【ML251 (Marketing Lab 251)】文化マーケティング・トレンド分析

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「女子」の誕生(米澤泉著、勁草書房、2014年7月刊)

2014年08月19日 | 書評
大学2年生の年末、新宿LOFTの大晦日、年越しオールナイトライブに先輩のバンドが出るんで、スタッフとして参加した。
そのとき、対バンの一つが上野耕路と戸川純のユニット「ゲルニカ」
後に私と同じ歳とわかった戸川純は本当に変な人で驚いた。
本番のほうがフツーで、リハのときが変。
(細野晴臣のYENレーベル(アルファレコード内)からデビューする直前だったろう)

その戸川純が、2010年代の「女子」「女子力」「ガーリー」の“源泉”“種”という説を本書で読み、意外というか驚き。
それも「腐女子」「文科系女子」といったマイノリティの話ではない。
自分の「常識」「想像力」ではとても辿り着けない説だ。
そこんとこ、自分は男なんだろう。
ファッション誌の「女子」を代表する存在で、他に類を見ないほど「女子」を着ることを実践している写真家の蜷川実花が、戸川純の大フリークである。
本書を読み始める前まで、『Sweet』『InRed』『GLOW』『VERY』『STORY』『CUTiE』『DRESS』といった青文字系、赤文字系雑誌がメインと想像していて、前半はその通りであった(「女子力」の勃興とは青文字系と赤文字系とのシェア逆転)のだが、終盤でそんなラジカル(根源的)な歴史性の“種明かし”。
青文字系とは宝島社なのだが、宝島社には70年代、80年代からのDNAがあった、ということなんだろうか。

「女子」なんてコトバが普及する前、何年前だったろうか? とにかく女性が男性のためではなく女性、自分自身のために化粧をしファッションを選ぶようになったことは、自分にとっては常識のはずだった。
それを歴史性を踏まえ、論理的に解説されているのが本書だ。そのキーワードが青文字系雑誌だ。
本書を読むまで、表紙のモデルに笑顔がない「モード誌」と、表紙のモデルに8割の微笑みがある「実用ファッション誌」の違いさえ知らなかった。

年齢を超越したキレイ。
「恋愛」は最終目的ではなく「美」が最終目的。
化粧や装うことによってキレイに、「なりたい自分」になる。
「女子」が世界に立ち向かうための武装。
「仮装」によって世界を拒絶する一方で、「武装」によって世界に立ち向かう。
繭と鎧。

あと「アラサー」といった言葉は、当時、バズワードにしかならんと思っていたが根づいてしまった。それも雑誌の力だろう。
「女子」「女子力」といった言葉への反発も世の中にはあると思うが、大正から昭和、「婦人」「女学生」という言葉も雑誌から生まれたことも本書を読めばわかる。
ネット社会の現代でも、オールドメディアとしてその危機的状況にある雑誌だが、その世の中への影響力は決して劣化することはないだろう。
90年代までの女性の“教科書”『JJ』の販売部数が激減しても、年代などの属性という旧ターゲットを超越した宝島社の青文字雑誌に政権交代したにすぎない。

百貨店文化や「JJ」など赤文字系の主要フレームから、年代などを超越したターゲット。
「女子」ってのはマジョリティの「トライブ」じゃないの?

「私萌え」。
これも、私がよく使わせてもらっている「コンサマトリー」(な生き方)そのものだ。

「女子」の誕生
米澤 泉
勁草書房


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『売る力 心をつかむ仕事術』 鈴木敏文著 文春新書 2013年10月刊

2014年08月11日 | 書評
長期出張があったたため、リニューアル後にも関わらず、「週一更新」が「月一更新」となってしまいました。。

「読んどいてよかった」一冊。
おそらく著者本人の口述か何かを元にゴーストライターが書いたはず(悪いと言ってるのではなく、それが当たり前)だが、カリスマ経営者の著作の中では、一般性・普遍性のある内容となっている。

「変わらない視点」と「新しい」ネタ。
「漢方薬と抗生物質」のメタファー。
「ココアとバターと文庫本」。
とてもシンプルで、自分のフレームワークに活用させていただく。
人様のことがどーやらこーたら「分析」「コンサル」するだけでなく、自分の手掛ける「こと」で。

自分のバイブルの一冊であるケビン・メイニーの著作『トレードオフ』も鈴木氏は、戦略的な視野を広げる一助になるとグループ社員に薦めたそうだ。
「上質」と「手軽さ」のことね。
実際、鈴木氏はセブンやヨーカ堂の商品開発で、「不毛地帯」に陥ることのない実績をあげられてきた。
それも鈴木氏ならでは、だろう。
まず最初に、皆が皆、賛成するようなものはほぼ失敗する。
僕がよくいうように、例えばアンケート調査で「好意度80%」のようなものはまず大ヒットすることはない。
それも鈴木氏の場合、「反対」の数が半端ではない。
鈴木氏だから凄まじすぎる「反対」「無謀だ!」の声を押し切ってこられたのは事実で、例えば一サラリーマンでは無理しょ? というパターンも多い。
鈴木氏はただのカリスマではない。
「マーケティング」を頭と体でよくわかられている方だ。
それも「心理学」のほう。
本書を読まれればわかるが、佐藤可士和、バルス(フラン・フラン)の高島社長はじめ、独創的な商品・サービスを開発・展開されてきた方々との共通項が多い。
ルーディ和子氏、辰巳渚氏といった鋭く優れた女性マーケティング研究者の知見も勉強されていたのを知り、僕も驚いた。
失礼いたしました。

売る力 心をつかむ仕事術
鈴木敏文
文藝春秋

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