【ML251 (Marketing Lab 251)】文化マーケティング・トレンド分析

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女性視点のマーケティングに学ぶこと

2010年03月22日 | マーケティング話
「Web2.0」と騒がれてた頃、
“ブログを活用したマーケティング”というのをよく聞きました。
しかし、今でも私は懐疑的です。

本質的に“パーソナル・メディア”であるブログを、
企業が販促ツールとして“コントロール”する?
それって「やらせ」でしょ?
事実、数々の「提灯記事」にはうんざりしてました。

えっ、「お前はどうなんだ?」ですって?

私は、とことん“パーソナル”です。
「書いてくれ」と言われても、自分を突き動かすものがなければ書きませんでしたし、
書きたければ、「書くな!」と言われても書きたくなります。気まぐれですが。
(実際、ご迷惑になると思って、書かなかったことも多いですけど)

まぁ、「Twitter」は、即時性を重視した“進化系”ですので、
パーソナル・メディアながらも、
(私は“ソーシャル・メディア”とは呼びません)
企業活動にプラス効果をもたらす事例も見受けられますが。
(そう言えば、私、「Twitter」、放置したままでしたね・・・。I have forgotton it.)

ところが・・・・・・、
ということで本題です。

パーソナルで偶発性の高い「口コミ」を、マーケティングに活用する。
かつての私の常識では“離れ業”に近かったことを、
あれよあれよと成功させてしまったのが、
株式会社ハー・ストーリィ、そして代表取締役の日野佳恵子さんです。
(実際には、ご起業から20年間、幾多のご苦労があられたことでしょう)

先日、ふとしたことから日野さんのご講演を聴く機会がありました。
(イヴェント会場に着いてから、その講演のことを知りました)

この10年ほどの間、書店のビジネス書コーナーで目立っていた口コミ関係の書籍といえば、
何といっても日野さんの書籍です。
(海外ではゴーディンの『バイラル・マーケティング』、国内では神田昌典氏の本とか読みましたが)

日野さんが著されてこられた代表的な書籍は、
『クチコミュニティ・マーケティング』(↓)でしょう。



会社設立のお話から、成功事例・失敗事例など記されていますが、
女性視点のクチコミの本質を学び取ることができます
やはり、実践の中で培われた本質は強いし説得力が違います。
(但し、実践するとなると難しいですよ。特にわれわれ男性にとっては・・・)

「クチコミ」とは、企業にとって、ヒット・ブームの仕掛け、
といった短期的な認識が一般的だと思うんですが(それが失敗の素)、
日野さん(ハー・ストーリィ)の基本的な思想は、
長期的で、LTV(ライフタイム・バリュー=顧客生涯価値)的な考え方です。
「ファンを増やす」ということです。

「女性」「共通する価値観」・・・。
ビジョンよりミッション。

基本的な思想から具体的な方法論などエキスの詰まったバイブル的な本なので、
ご興味のある方には一読をお勧めします。

そして、2009年8月、出版されたのが、
「『ワタシが主役』が消費を動かす―お客様の“成功”をイメージできますか?」です。



「成熟化社会の女性消費者像」について、いくつかのキーワードがでてきますが、
まず、【5つの価値観】です。

1.便宜的価値(価格)
2.基本的価値(モノ)
3.情緒的価値(五感)
4.個人的価値(ワタシにとって)
5.社会的価値(共感・つながり)

「1.」から「4.」は、JACS(日本消費者行動研究学会)のご意見番的存在(笑)、
和田充夫先生のブランド論の4要素。

そして、女性特有の「5.社会的価値」を加えられたそうです。
「4.個人的価値」と合わせると、「マズローの欲求5段階説」の「自己実現の欲求」が思い浮かびます。

成熟社会においては、「3.情緒的価値」「4.個人的価値」「5.社会的価値」
のウエイトが高まっていくということです。

余談ですが、私の「アーティスト・ブランド論」も、
和田充夫先生のブランド論に拠っております。

1.基本価値(楽曲/歌唱・演奏など)
2.感覚価値(ビジュアルなど)
3.観念価値(アーティストイメージなど)

の3要素ですが。

ほかにも、【オピニオンリーダーの姿・3R二乗の女性たち】など、
本書のコアとなるキーワードが記されていますが、
ご興味のある方は、やはりお読みいただくことをお勧めします。

で、私の個人的な意識と波長が合った箇所を、ランダムに挙げてみます。

◆100円ショップで買うことが目的ではなく、
 いかに100円に見えないモノを買ったワタシか、
 ということが大切 (79ページより)

 こういう微細な消費者心理って大切なんですね。

◆賢い消費者は、価格以外に判断材料がない場合に安いものを買う (115ページより)

 本文にも書かれてますが、POSデータばかり見ててもこの辺りって
 わからないんですよね。「デフレ、デフレ」って騒ぐばかりが能じゃないと。

◆トマトが10種類あれば、10種類の価格があり、10種類の使い分けのシーンの情報が
 ほしい (118ページより)

