だからちがうんだってば.

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除染予算

2011-12-26 17:56:00 | 授業ネタ
先日,某所で久方ぶりにI先生にお会いして(師匠のI先生ではない),なかなか興味深い話を聞きました.「研究者としてやってるのではない」とおっしゃってましたが,さすがにまとめるとなると社会科学者っぽい.そのときの話にも上がったのですが,このたび政府予算案が決まったということで「24年度予算のポイント」をみたところ,除染予算として4513億円が計上されていました.某所での話によると,除染を本格的にするには兆~十兆円単位でのお金が必要だそうで,ま,ざっくり言って大幅に足りん,ということみたいです.4513億円は中央政府の支出額なので,実際の支出額は地方政府のぶんを足さないといけないわけですが,足りないという結論は間違ってないみたいです.他方で消費税の引き上げは進んでるんだか進んでないんだかで,復興債を考えると国債発行は増加して,地方債計画も大きくなって(3000億円ほど)います.

I先生もはっきりおっしゃってましたが,このような予算編成は,日本の集団的な意思として,福島県をはじめとする地域の除染にお金は使わない,将来の世代に増税する,などと決定したことを意味しています.「そんな人情のない決定をした覚えはない.永田町だかか霞ヶ関だかでいつのまにか決まったことだ」と思う人も多いのでしょうが,間接民主主義のもとでは,そう思うのは間違いです.

消費増税がどうなるかは時事ネタに疎い僕にはわかりませんが,大平・中曽根・竹下・細川・橋本といった各内閣が消費税(付加価値税,売上税,国民福祉税など名前は違いますが)で苦労したのとおんなじなんだろうな,と思います.最近の報道で「消費増税で財政規律が緩んだ」とかあったのは,なかなか示唆的でした.消費増税は「これからの」支出増に対応するためのものだと思われてる,ということですし.しかし実際のところ,増税は「これまでの」支出増に対応するためのものであり,いまさら「使い方がまずかったから,わたしゃ知らん」とは言えない筋合いのもので,「そんなの,国がどうにかすればいいじゃん」というものでもないです.

除染予算が少ないのも,公債が増えるのも,「政府」というものが自分とは関係ないところにあって,自分は税を取られるだけだ,といった政府観・おかみ観が根底にあるようです.政府は営利企業ではなく,その財源は税(か社会保険料か手数料など)によって調達されなければなりません.政府サービスを享受するためにどれほどのお金がかかるかということについて分かりにくく,「公務員って給料よさそうだよな」という通念があることもあるんでしょうけど(でも,給料を下げると,もっとロクでもないのしか公務員にならないかもしれないのに).

しかし,財政があぶないって,この15年くらいずーっと言われてると思うんですけど,いつまでやるんですかね.「このままいくと危ないよシミュレーション」も流行ったような気がしますが,やる側も飽きてきて,学者の方で試算する人って少なくなっていくような気がします(僕も止めた).コンピュータはどんどん速くなってるというのに.そういう「必要な」試算では業績にならんですからな.あっはっは.