「嵯峨信之全詩集/時刻表(1975)」を読む(3-40)(2017年06月09日)
79 *(火の中に投げ込む)
魂は嵯峨の魂。妻をなくして、悲しみに燃え上がる。激しい対立、整えることのできない激情がある。
それが「炎」と「時雨」という対立したもの、熱い火、冷たい雨を呼び寄せる。炎が時雨を呼び出したように感じる。炎がなければ、時雨もやってこない。「ひろがる」という動詞が「むこう」を呼び寄せる。その呼び寄せる力によって「時雨」がやってくる。
これは実景であると同時に心象風景である。
ここでは「ひろがる」「時雨れる」と、動詞が二つ重なって動くのだが、その重なる動詞に、何か「呼び寄せる」力のようなものを感じる。
呼び寄せる力を「祈り」と「誤読」したくなる。
呼び寄せる力のなかで「墓」が「顔」になる。
80 *(遠い記憶の果にただ一つの名が残つた)
「名」を「梢」という。注釈に、嵯峨は記している。
「晴れた日」は妻のために祈るのだ。激しい時雨の日に、悲しみの炎を燃え上がらせながら。
79 *(火の中に投げ込む)
魂の一束
燃えあがる炎のむこうにひろがる時雨れる沙州
魂は嵯峨の魂。妻をなくして、悲しみに燃え上がる。激しい対立、整えることのできない激情がある。
それが「炎」と「時雨」という対立したもの、熱い火、冷たい雨を呼び寄せる。炎が時雨を呼び出したように感じる。炎がなければ、時雨もやってこない。「ひろがる」という動詞が「むこう」を呼び寄せる。その呼び寄せる力によって「時雨」がやってくる。
これは実景であると同時に心象風景である。
ここでは「ひろがる」「時雨れる」と、動詞が二つ重なって動くのだが、その重なる動詞に、何か「呼び寄せる」力のようなものを感じる。
呼び寄せる力を「祈り」と「誤読」したくなる。
その沙州にぽつねんと立つている一基の墓だけが
口もあれば鼻も眼もある
呼び寄せる力のなかで「墓」が「顔」になる。
80 *(遠い記憶の果にただ一つの名が残つた)
遠い記憶のはてにただ一つの名が残つた
その名に祈ろう
晴れた日がこれからもつづくように
「名」を「梢」という。注釈に、嵯峨は記している。
「晴れた日」は妻のために祈るのだ。激しい時雨の日に、悲しみの炎を燃え上がらせながら。
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