【ML251 (Marketing Lab 251)】文化マーケティング・トレンド分析

トレンド分析ML251の文化マーケティング関連Blogです。ML251の主業務はトレンド分析をコアにしたデスクリサーチ。

女性アーティスト「魅力度」への影響項目(数量化Ⅰ類)②

2007年10月28日 | 女性アーティストブランド価値評価・構造
 こんにちわ! 私です。
 今日、東京地方は「台風一過」の秋晴れ。
 私は子供の頃、「台風一家」という怖い人達(?)が、
 「雷様」のように、本当に居座っているのかと思ってました。

■統計処理の意味

 前回は、音楽分野といってもメディアを流通するメジャーアーティストの場合、
 その「魅力度」には「感覚価値」、特に「ルックスのよさ」が最も影響度が高い、
 といういくつかの事例を紹介しました。

 通常、ユーザー調査の場合、単純集計が最もわかりやすいわけです。
 例えば、「ブランド価値評価」の結果がありますよね。(↓)

  

 で、今回のケースは、「観念価値」の「魅力的」に対して、
 「基本価値」「感覚価値」のどの評価項目の影響度が高いのか?
 について、トップ5項目を数値化してみたわけです。

 では、なぜ「多変量解析」という面倒臭い統計処理を加えるのか?

 それはユーザーの「深層心理」を可視化=数値化するためです。
 勿論、統計的に100%正しい、という仮説ではありませんが、
 制作側・供給側の「経験則」と、
 ユーザーの頭の中との齟齬を浮き彫りにできるというメリットもあるのです。

■同じ「セクシーさ」でも

 前職時のレポートで、「セクシーな感じがする」のポイントが最も高かったのは、
 倖田來未でした。(81.1%。但し、母数はアーティストが「好き」な人)
 これは特筆するまでもない結果だと思います。

 次いで、約10ポイントの差で、hitomi(69.0%)、
 東京事変(椎名林檎)(60.9%)と続きます。

 もちろん、だからと言って、
 倖田來未の「魅力度」に最も強い影響を及ぼすのが、
 「セクシーさ」とは限りません。
 こちら(↓)が、倖田來未の結果です。

   

   1.フレッシュな感じ (0.609)
   2.セクシーな感じがする (0.510)
   3.ボーカルの声質がよい (0.496)
   4.ファッションセンスがいい (0.295)
   5.ルックスがいい (0.113)

 ヴィジュアル面=「感覚価値」の「フレッシュな感じ」が最も高いですね。
 「セクシーな感じがする」も「0.510」で高いんですけど、
 「基本価値」の「ボーカルの声質がよい」も「0.496」と、
 「セクシーな感じがする」に匹敵するほど高くなっています。

 「ブランド価値評価」で「セクシーな感じがする」が2番目に高かったhitomiの場合はどうでしょうか?(↓)

    

   1.ボーカルの声質がよい (1.100)
   2.フレッシュな感じ (0.639)
   3.セクシーな感じがする (0.565)
   4.ルックスがいい (0.564)
   5.ファッションセンスがいい (0.379)

 ダントツに高いのが、「基本価値」の「ボーカルの声質がよい」(1.100)です。
 「セクシーな感じがする」は3番目で「0.565」です。
 ビジュアル面の評価が高いながらも、
 「声質」が「魅力度」に貢献する比率の高さが目立ちます。

■「基本価値」の影響は?

