姜尚中 「悩む力」が出たのが2008年だから、本書はほぼ4年ぶりに出た続編。
姜尚中の「悩む力」といえば、マックス・ウエーバーと夏目漱石だが、続編も同じで安心した。
ちょうど1年前、「コンテンツを求める私たちの『欲望』」の執筆を始めた私の脳裏には、姜尚中の「悩む力」はなかったと思う。
が、「近代日本人のアーキタイプ」を漱石の小説の登場人物たちに求めた私にも、姜尚中の人間観と共通するものがあったことは事実だ。
この4年の間には、国内では2011年3月11日があったわけで、その意味でも続編の価値は高いのではないかと考える。
「終章」で著者は、V・E・フランクルが提示した「人間の価値のあり方」の3分類を紹介している。
【人間の真価その1】 「創造」
芸術的創造に限らず、科学における発明や、企業活動における技術の開発、商品やサービスの創造、何らかの業績をあげること。
私の私見を入れると、目新しいものを「創造」せずとも、人のためになる仕事に誠実に取り組むことも価値である。
【人間の真価その2】 「経験」
「創造」はできなくても「経験」だけでも人生に重みが加わる。
【人間の真価その3】 「態度」
3つの価値のうち、妻と二人の子供をナチスに殺されたフランクルが最も重視したのが「態度」。
「創造」や「経験」は平常時、しかも心身ともに健康なときでなければ実現されることはない。
しかし、「態度」は、健やかなるときも病めるときも、想いさえあれば発揮することができる。
よくキリスト教系の結婚式で神父さんが云う、「健やかなるときも病めるときも」っていうのは実は大変重い意味があるわけだ。
結婚する当人たちには、右の耳から左の耳へ、で、割と簡単に離婚しちゃったりするんだけど。
「態度による価値とは、この社会で日常的に聞際にされている、成功か失敗か、効率化非効率か、有効か無効かといったものの彼岸にあり、また、資本主義社会の生産や交換価値とは対極の位置を占めているもの」(同書198ページ)であり、限りなく人間の本質を表しているのではないか? と著者は云う。
われわれは、人生を考えるとき、自分のわずかな知識と経験から「意味があるのか?」と問うて、「意味がない」と判断すれば絶望し、ときには自ら人生の幕を閉じる。
しかし、フランクルの主張は逆で、人生とは、「人生のほうから投げかけてくるさまざまな問い」に対し、「私が一つ一つ答えていく」ことであるという(考え方の“コペルニクス的転換”)。
「責任」と訳される responsibility という英語が「応答」を意味する response から派生した言葉であることも、「答える」ことと「責任をとる」ことの関係性を示している、というわけだ。
つまり、自分が世界に対して要求することが「創造」、自分を超えた世界からの要求に、責任をもって答えることが「態度」であると著者はまとめている。
「私たちの人生は、ほかならぬその人生から発せられる問いに一つ一つ応答していくことであり、幸福というのは、それに答え終わったときの結果にすぎないのです。ですから、幸福は人生の目的ではないし、目的として求めることもできないのです。つまり、幸せをつかむために何かをやる、という考え自体が本来的に成り立たないのです。」(同書212ページ、太字は引用者)
「人生のほうから投げかけてくるさまざまな問い」に答えることに精一杯で、今、「読書どころではない」状態にある人でも、合間があったら一読しておいて損はない本だ。
***************************************
▼記事へのご意見、Cultural Marketing Lab INOUE. (CMLI) へのお問い合わせは下記メールにてお願いいたします。
sinoue0212@goo.jp
***************************************
▼『コンテンツを求める私たちの「欲望」』
電子書籍(無料)、閲覧数8,500突破しました!
