室町ふたき旅館
磨き込まれ水のように光る玄関の板の間
おばあさんが夕刊を読んでいる
奥の柱や階段が板に映って黒く透き通る
広げられた新聞は小さな舟
おばあさんは夕暮れの光を利用して
短い旅に出る
けれどすぐ引き返してしまう
「人間はどうして同じ道ばかり
たどるんだろう」
それからおじいさんに小さな嘘をつくために
きれいに四つに畳んで
まがった腰で奥へ消える
「読み終わったら世の中のこと
おしえてくださいね 私には
わからないことばかりだから」
(アルメ229、1984年11月10日)
磨き込まれ水のように光る玄関の板の間
おばあさんが夕刊を読んでいる
奥の柱や階段が板に映って黒く透き通る
広げられた新聞は小さな舟
おばあさんは夕暮れの光を利用して
短い旅に出る
けれどすぐ引き返してしまう
「人間はどうして同じ道ばかり
たどるんだろう」
それからおじいさんに小さな嘘をつくために
きれいに四つに畳んで
まがった腰で奥へ消える
「読み終わったら世の中のこと
おしえてくださいね 私には
わからないことばかりだから」
(アルメ229、1984年11月10日)