鏡/異文
この鏡は見たことがある。
花瓶のなかの花を裏側から映していた。ドアが開くと、奥の部屋にある鏡に、目配せのように、いま映している色を投げつけることもあった。
これは「対称」について書こうとした詩の冒頭。
精神を動かすために、いくつかの疑問が余白に残されている。
一、反対側の鏡が花の正面の形を投げ返してきた場合、それはどこで交わるのか。
二、その場合、時間の「対称」はどう影響するのか/鏡のなかで遅れはじめる時計。
三、自分がどこにいるかわからない、と漏らす老人。
いま、ことばは肉体の位置にもどることを欲する。つまり、
見おぼえるある鏡は、体を動かしたときに見えるだろうということを思い出す。
下にしていた脇腹を上にし、上にしていた脇腹を、なまあたたかいくぼみにあわせる。
立体の鏡のように。
「ひらいた傷口」という抒情詩が、その瞬間に完成する。
書かれないことによって。
*
「谷川俊太郎の『こころ』を読む」はアマゾンでは入手しにくい状態が続いています。
購読ご希望の方は、谷内修三(panchan@mars.dti.ne.jp)へお申し込みください。1800円(税抜、送料無料)で販売します。
ご要望があれば、署名(宛名含む)もします。
「リッツオス詩選集」も4200円(税抜、送料無料)で販売します。
2冊セットの場合は6000円(税抜、送料無料)になります。
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いま、ことばは肉体の位置にもどることを欲する。つまり、
見おぼえるある鏡は、体を動かしたときに見えるだろうということを思い出す。
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クリエーター情報なし | |
思潮社 |
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ヤニス・リッツォス | |
作品社 |
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2冊セットの場合は6000円(税抜、送料無料)になります。