 東京事変(椎名林檎)の場合はどうでしょうか?(↓)

    

   1.ボーカルの声質がよい (0.819)
   2.ファッションセンスがいい (0.764)
   3.歌詞の内容が好き (0.578)
   4.セクシーな感じがする (0.476)
   5、曲の構成がよい (0.474)

 「ボーカルの声質がよい」の影響度が最も高く、
 「歌詞の内容が好き」「曲の構成がよい」という3項目と合わせ、
 「基本価値」の3評価項目がトップ5に入っています。
 “音楽的な評価”の「魅力度」に与える影響が強く、
 その中に、「ファッションセンスがいい」「セクシーな感じがする」という
 「感覚価値」がさりげなく入っている、という感じでしょうか。

 やはり、「魅力度」に影響する項目が、「基本価値」で多いのが、
 mihimaru GT です。
 ただし、「歌唱力」や「声質のよさ」という属人的な項目よりも、
 「楽曲」についての項目が目立っています。(↓)

   

   1.曲が洗練されている (0.937 )
   2.ルックスがいい (0.722)
   3.楽曲と合っている (0.629)
   4.曲の構成がよい (0.569)
   5.ボーカルの声質がよい (0.470)

 「曲が洗練されている」「曲の構成がよい」が1番目と4番目。
 「感覚価値」でも、「ルックスがいい」とともに「楽曲と合っている」が
 3番目です。

 ところで、アーティストにとって最も大切な評価項目と考えられる、
 「歌唱力」についてはどうなんでしょうか?

 実は50アーティスト中、「魅力度」に影響するトップ5項目に、
 「歌唱力」が入っていたのは、AIと絢香のみでした。

 「歌唱力」はあって当然(「当たり前品質」)なんでしょうかね?

 AIの場合でも、(↓)

   

   1.ルックスがいい (0.818)
   2.楽曲と合っている (0.668)
   3.歌詞の内容が好き (0.668)
   4.ボーカルの声質がよい (0.594)
   5.歌唱力がある (0.263)

 トップ2は、「ルックスがいい」と「楽曲と合っている」の「感覚価値」。
 「歌唱力がある」は5番目(グラフでは一番左側の棒)ですね。

■統計処理の可能性

 冒頭に、統計処理を行なう意味を、ユーザーの深層心理の可視化=数値化、
 と述べましたが、
 かつて一斉を風靡したアーティストが、
 現在のポジションから更なる飛躍を遂げるには何が必要か?
 ヒントを与えることもできます。

 例えば矢井田瞳の場合です。(↓)

   

   1.時代遅れでない (0.772)
   2.ボーカルの声質がよい (0.762)
   3.歌詞の内容が好き (0.583)
   4.ファッションセンスがいい (0.546)
   5.ルックスがいい (0.490)
 
 「基本価値」の「声質」「歌詞の内容」がいいのは当たり前として、
 「時代遅れでない」という時代性こそ「魅力度」への影響が最も高い、
 という結果です。
 アーティストにとってどういった「時代性」が最適なのか?
 については、個々に詳細な検討が必要ですが。
 (こういう時に「経験則」も威力を発揮します)

 今回は「魅力度」への影響項目について書きましたが、
 調査設計時に、
 「購入意向」
 「購入経験」
 「購入金額」
 といった数値データを想定すれば、
 もっと役立つデータを得ることが出来ます。

 「メディア接触経験」を使ってもいいでしょう。

 購入へのトリガー

 については、多変量解析を使わずとも、
 「CD購入のキードライバー」で簡単に見ることもできますが、(↓)

  

 「ブランド価値」評価項目ではなく、
 もっと具体的なユーザーの性向や、メディア接触、購買行動、
 などの項目を使って、さらに具体的で施策に有効な結果を導き出すことも可能なのです。
 もちろん、ユーザーの深層心理の可視化=数値化が必要な場合には、
 「多変量解析」が有効なことは言うまでもありませんが。

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女性アーティスト「魅力度」への影響項目(数量化理論Ⅰ類)①

2007年10月26日 | 女性アーティストブランド価値評価・構造
 こんにちわ! 私です。
 秋雨の金曜日ですが、これから外出します。

 今日「日経ビジネスonline」で、
 マーケティング・エクセレント・カンパニー=花王さんの、
 「商品の“情緒的価値”を数値化-尾崎社長が高付加価値化の切り札として推進」
 という記事を目にしました。

