だからちがうんだってば.

ブログ人から引っ越しました

はくさいはいき

2006-11-24 23:44:04 | 生活

ひそかに尊敬しているS大のS先生のところで「白菜を捨てる」話が書かれていて,最近は農協とか農業金融とかにややはまっていた僕としては「ふむむ」とおもったので,こちらでもちょっと.(書いてもいいとは思うんだけど.ダメなら知らせてください)

なんとなくな話をまず書いておくと,「今年は白菜がえらく豊作なので,白菜農家が価格維持のために白菜を廃棄していて,それには農協から補助金が出る」らしい,ということです.さて,S先生の発想自体はそんなに難しいものではなくて(そこからモデルを組んじゃうところがさすが理論家ですが),「農家が意思決定主体であれば,農協主導とはいえ,カルテル破りのインセンティブがあるのではないか? なんで農家がそろって白菜を廃棄するのか?」というところにあるんじゃないかと思います.たぶん.カルテルに参加するということは,カルテルを破ったときに得られる所得(維持された価格で売り抜けられるから)を上回るペナルティがあるはず,と考えるのが自然です.そうでなければ,誰もカルテルに参加しなくなって,価格支持政策が成り立たなくなるからです.さて,この農協主導のカルテル=白菜の廃棄に参加しないときのペナルティ,というと,「農協にはほとんどすべての農家が加入しているし,村八分とかなるんじゃねーの」という話になるんですが,廃棄するほど白菜を作っている野菜農家であれば,少なくとも流通については農協を通さなくてもよさそうなので,農協によるペナルティってどうなのさ?という反論もありそうで,そうすっといったいどういうことかしら?と思われるところです.

で,ちょっと調べてみたところによると,この農協主導の需給調整は農林省も認めている(プレスリリース)もので,交付金は社団法人全国野菜需給調整機構というところが払いますが,この交付金の財源は,農協1/2,政府1/2となっています.ということは,「農協が補助金」というのはあながち間違いではないけど正しくもない,ということです.農協が農家の団体であることを考えると「農協が補助金」ということは,単に農家間の所得移転が行われているだけで,その部分については,さまざまな作物を作っている農家間の一種の保険と考えることもできないではありません.政府が補助金を出しているということは,この部分でカルテルへの参加をさらに誘導している,ということでしょうか.

で,こういうところを見ていると,このカルテルに参加しないときのpayoffはそんなに大きくないのではないかという気もします.農協主導の価格支持=白菜の廃棄に協力せず,維持された価格にただ乗りしようとすれば,当然,農協の流通網を使うことはできず,となると流通経費を自分で持たないといけないことになります.もし,農協が主導した価格がそれほど高くない(もちろん,何もしないときよりは高い)とすれば,流通経費のところで足が出ちゃう可能性があります.そうすると,カルテルに参加しないときのほうがpayoffが低くなってしまうのではないかと,思うんですが,どうでしょう?

追記:「需給調整」は政府の政策なんだそうで(わかる!野菜対策の見直し(PDF)).実質的にJAがないと機能しない制度になってるので,JAが作らせた制度なのかもしれないですけど.この制度は「キャベツ、だいこん、たまねぎ、にんじん、はくさい、レタス」にしか適用されないそうで,野菜需給調整機構に出資している県も限られてます.この全般的に白~緑系の野菜農家はなんか特殊な政治力でも持ってんでしょうか?