私の思想=文化マーケティングの視座が凝縮されています。
http://p.booklog.jp/book/43959
***************************************
▼パートナー企業様
*詳細につきましては担当者とご説明に参ります。
【ソーシャルリスニング】につきましては、
GMOリサーチ株式会社 「GMOグローバル・ソーシャル・リサーチ」
http://www.gmo-research.jp/service/gsr.html#tabContents01
【激変するメディアライフ! 感性と消費の新常識】
アスキー総合研究所「MCS2012」
http://research.ascii.jp/consumer/contentsconsumer/
***************************************
お読み頂き有難うございます。
(↓)クリックの程、宜しくお願い申し上げます。
音楽 ブログランキングへ
マーケティング・経営 ブログランキングへ
姜尚中の「悩む力」といえば、マックス・ウエーバーと夏目漱石だが、続編も同じで安心した。
ちょうど1年前、「コンテンツを求める私たちの『欲望』」の執筆を始めた私の脳裏には、姜尚中の「悩む力」はなかったと思う。
が、「近代日本人のアーキタイプ」を漱石の小説の登場人物たちに求めた私にも、姜尚中の人間観と共通するものがあったことは事実だ。
この4年の間には、国内では2011年3月11日があったわけで、その意味でも続編の価値は高いのではないかと考える。
「終章」で著者は、V・E・フランクルが提示した「人間の価値のあり方」の3分類を紹介している。
【人間の真価その1】 「創造」
芸術的創造に限らず、科学における発明や、企業活動における技術の開発、商品やサービスの創造、何らかの業績をあげること。
私の私見を入れると、目新しいものを「創造」せずとも、人のためになる仕事に誠実に取り組むことも価値である。
【人間の真価その2】 「経験」
「創造」はできなくても「経験」だけでも人生に重みが加わる。
【人間の真価その3】 「態度」
3つの価値のうち、妻と二人の子供をナチスに殺されたフランクルが最も重視したのが「態度」。
「創造」や「経験」は平常時、しかも心身ともに健康なときでなければ実現されることはない。
しかし、「態度」は、健やかなるときも病めるときも、想いさえあれば発揮することができる。
よくキリスト教系の結婚式で神父さんが云う、「健やかなるときも病めるときも」っていうのは実は大変重い意味があるわけだ。
結婚する当人たちには、右の耳から左の耳へ、で、割と簡単に離婚しちゃったりするんだけど。
「態度による価値とは、この社会で日常的に聞際にされている、成功か失敗か、効率化非効率か、有効か無効かといったものの彼岸にあり、また、資本主義社会の生産や交換価値とは対極の位置を占めているもの」(同書198ページ)であり、限りなく人間の本質を表しているのではないか? と著者は云う。
われわれは、人生を考えるとき、自分のわずかな知識と経験から「意味があるのか?」と問うて、「意味がない」と判断すれば絶望し、ときには自ら人生の幕を閉じる。
しかし、フランクルの主張は逆で、人生とは、「人生のほうから投げかけてくるさまざまな問い」に対し、「私が一つ一つ答えていく」ことであるという(考え方の“コペルニクス的転換”)。
「責任」と訳される responsibility という英語が「応答」を意味する response から派生した言葉であることも、「答える」ことと「責任をとる」ことの関係性を示している、というわけだ。
つまり、自分が世界に対して要求することが「創造」、自分を超えた世界からの要求に、責任をもって答えることが「態度」であると著者はまとめている。
「私たちの人生は、ほかならぬその人生から発せられる問いに一つ一つ応答していくことであり、幸福というのは、それに答え終わったときの結果にすぎないのです。ですから、幸福は人生の目的ではないし、目的として求めることもできないのです。つまり、幸せをつかむために何かをやる、という考え自体が本来的に成り立たないのです。」(同書212ページ、太字は引用者)
「人生のほうから投げかけてくるさまざまな問い」に答えることに精一杯で、今、「読書どころではない」状態にある人でも、合間があったら一読しておいて損はない本だ。
***************************************
▼記事へのご意見、Cultural Marketing Lab INOUE. (CMLI) へのお問い合わせは下記メールにてお願いいたします。
sinoue0212@goo.jp
***************************************
▼『コンテンツを求める私たちの「欲望」』
電子書籍(無料)、閲覧数8,500突破しました!
私の思想=文化マーケティングの視座が凝縮されています。
http://p.booklog.jp/book/43959
***************************************
▼パートナー企業様
*詳細につきましては担当者とご説明に参ります。
【ソーシャルリスニング】につきましては、
GMOリサーチ株式会社 「GMOグローバル・ソーシャル・リサーチ」
http://www.gmo-research.jp/service/gsr.html#tabContents01
【激変するメディアライフ! 感性と消費の新常識】
アスキー総合研究所「MCS2012」
http://research.ascii.jp/consumer/contentsconsumer/
***************************************
お読み頂き有難うございます。
(↓)クリックの程、宜しくお願い申し上げます。
音楽 ブログランキングへ
マーケティング・経営 ブログランキングへ