 そこで今日は、「情緒的価値」ではありませんが、
 私のブランド価値評価項目手法を使った“遊び”のお話です。

 前職時に作成し、現在も販売中である、
 『女性50アーティストブランド価値評価レポート』のデータを、
 (こちらあちらでも販売中なんです。宜しくお願いいたします)
 「数量化理論Ⅰ類」という多変量解析手法を使って遊んでみました。

 8月に「回帰分析」の記事を書きましたが、
 「数量化理論Ⅰ類」はいわば「回帰分析」の“兄弟”です。
 簡単に言えば、
 「回帰分析」は、量的データで量的データを説明、
 「数量化理論Ⅰ類」は質的データで量的データを説明するものです。

 題して、

◆アーティストの「魅力度」に最も影響するブランド価値評価上位5項目

 “遊び”というのは、
 調査設計時、このような分析手法を使うことを想定していなかったので、
 多少、無理をしてみたからなんです。

 「数量化理論Ⅰ類」では、量的データを被説明変数(正確には「外的基準」)、
 質的データを説明変数(正確には「アイテム」)としますが、
 女性アーティストの「魅力度」を量的データに変換し、
 どの質的データが、どの程度影響しているのかを数値化してみました。

 *回帰分析の「回帰係数」は、数量化理論Ⅰ類では「カテゴリ・スコア」。
 *「影響度」は、「カテゴリ・スコア」×データレンジ(最大値-最小値)で算出。

   ■基本価値

     歌唱力がある
     ハーモニーがよい
     ボーカルの声質がよい
     曲が洗練されている
     曲の構成がよい
     歌詞の内容が好き

   ■感覚価値(ヴィジュアル)

     ファッションセンスがいい
     ルックスがいい
     セクシーな感じがする
     楽曲と合っている
     時代遅れでない
     フレッシュな感じ

 まず全体的な結果なんですけど、
 女性アーティストの場合、上記12項目(カテゴリ)中、

   1.ルックスがいい (感覚価値)
   2.ボーカルの声質がよい(基本価値)
   3.時代遅れでない(感覚価値)
   4.フレッシュな感じ(感覚価値)
   5.歌詞の内容が好き(基本価値)

 の順で「魅力度」に対する影響度が高かったことです。

 アーティストの場合、
 歌唱力など私の言う「基本価値」の要素ばかり注目しがちなんですけど、
 メディア化した「アーティスト」というブランドは、
 ヴィジュアルなどの「感覚価値」が占める比率が高いんですね、当然ながら。

 勿論、「純粋に音楽性で評価されたい」というアーティスト・エゴも、
 よ~くわかりますし、そのフィールドで勝負しておられる方も少なくありませんが。

■浜崎あゆみ、大塚愛

 で、タイトルの画像は、上記5項目が上位5項目となった、
 浜崎あゆみのケーススタディです。下記にも入れました(↓)
 (小さくて、よ~わからんですね。。。スンマセン)

   

 「重決定 R2」が、「0.737」なので、
 統計的にはこの結果で74%は説明できる、とザックリと理解して下さい。
 (きちんと設計時に想定していれば、90%台だったかもしれません)

 浜崎あゆみの場合、「魅力度」に最も貢献する項目は、

   1.ルックスがいい (0.929)
   2.歌詞の内容が好き (0.674)
   3.フレッシュな感じ (0.596)
   4.ボーカルの声質がよい (0.536)
   5.ファッションセンスがいい (0.442)

 という順。(カッコ内は「影響度」)
 グラフのブルーの棒は「感覚価値」、コーラルの棒は「基本価値」の項目です。

 因みに、上記5項目が同じでも、影響度の順が異なるケースは多く、
 大塚愛の場合は、このようになります。(↓)

   

   1.ボーカルの声質がよい (0.872)
   2.ルックスがいい (0.712)
   3.フレッシュな感じ (0.545)
   4.時代遅れでない (0.451)
   5.歌詞の内容が好き (0.441)

