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詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

ファビアン・オンテニアンテ監督「ディスコ」(★★)

2008-12-15 00:36:33 | 映画
監督 ファビアン・オンテニアンテ 出演 フランク・デュボスク、エマニュエル・べアール、ジェラール・ドパルデュー、サミュエル・ル・ビアン

 40歳をすぎた中年の男3人が「サカデー・ナイト・フィーバー」を再現する。主人公の夢、イギリスにいる息子とオーストラリアへ旅行するという夢のために。ディスコ大会で優勝すれば航空券が手に入るのである。
 ストーリーもチープだし、映像もチープだし、見ていて、とても退屈する。ただし、主人公のフランク・デュボスクだけは奇妙におもしろい。
 フランク・デュボスクを見るのは、私は初めてである。
 美男子ではない。目に特徴がある。映画のなかでも、エマニュエル・べアールが「みみずくみたいな目」と呼んでいるが、まっすぐに、無心に、みつめかえす目である。とても純粋で、濁りをいっさい感じない。
 シャイではあるけれど、テレがない。
 あまりに純粋な目なので、彼の頼みは断われない。彼に頼まれれば何かをしなければならない。そういう気持ちにおこさせる目である。その目の力で(?)、仲間を巻き込み、エマニュエル・べアールを巻き込み、古くさいダンスを今風にかえていく。最初は、フランク・デュボスクと距離をとって、巻き込まれないようにしているのだが、知らずに、フランク・デュボスクに対してシャカリキになっていってしまう。フランク・デュボスク自身いろいろなことをするのだが、それ以上に、周囲が一生懸命になる。他人の一生懸命を引き出す目なのである。
 見ていて、演技なのか、地なのか、わからない。しかし、この他人をシャカリキにさせる目というのはいいものだ。他人のために何かをするというのはとても楽しいことかもしれない。しかも、相手が、フランク・デュボスクのように、彼等は自分のために何かをしてくれているという気持ちもないまま、ただ自分がしたいからそうしていると人間だったら、その何かをするということは、結局自分自身のためにすることになるからだ。
 フランク・デュボスクはディスコ大会で優勝する。3人組で踊ったのに、彼だけが息子とオーストラリアへ行く。そのことに対して、誰も不満を言わない。当然のことと思っている。彼にオーストラリア旅行をプレゼントするために3人で踊ったのだからといえばそれまでだが、この「無償」の感じがとても自然な人間の行為に見えてくるのは、フランク・デュボスクの目の力による。

 ばかばかしいストーリー、チープな感じが漂う小品なのだが、なぜか、奇妙な味わいが残る。フランス映画はときどきこんな不思議な作品を生み出す。



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