森鴎外「うたかたの記」(「鴎外選集」第一巻 岩波書店)
末尾の「濃き処には雨白く、淡き処には風黒し」はまるで漢詩の対句を読むような感じだ。実際に、ここには漢詩の伝統が反映されている。
描写が漢詩風だから、そこに「詩」があるというのではない。
伝統を踏まえる、様式を踏まえるというところに「詩」がある。
鴎外の文章を読むとき、単に鴎外の文章を読んでいるのではない。鴎外のなかに生きている漢詩の伝統を読んでいる。
こうした呼吸のなかに「詩」がある。
雨弥々劇しくなりて、湖水のかたを見わたせば、吹寄する風一陣々、濃淡の竪縞おり出して、濃き処には雨白く、淡き処には風黒し。
末尾の「濃き処には雨白く、淡き処には風黒し」はまるで漢詩の対句を読むような感じだ。実際に、ここには漢詩の伝統が反映されている。
描写が漢詩風だから、そこに「詩」があるというのではない。
伝統を踏まえる、様式を踏まえるというところに「詩」がある。
鴎外の文章を読むとき、単に鴎外の文章を読んでいるのではない。鴎外のなかに生きている漢詩の伝統を読んでいる。
こうした呼吸のなかに「詩」がある。