【ML251 (Marketing Lab 251)】文化マーケティング・トレンド分析

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「雑貨の時代」と「差別化消費の悪夢」 (『第四の消費』 三浦展 より)

2012年07月22日 | カルチュラル・キーワード備忘録
(以下、黒字部分は引用箇所)

ロフト、ハンズ、無印良品の成功が示すように、第三の消費社会は「雑貨の時代」であったとも言える。消費者がみずからの感性に基づいて「自分らしさ」を追求するようになると、画一的な大量生産品には関心が薄くなる。洗濯機や冷蔵庫で自己らしさを表現しようとは誰も思わないからである。

(中略)
ファッションでも、もちろん自己表現できる。二〇世紀初頭のシャネルに始まり、一九六〇年代以降のミニスカート、ジーンズ、あるいはイッセイ・ミヤケ、ワイズ、コム・デ・ギャルソンなどのデザイナーズブランドなど、ファッションこそが自己表現の最大の手段でありつづけた。だから、自己表現欲求の高まった第三の消費社会においては、ファッションが消費者の中で重要な役割を演じたのである。

しかし、そうであるがゆえに、ファッションは自己表現として重すぎるとも言える。自己を表現しすぎる、自分をひとつのスタイルを持った人間として表現しすぎるのである。そこには遊びが少し足りない。

自分はそれほどひとつのスタイルに固執はしていない。もっと多面的な存在である、そもそも既存のスタイルによって自己を表現するというのは一種の矛盾である、と無意識に感じとる消費者も増えてきた。そこで、ある特定のスタイルに、意図的に別のスタイルを加え、全体として少し「ズレた」印象を与える必要が生じる。そのとき、雑貨というものが有効であった。

(中略)
こうしたことは、物によって個性、自分らしさを表現することが、とても難しいことであること、自分らしさを表現することが、実はとても難しいことであるということ、自分らしさを追い求めることが一種の蟻地獄的な状況に陥ることにもなりうることを示唆していた。

(同書118~120ページより)


(中略)
だが、「人なみ化」が終わったわけではない。「差別化」と「人なみ化」が同時並行する。「人々は『人とちがう』ことをのぞみながら、同時に『ちがいがわかる』限りで『人と同じ』であることも望んでいる」。「『人とちがう』ことと『人なみ』であることとの狭間で、人々は無限に自分自身を写す合わせ鏡の中にはまりこんでしまう。あるチョイスをしたからと言って、それだけではもう誰も、自分が誰かを説明できない。もう誰ひとり、自分の欲望がわからな」くなるのだ。こうした事態を、上野は、社会学者・井上俊の言葉を借りて「悪夢の選択」と呼んだ。消費が悪夢となった時代。それもまた八〇年代なのである。

(同書123~124ページより)


「自分さがし」っていうのは、マスコミで散々喧伝され我々が刷り込まれたような「フリーター」「ニート」だけの話ではないわけだ。「フリーター」「ニート」にその特徴が凝縮されていただけで。

三浦の鋭い指摘に、私が一言加えるとすれば、「消費によってのみ可能だった自己表現」への「疲れ」に加え、「飽き」もあった、ということだ。「疲れ」は直線的な時間軸、「飽き」は円環的な時間軸で考えることができる。

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