 概して、女性アーティストの場合、
 感覚価値の「ルックス」の影響度が高いのが特徴です。

■島谷ひとみ、BoA、綾瀬はるか

 島谷ひとみ、BoAなどは、「ルックスのよさ」が影響度のトップです。

   

   1.ルックスがいい (1.096)
   2.歌詞の内容が好き (0.769)
   3.フレッシュな感じ (0.493)
   4.セクシーな感じがする (0.447)
   5.時代遅れでない (0.377)

   

   1.ルックスがいい (1.113)
   2.時代遅れでない (0.614)
   3.ボーカルの声質がよい (0.572)
   4.フレッシュな感じ (0.409)
   5.曲の構成がよい (0.376)

 女優さんがアーティストとして歌うケースも多いんですけど、
 綾瀬はるかの場合、特に「感覚価値」の影響度が高いですね。(↓)

   

   1.ルックスがいい (0.872)
   2.フレッシュな感じ (0.684)
   3.セクシーな感じがする (0.555)
   4.ファッションセンスがいい (0.452)
   5.曲の構成がよい (0.393)

 「基本価値」では、「曲の構成がよい」のみですね。
 (著名な作家から、いい楽曲を提供されているのでよくわかりますが・・・)

 と、ここで、Time is over.です。
 次回に続きます。(この記事の校正も後日ということで)

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「モテアイテム」と「ニーズ&ウォンツ」

2007年10月19日 | マーケティング話
 こんにちわ! 私です。
 昨日(10/18)、夏木マリさんと斎藤ノブさんのご結婚が発表されました。

 「フランス人のように愛にプライオリティーを持って生きる!」(夏木マリ談)

 私にもそう思える時期が来るんでしょうか。
 頭の中だけでしたら、そういう考え方って憧れるんです(^o^)。
 でも内観するに、「自分が独身である理由」がよーくわかるようになってきた。
 まだ、そんな段階なんですね。。。

 という話は置いといて、
 とにかくいいお話です。お二人のご結婚は。

 で、私、2月に「GIBIER du MARI」のこと書きましたね。

 そのとき、「大人の必須アイテム」であるこのアルバムを、
 「モテアイテム」と書かせて頂きました。

 そこで今日は、「モテアイテム」のことを少々書きます。

 私は過去も現在も「音楽カテゴリ」だけのマーケティングだけでなく、
 一般消費財(時には生産財)のマーケティングに携わってきました。
 マーケティング関係者の皆さんにはあえて説明する程のことではないんですが、

  「ニーズ」と「ウォンツ」

 という言葉をよく使います。

 ぶっちゃけた話、

 「ニーズ」とは、基本価値や機能価値に対する生活者の欲求のこと。
 (クルマはまず動くこと、速いことなど。食品では美味しいことなど)

 「ウォンツ」は、感覚価値、観念価値に対する生活者の欲求(欲動)のことです。
 時代性・トレンドの影響を強く受けますね。
 (クルマのスタイル、デザインなど。食品では健康にいいなど)
 
 「モテアイテム」とは、男性にとって「ニーズ」です。
 そして、どんなシチュエーションでどんな「モノ」を持てば、
 「モテるのか?」ということが「ウォンツ」。

 私が10代の頃、地元(大宮)の友人や後輩達は、
 暴走族を高校とともに卒業し、
 「サーファー」に衣替えした人達が少なくありません。
 (クルマは「シャコタン」のままでしたが。「スカイライン」のシャコタン=「シャコスカ」とか・・・)

 高校生の頃は、バンドをやっていても、
 「サーファー」のほうがモテる、ということで変身する人も。

 彼らの基本的な欲求は、「目立ちたい」と「モテたい」。
 (ターゲットは広いものではありませんけど。それも埼玉だし・・・)

 その「目立ちたい」「モテたい」という欲求こそ、「ニーズ」です。
 たまたま彼らの「ウォンツ」に応えるものが、「サーファー」だったわけです。

 音楽商品でもそうですけど、
 「トレンド」を読むことは大切ながらも、
 その時々の「ウォンツ」に振り回されてばかりだと、
 とてもじゃないですけど、やってられません。。。

