「認知行動のプリントはこれくらいにして、腹式呼吸は続けていますか?」
「はい、毎日続けています」
「では最後に一緒に腹式呼吸をやりましょう。その壁にかかっている時計の秒針が6のところから1分やってみます」
「はい」
「ゆっくり口から吐いて、鼻をすするように吸い込みます。そうです」
僕とUさんは二人で向き合い、腹式呼吸を続ける。
「ゆっくり吐いて、吸って。手をお腹において、膨らみと凹みを確認しながら。はい、お疲れ様でした。今日はこれで終わりです」
「ありがとうございました」
Uさんの表情が部屋に入ってきた時より、だいぶ柔らかくなっている。しかし、またすぐに元に戻ってしまうだろう。それで構わない。何度も繰り返して、少しずつ前進できればいい。
「では、気をつけて、帰ってくださいね」
「では、失礼します」
僕は彼女の後ろ姿を見送り、再び部屋に入った。今日の仕事が終わった。インスタントコーヒーを飲みながら、携帯のメールをチェックする。亜衣のメールが入っている。「大切なお知らせがありますので、寄り道をせず、まっすぐ帰ってきてね」と記されていた。それほど悪い報告ではないらしい。僕は亜衣との結婚前からの付き合いになる、100万もしない中古車で、妻の待つ自宅マンションへ向かった。
「はい、毎日続けています」
「では最後に一緒に腹式呼吸をやりましょう。その壁にかかっている時計の秒針が6のところから1分やってみます」
「はい」
「ゆっくり口から吐いて、鼻をすするように吸い込みます。そうです」
僕とUさんは二人で向き合い、腹式呼吸を続ける。
「ゆっくり吐いて、吸って。手をお腹において、膨らみと凹みを確認しながら。はい、お疲れ様でした。今日はこれで終わりです」
「ありがとうございました」
Uさんの表情が部屋に入ってきた時より、だいぶ柔らかくなっている。しかし、またすぐに元に戻ってしまうだろう。それで構わない。何度も繰り返して、少しずつ前進できればいい。
「では、気をつけて、帰ってくださいね」
「では、失礼します」
僕は彼女の後ろ姿を見送り、再び部屋に入った。今日の仕事が終わった。インスタントコーヒーを飲みながら、携帯のメールをチェックする。亜衣のメールが入っている。「大切なお知らせがありますので、寄り道をせず、まっすぐ帰ってきてね」と記されていた。それほど悪い報告ではないらしい。僕は亜衣との結婚前からの付き合いになる、100万もしない中古車で、妻の待つ自宅マンションへ向かった。