有紗にも激励の言葉を貰った。
「わたし、陸上やってたでしょ。顧問の先生に言われたのはね、練習を始めた3ヵ月後から記録は伸び始める。あと、一日休んだら、それを取り返すには2日、いや3日かかるって。本当にその通りだった。勉強も同じじゃないかな?坂木君の記録が伸びるのはこれから。だからこの春休みも、少しずつでもいいから勉強続けた方がいいよ」
有紗は少し遠い目をしていた。
「わかった。矢野も新しい生活、楽しんで」
気の利いたことは言えなかった。ただ、彼女には激励は必要ないと思った。有紗が白い手を差し伸べてきた。僕も手を出し、握手をした。有紗の手は温かかった。初めて彼女の体温を感じた。そして、おそらく二度目はないだろう。有紗は「じゃあね」といって背を向けた。紺色のブレザーに豊かな黒髪が、春の日差しで眩しいほどに輝いていた。有紗の背中が次第に小さくなっていく。僕はいつまでも彼女の後姿を見ていた。
「わたし、陸上やってたでしょ。顧問の先生に言われたのはね、練習を始めた3ヵ月後から記録は伸び始める。あと、一日休んだら、それを取り返すには2日、いや3日かかるって。本当にその通りだった。勉強も同じじゃないかな?坂木君の記録が伸びるのはこれから。だからこの春休みも、少しずつでもいいから勉強続けた方がいいよ」
有紗は少し遠い目をしていた。
「わかった。矢野も新しい生活、楽しんで」
気の利いたことは言えなかった。ただ、彼女には激励は必要ないと思った。有紗が白い手を差し伸べてきた。僕も手を出し、握手をした。有紗の手は温かかった。初めて彼女の体温を感じた。そして、おそらく二度目はないだろう。有紗は「じゃあね」といって背を向けた。紺色のブレザーに豊かな黒髪が、春の日差しで眩しいほどに輝いていた。有紗の背中が次第に小さくなっていく。僕はいつまでも彼女の後姿を見ていた。