 人間が人間である限り、そう簡単に変わることはない
 「ニーズ」を押えながら、「ウォンツ」を見ていかないとね。

 この辺りは、私がよく書かせて頂いている、
 シストラットの森行生さんの著作『シンプルマーケティング』
 でよくまとめられています。
 (34ページ、「ニーズ」と「ウォンツ」の適正バランスがロングセラーをつくる)

 『シンプルマーケティング』では、
 ヤンケロビッチの「価値観ヒエラルキー」も詳細に紹介されています。

   ①ソース=基本的意識、性格       <内的要因・深層>
   ②ヴァリュー=価値観
   ③クライテリア=生活基準
   ④テイスト=生活の志向、好み、感性
   ⑤マニュフェステーション=生活行動  <外的要因・表層>

 森さんも書かれていますけど、マスコミに登場する「ライフスタイル」は、
 ④テイストと、⑤マニュフェステーションを指す場合が殆どですね。。。

 この「価値観ヒエラルキー」に、「ニーズ」「ウォンツ」を重ねると、
 ①ソースなど深層の内的要因に「ニーズ」、
 ⑤マニュフェステーションなど表層の外的要因に「ウォンツ」が重なるわけです。

 まあ、今でも“スタンダード”として人々の記憶に残る名曲は、
 「ニーズ」と、その時々の想い出と結びついた「ウォンツ」のツボをモロに押えていたんでしょうね。

 また、「流行っている曲」「皆が聴いている(と思っている)曲」を好むという傾向も、
 人間の「基本的な欲求」のひとつであることも言うまでもありません。
 「欲望」には、「他人の欲しいものを自分も欲しい」という構造がありますからね。
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 ここまで、マーケティングのお話をしてきましたけど、
 「ニーズ」っていうのは、比較的「不変」な「普遍」的な概念でしょうね。
 商業的な話に限らず、私達が享受する音楽や映画でも「普遍性」は大切でしょう。
 人々の心を打つもの。

 知り合いの「ミュージックライフ・プランナー」栗原進さんが、
 昨日、mixiの日記で書かれていた文章を引用させて頂いて、
 また会いましょうということで。

  ロックンロールが50年経とうがHIPHOPが台頭してこようが、
  共通する根っこの部分って、実は今も昔も変わらないはず・・・


  それを【普遍性】って呼んでる

  この普遍性を伝える人、その声に耳を傾ける人が、少ないから
  音楽鑑賞が勝手に一人歩きするのだ!

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 秋らしくなってきたということで、長野産の「アルプス乙女」です(↑)。

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『音楽パッケージ商品購入実態調査2007』 ④ PSM分析

2007年10月12日 | 音楽パッケージ商品購入実態調査2007
 こんにちわ!
 朝から秋らしい天気だった今日なんですが、
 空模様が心配になってきた井上秀二です。
 (昨日、洗濯しておいて良かった・・・)

 今回も『音楽パッケージ商品購入実態調査2007』のことについて書きます。
 前回に引き続き、分析手法のお話です。

 音楽パッケージ商品(本レポートでは、シングル、アルバム、音楽DVDの3アイテムが分析対象)の市況が厳しくなって久しいのですが、特にメインターゲットである若年層にとっての可処分所得の問題は、語られ尽くしている感があります。

 供給サイドにとっては価格政策の問題なんですが、
 今回も、前回『音楽配信サービス利用実態調査レポート2006』と同様、
 PSM分析(Price Sensitivity Measurement)を行なって、
 ユーザーの値頃感を探ってみました。
 対象はシングル、アルバム、音楽DVDの3アイテムです。

 PSM分析のための設問項目は下記の通りです。

   1.いくら位から「高い」と感じはじめますか?
   2.いくら位から「安い」と感じはじめますか?
   3.いくら位から「高すぎて買えない」と感じはじめますか?
   4.いくら位から「安すぎて不安だ」と感じはじめますか?

