詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

谷川俊太郎詩集『虚空へ』百字感想(6)

2021-12-14 10:05:57 | 詩集

谷川俊太郎詩集『虚空へ』百字感想(6)

(意味ではなく)

意味ではなく
歓びと
哀しみが
ある

苦しい
日々に
一生に

解釈しない
計算できない
カラダと
ココロ

永遠から
今が
こぼれる

 「ある」。「こぼれる」ものがある。「こぼれた」ではない。過去形ではなく「今」。それを何と呼ぶか。喜怒哀楽ということばがあるが、谷川は「怒り」を書いていない。「怒り」は「今」を否定する「意味」なのか。

 

 

 


(海を見下ろす崖)

海を見下ろす
崖に建つ
小屋で
私は暮らす

遠くから
誰かが来る
実一つ土産に

腐るのか
芽吹くのか
その実は
泥にまみれて

丘で
仔羊が跳ね回る

 「実」を「身」と読み替えてみる。「身ひとつ」でやってくる。何も持っていないようだが「ことば」を持っている。それは「仔羊」になって「跳ね回る」。有朋自遠方来。いいね、理想の友だ。

 

 

 

 

 

(ミエテキコエテ)

ミエテ
キコエテ
サワレル
ダケジャナイ

カンジル
マンナカニ
イルノガ
ボク

ナンニモ
ワカラナイカラ
スゴイ

ウン
コワイクライ
スバラシイ

 「ウン」は肯定のことば。否定の「ウウウン」と比べるととても短い。「イヤ」と比べても短い。ほんとうの肯定は考えない。「カンジル」、直感する。「ワカラナイ」けれどではなく、「ワカラナイカラ」こそ。

 

 

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする