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詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

テレンス・マリック監督「聖杯たちの騎士」(★)

2016-12-26 08:46:45 | 映画
監督 テレンス・マリック 出演 クリスチャン・ベール、ケイト・ブランシェット、
ナタリー・ポートマン、ブライアン・デネヒー、アントニオ・バンデラス

 私はテレンス・マリックの映画が嫌いだ。ケイト・ブランシェットとナタリー・ポートマンが出演していなかったら見に行かなかっただろう。その二人のシーンは予告編で見たのとほとんどかわらない。ナタリー・ポートマンが妊娠したと告白するシーンが目新しいくらい。その部分は、まあ、しっかりと見たが……。
 
 テレンス・マリックの映画は「映像美」が云々されるが(私の見た映画館は「映像美」を味わうのにふさわしい映画館とはいえないが)、どこか「美しい」のか、私にはわからない。
 テレンス・マリックの映像にはふたつの特徴がある。
 ひとつは、人物の「首」から上がうつらないシーンが多い。スクリーンをひとがよぎるとき、首から下だけが残される。水中のシーンでは水面に出ている「顔」は映らずに、下だけが動いている。これは最初に見たときは斬新な感じがした。しかし、「頭」がないために、視線がさまよってしまう。私はどうしても「顔」を見てしまう。「目」を探してしまう。役者の目と私の目があわないので、「人間」を見ている気がしない。「抽象的」に感じてしまう。
 「抽象的」な映像を「美しい」と感じるのは、抽象的な詩(象徴詩)を「美しい」と感じるようなものである。私は頭が悪いので、こういう「意味」のないものにはついていけない。
 もちろん、この「頭なし人間」を「肉体」そのものに焦点をあてた映像(「頭」で整理されていない「肉体」をつかみとる映像)という具合にとらえることもできるかもしれないが……。まあ、こういうのは「屁理屈」だ。人間が映っていないのに「美しい」が独立して存在するなら、それは「人間の否定」である。
 もうひとつは「目のない人間」とつながっていると思うが、画面が揺れる。水平線が水平ではないときがある。「目がない」というのは「目」が一点を見つめないということ。だから「揺れる」。私は目が悪いので、こういう「映像」を見ると、酔ってしまう。「映像美」に酔うのではなく、船酔いか何かのように「頭の中」が酔ったようになる。
 気持ちが悪い。ときどき酔いから逃れるために目をつむる。そしてそのまま眠ってしまう。(私は目をつぶれば10秒で眠れる。)大事なシーンを見逃しているかもしれないが。
 この変な映像趣味は、別なことばで言えば「カメラが演技をしすぎる」ということでもある。役者の演技を超えて、カメラがかってに演技をする。これでは「映画」にならないだろう。誰の視線かわからない映像などてくていい。観客は何よりも役者を見に来るのである。
 マノエル・ド・オリヴェイラ監督のように、カメラをしっかり固定して、役者に演技をまかせろとは言わないけれど、こんなにカメラが動き回っては、「人間の本質」というものが見えてこない。
 室内を、何を映すという目的もないまま、無意味に移動するカメラの動きなど、観客をばかにしていないか。「無(意味)」を映すことで、登場人物の「虚無感」を代弁させているだとしたら、役者をばかにしていないか。役者が「虚無感」を表現できないと思っていることにならないか。
 この「無意味」な映像に、「会話」ではなく「独白」が重なるのも悪趣味である。人間と人間がぶつかるからドラマがある。「独白」が「風景」をさまよえば、それはどうしても「ひとりよがり」になる。

 あ、やっといいたいことばが出てきた。テレンス・マリックは「ひとりよがり」の監督である。
                      (KBCシネマ1、2016年12月25日)

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