 この結果をグラフにします。(↓)

  

 「交点計算」によって折れ線グラフの交点の値を算出、

  A.上限価格(最高価格)

      これを超えると「高すぎて」買わない価格

  B.妥当価格(妥協価格)

      これくらい払っても仕方がないと思い始める価格

  C.理想価格(最適価格)

      購入者の抵抗感が小さくマーケットに浸透しやすい価格

  D.下限価格(最低品質保証価格)

      「安すぎて品質が不安」と思う価格

という各々の価格を算出して、

 受容価格帯と適正価格帯というものを設定します。

 受容価格帯とは、「上限価格」から「下限価格」までのレンジ、
 適正価格代とはM「妥当価格」から「理想価格」までのレンジです。

 もちろん、実勢価格が理想価格と一致する、なんてこと滅多にないんですけどね。

 結果につきましては、
 誠に恐縮ながらレポートをご購入して頂いた上でご確認願いたいのですが、
 ざっくりと申しますと、ユーザーの値頃感は、

  アルバムは実勢価格との理想価格の乖離が小さく、
  シングルは高すぎ。
  音楽DVDはもっと高すぎ。

 集計作業真っ只中だった8月初旬、
 もちろん数値は伏せたまま、
 シングルの値頃感のことを
 mixiの私の日記に書いてみました。

 一般ユーザー、音楽制作会社、音楽ライターなど様々な友人達から、
 予想以上のリアクション(コメント)を頂き、想定外の盛り上がりでした。

 友人たちはヘビーユーザーが多いのですが、
 やはりシングルについては厳しい意見が目立ちました。

シングルが高すぎるって? 今更、なに当たり前のこと言ってんのよ???

 20代のヘビーユーザー(優れたCDレビューを書かれる方)をはじめ、

シングル買わなくなって久しい。。。

というコメントが目立ちました。

 実は、音楽DVDのほうが実勢価格と理想価格の乖離が大きいのですけど、
 シングルと異なり、歴史的に新しいアイテムです(ビデオとは区別しますね)。

 「高すぎる」と意識・無意識で思いつつもユーザーは買っている。
 さらに言えば、CD(シングル、アルバム)と違って、
 リアル(ショップ)よりもオンラインでの購入経験率が高いんです。

 商品特性・ターゲット層による多彩かつきめ細かななプライシング。
 チャネル政策ではオンラインショップでの訴求のさらなる強化。
 そして商品・情報とも、ユーザーとの「接点」を拡大するならば、
 これからの市場の拡大の可能性があるのではないか?

 という仮説を立てました。
 もちろん、将来的には映像配信という「脅威」があるのは事実ですが、
 ホームシアター環境(ハード)普及の可能性を勘案すれば、なんですけどね。

 最大の競合である「携帯電話」への出費によって、
 可処分所得が厳しい若年層(特に10代)でも、
 「音楽関連支出」は「増えている」!!!
 CDを含めた購入意向だって低いわけではない。
 まだまだ市況好転の可能性ってあるはずなんです。

 買いやすい価格の「普及盤」、
 高付加価値アイテムとしての「プレミアム盤」。
 現状は厳しすぎるとは言っても、
 パッケージ商品の生きる道って決して、暗いものではないのではないかと。

 もちろん、音楽DVDについては、
 「DVD付きCD」との差別化が必要なことは言うまでもありません。
 かつての8㎝シングルのマキシ化、のようにユーザーが混乱することがないように、ですね(^_^;)。

  

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『音楽パッケージ商品購入実態調査2007』 ③ 双対尺度法

2007年10月11日 | 音楽パッケージ商品購入実態調査2007
 こんにちわ!
 もうお昼近いんですけど、天気が良くなってきたので、
 「遅くはない! 洗濯をしようか」と考えている井上秀二です。

