであること)、いろいろな立場の人たちが自由に、しかも連携しながら活動が展開されていくべきであること、そのためのしくみづくりが重要であること、は参加者の間に共有されたと思う。

私にとっても大変に今後のために参考になる議論だったと思う。










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2 コメント

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お疲れ様でした (佐々木雅幸)
2008-03-01 00:40:38
曽田さん、先日はお疲れ様でした。
中々、面白い会議になって、開催してよかったと思います。creative capitalという言葉を最初に使ったのは例のリチャード・フロリダです。social capitalよりも創造的な要素を強調するために使っているように思います。
また、議論の続きを楽しみたいですね。
3月2日から欧州とアジアの創造都市の最新事情を調査してきます。
それでは、また。
creative capital (sota)
2008-03-08 14:36:23
佐々木先生、コメントありがとうございました。

creative capital という言葉の由来について教えていただき、ありがとうございます。

今はまだ調査旅行中でいらっしゃるでしょうか。

今後ともよろしくお願いいたします。

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