詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

谷川俊太郎詩集『虚空へ』百字感想(16)

2021-12-24 10:56:30 | 谷川俊太郎『虚空へ』百字感想

谷川俊太郎詩集『虚空へ』百字感想(16)

(悲鳴と喃語)

悲鳴と
喃語
失語と
饒舌

巨大な
火口
大笑い

意味の
素は
無意味

吃る

声の

 最終連、「声の/泡」に私はどきりとした。同級生に吃音の友達がいた。けんかをする。吃音がひどくなる。そのとき口のまわりに泡。見てはいけないものを見た、という記憶が今も頭にこびりついている。

 

 

 

 

(自他の)

自他の
二元を
心は
哀しむ

眼で見つめ
手で掴み
口で
強いるが

億の中で
兆の中で
二は二のまま

一は
私にしか
ない

 私は、そのつど「二」をもとめている。私には一と二と、ゼロ(無)があると考える。「無」から「一」が生まれ、「無」へ帰るためには、「一」を破る「二」が必要だ。「肉体」として生きているあいだは。

 

 

 

 

 

(夜 瓶は)


瓶は
倒れる

湖底には
孕む

少年は
独り
華厳経に
溺れ

暁闇の
野に
綻びる
何の蕾か

 夜、瓶は立ち上がる。湖底の水は龍になって天をつく。少年は経を叩き壊し、ことばの無を龍の眼に託す。蕾は闇を吸収し、大地に送り込む。銀河のような根の広がり。射精しながら、老人は新しい夜を眠る。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« マルケスの文体 | トップ | 谷川俊太郎詩集『虚空へ』百... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

谷川俊太郎『虚空へ』百字感想」カテゴリの最新記事