 そして今、洗濯機のスタートボタンを押しました。

 さて、先月末に発刊いたしました『音楽パッケージ商品購入実態調査2007』ですが、
 2.CDショップ利用の実態とショップイメージ
 2-7.主要CDショップのイメージマップでは、
 全国主要9ショップについて、
 性・年齢層という切り口による、
 「ユーザーベネフィット別のイメージマップ」を掲載しました。

 「ユーザーベネフィット別のイメージマップ」と言われても、
 「何のこっちゃ???」と思われる方も少なくないとは思うんですけど(^_^;)、

 例えば、

 「10代後半男性」は、9ショップのうちどのショップを最も「品揃えがいい」と思っているのか?
 「20代女性」は? 「30代男性」は?・・・・・・
 という傾向を一目でわかるようにビジュアルで可視化したものです。

 この図(↓)がそれです。(ショップ名は伏せさせていただきました)

  

 この図表2-26.のユーザーベネフィットは、
 「ショップが薦めるCD・DVDが魅力的」

 左上に「男性15~19歳」と「ショップA」の中心点が相対的に近い位置にプロットされている(関係性が高い)ので、楕円の線で囲ってグルーピングしました。

 「女性15~19歳」は「ショップB」「ショップC」「ショップD」。
 男女とも20~40代は、「ショップE」「ショップF」「ショップG」。
 「女性50歳以上」は「ショップH」、
 「男性50歳以上」は「ショップI」、

というグルーピングです。

 「ユーザーベネフィット」は全10項目です。

  ■「品揃えがいい」
  ■「欲しいCD・DVDが置いてある」
  ■「ショップが薦めるCD・DVDが魅力的」
  ■「試聴機などの店内設備が充実している」
  ■「売場の雰囲気が良い」
  ■「ショップにいるとワクワクする」
  ■「居心地がいい感じがする」
  ■「ショップに行くことにステイタスを感じる」
  ■「その店独自の購入特典が充実している」
  ■「近いなど行くのに便利」

 このマッピングには「双対尺度法」という多変量解析の手法を使いました。
 (ご参考はこちらです)

 で、ここからは本レポートの内容ではないのですが、
 「双対尺度法」を、アーティスト・ブランディング・アナリストの私がどのように使っているのか? の例を書かせていただきます。

 

 これ(↑)は、「主要雑誌とアーティストの好関図(女性の場合)」なんですが、
 「好関図」とは、私が勝手に考えた言葉です。(もし既にあったらゴメンなさい・・・)

 集計・分析結果は日の目を見ることがなかった(と言うか、集計・分析する時間がなかった・・・)、2年前のデータを使って遊んでみました。
 統計処理に十分耐えられるサンプル数が満たなかったので、「遊び」で作ってみたわけです。
 でもそれなりの結果が出ましたので掲載してみました。

 取り上げた雑誌とアーティストの基準?

 それは回答数が多かった雑誌とアーティストです。
 調査実施時には、このようなアウトプットを想定していなかったもんで(^_^;)。
 で、この「好関図」は、

  「あるアーティストを好む回答者が愛読している雑誌」

をクロス集計した結果を元にしています。

 アーティストのプロモーションでは、まず音楽雑誌なんですが、
 この図では音楽雑誌以外の(女性)雑誌が入ってます。
 
生活者は音楽のことだけを考えて日々、生活しているわけではない

という当たり前のことが前提です。

 もちろん概観なので大雑把なんですけど、
 あくまでも傾向としてグルーピングしてみると、

  A.「Can Cam」 : B'z、浜崎あゆみ

  B.「non・no」「mina」「an・an」 :
     ゆず、Mr.Children、SMAP、柴咲コウ、Dreams Come True

  C.「オレンジページ」「MORE」「WITH」 :
     HY、ポルノグラフィティ、サザンオールスターズ、平井堅、Crystal Kay

というグループルーピンがY軸中心付近にプロットできます。

 スキマスイッチはB、Cグループの中程、
 L'Arc~en~Cielは「non・no」に近いです。

 そして専門性の高い音楽雑誌のグループがX軸の左右にプロットされます。

  D.「PATi PATi」 : T.M.Revolution

  E.「Oricon Style」 : KinKi Kids、w-inds.