 客単価を上げる工夫ですよね。

◆情報過多の時代には、誰かから教えてもらう機会、学ぶ機会を得ると、欲しくなる
 (127ページより)

 「経験価値マーケティング」です。
 「モノを売る」という発想でアップアップしている諸業界に対して、
 少なからぬヒントを与えてくれます。

◆通販カタログやWebショップで「センスを丸ごと売る」という販売方法は増える
 (176ページより)

 「ユニクロ」のリアル店舗でもやってますよね。
 リアル・ネットを問わず、カテゴリー横断の手法も有効だと思います。

◆(環境対応で)ペットボトルのラベルがはがしやすいかどうかで企業姿勢を評価
 (200ページより)

 これは、自分も気にしてます。
 ある量販店のPB(ペットボトルの水)ははがしにくいです。
 NB品の半額なので、今でも買ってますけど。

◆広告・情報をパーソナルに届けるだけではなく、情報内容そのもののパーソナル化
 が求められる。
 コミュニケーション形態のパーソナル化 ⇒ コミュニケーション内容のパーソナル化
 (209ページより)

 10年以上の間、ブームのように語られ廃れて(?)いった「One to One」って、
 そこまで徹底しないと空疎化するしかない、ということを今さらながら。
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売って売りっぱなし、っていうのが「当たり前」だったんですけど、
音楽マーケティングの会社にいた頃から、「それでいいのか?」
とずっと思ってきました。

ガウス生活心理研究所にお世話になってた頃の、故 油谷先生の言葉。

「生活者は生活のプロであって、消費のプロではない」

今でもほとんどの企業人って、「消費者は消費のプロ」という発想なんだよな。。。

まだアナログのテレビを使ってる私ですが、買い替えを延ばしてる一番の理由は、
今のテレビの廃棄のこと。
気持ちよく引きとってくれれば、安売りの量販店でなくても買いかえるんだけどね。

日野さんも得ぴエピローグで書かれてましたが、
企業人って、企業内では「お客様は大切」と言いながら、
いざ自分が「お客」になると、挨拶されても無視をする。
特に男性に多いんじゃないかな。
「お客様は大切」なんて、空疎なスローガンでしかないよね、これじゃ。。。

なんて色んな事を考えるきっかけになる書籍です。

最後に。
日野さんのご講演を聴いて気づいたことです。

「プレゼンテーションはアジテーション」

「アジテーション」ってネガティブな意味で捉える人が多いと思うんですけど、
私は、あえてポジティブな意味で使います。

ミッションを伝えたい! 聴かなきゃ損だよ、という気持ちが全身に滲み出ていました。

直前に、イヴェント会場の他ブースで、大手コンサルの方のプレゼンを聴きました。
とても流暢で洗練されてました。熱意もありました。でも、残りませんでした。

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「欲望という名の下着」 トリンプの新(?)関係性マーケティング

2010年03月20日 | マーケティング話
(あなたが男性だった場合)

ある日、あなたに「おねだりメール」というやつが届く。
「このランジェリーを買ってね」という彼女からのおねだりだ。
それもランジェリーメーカーを通して。

「何じゃこりゃ!?」

と、あなたはメーカーの「おねだりページ」にアクセスする。

妄想を膨らませるかもしれない。
ゾーっとするかもしれない。

「こんなの俺の好みじゃねー!」
さりとて却下するわけにはいかず悩むかもしれない。

「承認」すれば彼女の元にプレゼントが届く。
支払いはあなたのクレジットカードだ。

トリンプ・インターナショナル・ジャパンが展開する
通販サイト「desir」の「おねだり機能」だ。

この記事で知りました。

詳しくは中村修治さん(俺とおんなじ名前かよ・・・)の記事を読んでほしいんですが、
トリンプさんのサイトから、「おねだり機能のながれ」を拝借しちゃいました。
こういうプロセス(↓)のようです。



コンバージョン率80%というのはたいしたもんです。

「バカなアイデアで作ってみせて、定期的に社会とコンタクトしていく。『下着』と『世相』という、とんでもなくへだたりのありそうな分野を、無理矢理にでもひっつけて社会とコネクトしている企業姿勢に感服である。」(中村氏)

「女性下着を女性のモノだけにしない。女性のマーケットだけをにらむのではなく、『男』や『世相・社会』という視点を取り入れ拡大し続けるトリンプ。その思い切りの良さと柔軟性には、この不況を乗り切るヒントがある。」(同)

同感ですね。

バレンタインギフトのような、社会的なイヴェント化によるマーケティング事例ってありますけど、
トリンプさんの場合、購入のプロセスにおいて生活者の「関係性」に踏み込んだことが新しいと言えます。
購入のプロセスに、私的な「関係性」を組み入れた、という言い方もできますが。

「関係性」という視点から自分で整理してみたのが下図(↓)です。





とても面白いです。
でも、女性の皆さん、
「友達以上、恋人未満」の男性に「おねだり」しといて、
ランジェリーを受け取った途端、

「あ~ら、ありがとね そんじゃ」
というのだけはやめてくださいね
(う~ん、、、トラウマあるのかな、俺・・・)

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