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ニュース情報の価格階層性

2011年08月14日 | 書評
ジャーナリストの烏賀陽弘道さんが、上杉隆氏と共著でこの書籍を出されました。



原発報道の問題は、“きっかけ”でしかありません。
わが国の報道の問題点を、大胆に摘出された書籍ですのでご購入お薦めします。
(烏賀陽弘道さんとも数年、お会いしてませんし、僕はお金は貰ってませんからね-笑)
時間がないので、概要のほうはamazonで拝見願います。

で、第5章で成程!と思った点を1か所だけ書きます (もちろん、他にも「成程!」の箇所はありますけどね)。
以前から、私の知人達がブログなどで指摘されてきた点なんですが、「情報はタダ」という日本人の固定概念はもういい加減捨てなきゃね、という話です。
上杉氏に「メルマガを無料にしろ」という抗議がくるそうなんですが、特に震災後に多いそうです。
そりゃ、逆でしょ? 新聞だってテレビだってお金がかかっている。
新聞もテレビも、原子力と一緒でコストは安く見えるけど、実は膨大なお金がかかっているわけです。

烏賀陽弘道さんも言います。タダのものには理由があって、みなそこを誤解していると。
民放がなぜ原発の危険性を警告しなかったと批判しても無駄。
そんなことはあり得ない。
スポンサーを批判できないのは当たり前で、民放にそんなことを期待するのがヘンだと。

そこで、烏賀陽弘道さんは、情報・報道について「悲観的シナリオ」を示します。

▼「タダで質の悪い情報」と「有料で質の高い情報」に二極分化する
▼ニュースに価格階層性が出てきて、完全に商品化される
 ⇒ 資本主義社会では当たり前のことで、日本もそういう段階に入ったのかも

上杉氏はこう言います。
「日本の新聞がフェアじゃないのは、都合のいい時だけジャーナリズムと言うこと。ちゃんと広報紙ですと名前を変えればいい」
烏賀陽弘道さんによると、アメリカでジャーナリストたちと話すと、自覚的な人達は 「報道と広告収入は両立しない」と公言しているそうです。

▼報道を続けるためには、ドネーション(寄付)でやるしかない。
 ⇒ ドネーション方式の究極は、実はNHK。NHKは 「究極の市民メディア」
   読者と発信者が直結されて金を直接やり取りしている

「そうですよね。だからNHKは既存メディアの中で最初に東電批判をできた」(上杉氏)

たしかに、「追跡! AtoZ」をはじめ、NHKには鋭い問題意識をコンセプトにした番組が多いですよね。
以下、同書からの引用です (292~293ページ)

烏賀陽 例えば上杉さんが読者にメルマガを買ってもらって、読者が、「これを書いて下さい」と言ったら取材に行く。発信者-読者直結がいいに決まっているんです。いくら東電が「原発の安全性を疑ってもらっちゃ困ります」と干渉しても、読者の100人が、「1万円出すから行ってくれ」と言われたら取材に行って原発について書く。読者に直接届ける。そうしたら成り立つよね。それがもともとの報道記者なんですよ。だからはっきり 「広告収入を得ている媒体からバイアスゼロの報道は出てこない」 と書いたらいいんじゃないかと思いますね。
上杉 それを書かないから罪が重いんですよね。


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