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詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

サイモン・ウェスト監督「メカニック」(★★★)

2011-08-15 15:05:52 | 映画
監督 サイモン・ウェスト 出演 ジェイソン・ステイサム、ベン・フォスター、ドナルド・サザーランド

 完璧な殺し屋ジェイソン・ステイサム。でも、騙されてしまって、大切な雇い主であり、かつ友人を殺してしまう。その彼に、友人の息子が殺しや稼業を教えてくれと近づく。
 あ、これはくさーい文学的な映画になるのかなあ。
 というのは、ほんの一瞬の不安。--的中しません。裏切られます。後悔しつづける、というようなことはありません。それがつまらないひとにはつまらないだろうけれど。
 見どころは殺しのテクニックと手際のよさ。殺しではなく、いかに事故にみせかけるか。そのためには、どんな準備をすべきか。とても丹念に描いている。
 いろいろおもしろいところはあるんだけれど、そのなかでも傑作なのが、友人の息子の「初仕事」。きちんとした生活をすることが大事--と言って、チワワを飼わせ(毎日決まった時間に散歩しなければならない)、カフェでコーヒーを飲み、クロスワードパズルを解かせる。これが毎日1時間。なるほどねえ、決まったとおりに決まったことをすることで「強い意志」もつくられていくのか……。と、思っていると、な、なんと、これが殺しの標的を引き寄せるための手段だったんですねえ。その標的はやはり殺し屋なのだが、チワワが大好きで、「ボーイ」も大好き。その男が、毎日決まった時間にそのカフェにくる。それにあわせて、そこに行かせ、接近させる。安心させる--のが狙い。
 この用意周到さ、というか準備のていねいさ。
 それに反して、息子の方は、そのていねいさについていけない。自分の力を過信する。ジェイソン・ステイサムと同じことができると勘違いする。そうして、準備してきた「殺し」の方法とは違う方法で殺そうとする。結果的には殺せるけれど、無駄が多いねえ。そうなんだなあ、なんでも予定を立ててそのとおりにやらないとつまずつくんだなあ、なんて、殺し屋に「教訓」をいただくのでした。
 この殺し屋が、音楽が趣味、しかもアナログにこだわっていて、レコードを、なんと、真空管のアンプをつかって再生させる。ぷっつんというノイズから音楽が始まる。これ、いいねえ。車にも凝っていて、自分で整備している。あくまで自分の手作業、手仕事だけを信じている。--というのが、まあ、単なる性格描写(?)に終わらず、最後の最後にまた生かされているんだけれど。
 つまり、そのレコードプレイヤーにも車にも、ジェイソン・ステイサムにしらかわらない「仕掛け」があって、知らずにつかうとつかった人が「自滅」する。
 と、ここでも、あらゆることを想定し、準備することの「大切さ」を強調している。
 もしかすると、「文部省推薦映画」?

 この殺し屋、次は刑事になります。ハゲを隠さず、鍛え上げた肉体で、あくまでクールに自分を貫く男が、また、やっとスクリーンに復活する時代になったのかも。そのトップランナーだね。あとにつづく俳優がちょっと思い浮かばないけれど。




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角川映画

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