goo blog サービス終了のお知らせ 

詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

ノーマン・ジュイソン監督「華麗なる賭け」(★★)

2012-01-14 21:58:45 | 午前十時の映画祭
監督 ノーマン・ジュイソン 出演 スティーヴ・マックイーン、フェイ・ダナウェイ

 タイトルの分割画面が、昔はとても新鮮に感じられた。でも、いまはなんだかうるさい。あまり効果的とも思えない。同じ画面に映っていなくても「同時」という感覚は生まれる。画面の大小もおもしろくない。いま、誰かがやるとするなら、目そのもののアップとか、飛行機の翼の一部とか、全体を観客の想像力にゆだねるものになるかなあ。
 冒頭の銀行強盗のシーンまでと、スティーヴ・マックイーンとフェイ・ダナウェイの恋愛がちぐはぐ。運転手をホテルに呼び出して雇うところから、公衆電話を活用して時間をあわせ、金を奪うまでは、ほんとうに華麗でわくわくするね。そのあと、まあ、恋愛してはいけない2人、銀行強盗の主犯と犯人探しの調査官が恋に落ちる――というのが見せ場なんだろうけれど、なじめないなあ。
 美しいのはグライダーのシーンとミシェル・ルグランの音楽が交錯するシーン。自力では飛ばず、惰力と風で空を舞う――その不安定が、2人の恋愛の駆け引きを象徴する。(そのシーンには別の女性がいるのだけれど。)どっちが惰力? どっちが風? 恋愛では、主役はなく2人の関係の揺らぎが主役。揺らぎ、駆け引きが美しい時、2人が輝く。惰力と風が拮抗しバランスをとるときグライダーが華麗に舞うのに似ている。
 これに比べるといかにもスティーヴ・マックイーンらしい海辺の車のシーンは、ぜんぜん美しくない。スティーヴ・マックイーンがリードするだけ。車を運転するとき、車をあやつるのはスティーヴ・マックイーン。まあ、砂浜のでこぼこが不確定要素だけれど、フェイ・ダナウェイは安心しきっているでしょ?
 それに比べると、グライダーは女が一応、「どうしてエンジンつきにのらない?」と問いかけるでしょ? 不安だからだね。自分のすべてをコントロールできたら、そこには恋はない。自分だけではコントロールできない――それが恋。
 ラストが、そうだね。最後の「賭け」は、どっちが勝った? スティーヴ・マックイーンもフェイ・ダナウェイも負ける。負けた二人の間で、不可能な恋だけが勝ち誇って輝いている。人間の「知恵」では解決できないいのちが輝く。それが、涙、というわけか・・・。


華麗なる賭け [DVD]
クリエーター情報なし
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 池井昌樹「筍」ほか | トップ | ジェフリー・アングルズ「私... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

午前十時の映画祭」カテゴリの最新記事