goo blog サービス終了のお知らせ 

詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(66)

2024-01-06 21:17:42 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「いつの日かの休日」。この詩は八行。とても短い。しかも「空に雲がいくつか。」のように「○○に○○」という定型でことばがつづいていく。しかし、終わりから二行目で突然この定型が破られる。

一枚の木の葉がきらり光る。

 一枚の木の葉に光がきらり、と訳すことができるはずである。しかし中井は、ここであえて定型を破っている。それは、その直前の「詩に言葉。」がとても強烈だからかもしれない。
 直前の行でつまずく。そこから立ち直るためには「 一枚の木の葉に光がきらり」ではだめなのである。何かしら、動詞が必要なのだ。肉体を動かすことばが必要なのだ。そしてそれは、直前の「詩に言葉。」にも動詞を補え、と読者に要求してくるのである。ほんとうに読ませたいのは「詩に言葉。」それをどう読むか(解釈するか)、「一枚の木の葉がきらり光る。」のように言いなおすことができるかと読者に問いかけてくる。
 しかも、「詩の中で言葉がきらりと光る。」というような「まねごと」ではだめなのだ。これは中井が読者に向けて残した、重大な「宿題」である。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ★「詩はどこにあるか」オンラ... | トップ | 小川三郎『忘れられるための... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

中井久夫「ギリシャ詩選」を読む」カテゴリの最新記事