【ML251 (Marketing Lab 251)】文化マーケティング・トレンド分析

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『合理的なのに愚かな戦略』(ルディー和子著、日本実業出版社、2014年11月刊)

2014年11月28日 | 読書ノート(引用中心)
私が長年、ファンだったルディー和子さまの新著の「読書ノート」をこちらに公開します。全5回です。
常に「トレード・オフ」の昇華を考えつつ戦略を練られている、セブン&アイ・ホールディングス会長兼CEOの伊藤敏文氏も、ルディーさんの「行動経済学」的知見を参考にされてるそうです。
以下、全て引用です。

【ルディー和子さま語録 その1】

「お客様は神様」だとしても、顧客の声がいつも天(神)の声だというわけではない。神様といっても死神様も貧乏神様もいる。
結局、破壊的イノベーションを生み出すためには、自分の心の声(直感)に耳を傾けるしかないことを、アップルのスティーブ・ジョブスもソニーの盛田も知っていた。
神頼みはダメなのだ。
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グローバルな時代だというのに、若い世代が内向きで困る。海外に留学する学生の数は減る一方だ・・・・・・と嘆くのは、前の世代の考え方です。
いまの若者たちが地元志向で自分の家族や友人との関係を重要視するおは、グローバルな時代に沿った賢い選択です。
こういった世代が生まれたことを千載一遇のチャンスと捉え、地方再生の原動力とする考え方が必要です。
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企業人も、仕事から離れて純粋に購買者の立場に立ってショッピングをするときの自分自身を分析してみれば、直感とか勘、ひらめき、あるいは「ただなんとなく」というアバウトな感覚で購買決定していることがわかるはずだ。
それでも、プライシング(価格づけ)することが仕事になると、調査結果とか購買データに基づく事実(実際には真実を伝えているわけではない事実)を分析して答えを見つけようとする。
だが、そういった方法で見つけた適正価格は、消費者の購買時の感覚をとらえたものになっているのだろうか?
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パターン認識が支える直感や勘は、おおよそよい結果をもたらすことができる。しかし、もともとは、進化の歴史のなかで獲得した脳の仕組みで、複雑なことを査定するものではない。
人類の数百万年の歴史の大半において、意思決定と言えば、毒蛇と突然遭遇した場合にはどうしたらよいか? あのゾウをつかまえたいが、大きすぎて危険だから、狩りはあきらめようかとかいった類のものだ。
ちょっと複雑になったとしても、あの女性と交配したいが、オレの兄貴もそのつもりのようだ。戦って決着をつけるか、それとも、女に狩りでしとめた肉をやるか? 兄貴は体が大きくて力持ちだから戦っても負けるかもしれない。女に肉を贈ることにしよう・・・・・・くらいのレベルだったであろう。
(中略)
ジャック・ウェルチが言うように、パターン認識からくる直感が教えてくれるデータと現在のデータとを組み合わせ、過去に見たパターンと現状との違いを見きわめることでよい判断を下す。
しかし、過去に見たパターンへの偏り(バイアス)、つまり依存度が高い場合には、間違った判断が下されることになる。
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過去の倒産という悪循環のパターン認識と、おやじと慕い敬愛した実質的創業者が残した価値観への絶対的信奉。
この二つが吉野家の経営戦略を、ともすると曖昧なものにしてしまったような気がする。
もし、2001年に吉野家がプライスリーダー戦略を守り、値下げをしなかったら?
その選択肢をとっていた場合は、ブランド価値を守りコアなファンを魅了し続ける吉野家になっていたかもしれない。
売上は少なくても利益性の高いビジネスを維持することができたかもしれない。

合理的なのに愚かな戦略
ルディー和子
日本実業出版社

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『だから日本はズレている』(古市憲寿著、新潮新書、 2014年4月17日刊)

2014年11月27日 | 読書ノート(引用中心)
ゼロ年代からの「ネット言説」には注意せよということですね。
過去の歴史って重要です。
(以下、黒字部分引用)

そもそも不買運動なんて、ソーシャルメディアが発達する前から普通に起こっていた。(中略)どうだろうか。アマゾンレビューを荒らす花王の不買運動なんてかわいいものに思えてこないだろうか。事実、花王の株価や業績を見る限り、「不買運動」の効果を確認することはできない。
これは昔の人のほうが熱くて、今の人のほうが冷めているとか、そんな簡単な問題ではない。ソーシャルメディア時代の企業パッシングは、実は原理的に、インターネットさえなかった時代よりも手緩くならざるを得ないのだ。
ソーシャルメディアにおける「共感」というのは、冷めやすいものだ。一瞬、マスコミの不正に怒り狂ってニコニコ動画やブログを使って何かを書き散らしても、その気持ちは長くは続かない。
さらに、人々に「何かした」感を気軽に与えてしまう。ツイッターで何かそれっぽいことを書いて、大勢の人にリツイートされれば「これで花王をこらしめてやったぜ」とでも思ってしまう。
つまり、ソーシャルメディアがガス抜き装置になって、1970年代のような大規模な不買運動の可能性が抑制されているのだ。(106~108ページより)


たとえば「初のネット選挙」と話題になった2013年の参議院選挙で、ホリエモンや三木谷浩史、東浩紀など多くのネット上の有名人が応援した鈴木寛は当選することができなかった。浜崎あゆみやEXILEなど大物アーティストの協力を仰ぎ、ネット上で政治活動をした伊藤洋介も落選した。
2014年の東京都知事選も、主にネットを用いた選挙活動を行い、やはりホリエモンや田村淳などがエールを送った家入一真も、結局は9万票弱しか獲得することができなかった。これが現在の「ネット」や「ソーシャルメディア」の実力である。
企業が実は真剣に考えなくはならないのは、ソーシャルメディアの影響力の低さだろう。


家電メーカーさんの、勘違いした高付加価値・差別化の表現がブラックユーモアでよろしい。

パナソニックは一時「スマート家電」というものを本気で売り出そうとしていた。(中略))洗濯機本体にスマートフォンをタッチすると、クラウドサーバーと通信、洗剤や柔軟剤の種類が設定できるという。そんなのスマホを使わず設定したいところだが、あえて最新テクノロジーを使わせるあたりが非常にスマートだ。(78-79ページより)
パナソニックだけではない。最近ではシャープがココロエンジンという人工知能を搭載し、言葉や光、ダンスでコミュニケーションがとれる掃除機を売り出している。いいから、普通に掃除して欲しい。他にも富士通がパソコンにナノイーイオン発生装置を搭載したりと、家電メーカーのご乱心は止まることがない。(81ページより)


だから日本はズレている (新潮新書 566)
古市 憲寿
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