  F.「rockin'on JAPAN」 : ASIAN KUNG-FU GENERATION

 “ターゲティング・メディア”である雑誌の場合、年齢層の影響が強いんですけどね。

 これは「遊び」なんですけど、回答者(サンプル)数がもっと多ければ、
 精度は高くなるのは言うまでもありません。

 また、こういったマップを見て、

  「自分の経験則とは違う!!!」

 と仰る方もいらっしゃいますけど、
 それは経験則と「生活者の実態」のズレの場合が少なくありません。

 消費者行動研究の末席に置いていただいている私の基本姿勢は、

マーケティングの“主戦場”は、ユーザーの頭の中にある

なんです。

 先に取り上げた、CDショップの「イメージマップ」でも、
 たとえショップの側に「自信」があっても、
 ユーザーが「そう思って」いなければ意味がない。
 「実態」ではなく、たとえ「イメージ」でも。

 肝心なのは“ユーザーの頭の中の地図”

 私はそういう基本姿勢で、ポジショニング・マップを活用しています。

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『音楽パッケージ商品購入実態調査2007』 ② 「咀嚼欲」

2007年10月02日 | 音楽パッケージ商品購入実態調査2007
 こんにちわ!
 今日は北は寒く、南は暖かい一日のようですね。
 東京はちょうどいいんじゃないの? と私は思います。

 今回も『音楽パッケージ商品購入実態調査2007』のお話です。

 7月に書いた読書録で取り上げさせて頂いたんですけど、
 小寺信良さんの『メディア進化社会』という書籍があります。
 表紙の「眼」が怖いやつです(^_^;)。

  

 この本の中で、音楽パッケージ商品について私が以前から気になっていたことを、小寺さんが的確に表現されていることを見つけました。
 以下、引用させて頂きます(青字部分)

■パッケージングが生む、もう一つの欲望

(中略)音楽というコンテンツには、あまりにも膨大な情報が含まれている。
複数の音色、複数のリズム、複数の旋律、そして言葉。
これらが時間的に変化していくものを、人間の脳はまるごと全部は記憶できない。
だが反復して体験することで、次第にそのエッセンスを記憶していく。
旋律や言葉から来るイメージをリアルタイムで脳内に投影したり、あるいは演奏家の姿を思い描く作業などを行なった結果、そのコンテンツの細かいニュアンスまで把握していく。
 反復して体験するという機能を利用することによって、新たにコンテンツを把握するための欲、敢えてグロテスクな表現を用いるならば、そこには「咀嚼欲」とでも呼ぶべき感情が発生しているのではないだろうか。そして咀嚼することで、その作品の自分自身の精神的な充足や成長の糧として利用するわけである。(33ページより。太字は引用者)

 この文脈は、デジタル音楽のDRM等の「制限」が「咀嚼欲」を減退させるという流れになるんですけど、小寺さんが定義付けた「咀嚼欲」は、とても的確な表現だと思いました。

 「咀嚼欲」自体は小寺さんの表現なので、私は使いませんが、
 内容は私が以前から持っていた問題意識と同じだったので、
 今回の調査設問項目に入れてみました。

 「5.音楽パッケージ商品の受容度と購入意向」(5章)の、
 「音楽パッケージ商品を購入する理由」(64、65ページ)なんですが、

  「所有したCDやDVDをいつでも視聴できることにメリットを感じる」

 という項目を加えてみたのです(複数回答)。
 詳細な結果はここでは書けませんが、
 乱暴な言い方をしますと、

オッサン・オバハンでその傾向が強い

 ということです(^o^)。
 年齢層別で見ますと、特に「50歳以上」で高かった。
 若年層と異なり、「歌詞カードが欲しい」「好きなアーティストだけはCDを購入したい」よりも高ポイントでした。

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