書とお寺が大好きな春逕の「日々是好日」

日々思うこと、感じた事をつづります。

作品の裏に・・・。

2008-05-05 15:07:40 | 思う事
少し前に私の書展からご縁があって、漱石の草枕に出てくる「那古井館」の女将さんとお話する機会が会った。
それから夏目漱石についていろいろと気になっている。

前は漱石は、「五高の教授で、熊本に在住していた旧居は坪井だった。」ぐらいしか知らなかったが。
私が上京するとききまって訪ねる書道博物館とその前にある子規庵(正岡子規が仲間を集めて俳句の指導をしたり、みんなで文学談義をした家)に中村不折、河東碧梧桐、高浜虚子、そして夏目漱石も出入りしていたらしい。

那古井館の玄関には中村不折の扁額があった。
不折は漱石の「我輩は猫である」の挿絵も画いている書家で、画家である。

先月から、漱石をいろいろ調べてみたり「草枕」を読んだりしてみた。
「草枕」には・・・。

鎌研坂から峠の茶屋そして石畳の道。
その道を歩くときっと、現実から小説「草枕」の中にすーっと入っていくに違いない。

「草枕」の中には引用や人名がたくさん出てくる。
シェレーの雲雀の詩
黄檗宗の僧侶の書いたであろう書。
芦雪、若冲。
陶淵明、王維、白楽天。
大慧禅師、白隠和尚。
イタリアの画家、サルバトル・ロザ。
ターナー、ウォーズウォース(?)
文与可、雲谷、泰西。
雪舟、蕪村。
レッシング、ホーマー、ヴァージル、ラオコーン、スゥインバーン。
頼春水、頼杏坪、頼山陽、荻生徂徠、細井広沢。
タイモン、ラオコーン、トリストラム・シャンデー、スターン、オスカーワイルド、レオラルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロ、グーダル、イプセン・・・。

主人公は画工として那古井に宿っているが、なかなか筆が進まず・・・。
いろんな詩、俳句、書、音楽、画を模索し、登場人物のしぐさや性格を観察しながらミレーの画いたオフェリアの顔を那美の最後の顔にその「憐れ」を感じた。

小説に引用が多い分とても厚みがあって日本のものでありながら、東洋と西洋との香りがして興味深かった。
また、絵画やヨーロッパの詩や儒学、朱子学を、知っていたならばとてもまだ深く楽しめるだろうと思った。
しかし、私レベルで、端渓の硯のところはその色と様子のようなものが少し目に浮かんだ。

私が書を書く場合も臨書する場合も、知らない事を少しづつ知ってくると芋づる式に解ってきて本当に面白い。
小説に限らず、作品を理解するためにいろんな事を知ることはとても楽しい。

本当の遊びというものはきっとそういうものだろうと思う。
いろんな作品の裏にいろんなエッセンスを封じ込めれるように日々感じたいと思った。

書作品も解りやすいものと徹底的に解りにくいものと二本立てで追求したいものだ。