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これはだれに対して歌っているのだろうか(笑。

愛する人へ / 泉谷しげる


オレが,
岡林さん,すげーなと思うところは,

責めない内省力なんだよね。
たとえば,この歌。

ぼくは,ひとからされたくないことをきみに強いて,
その挙げ句,きみを捨てて新しい恋人と

新しい生活を始めるという歌なんだよ。
おいおい,身勝手にもほどがあるでしょ,という内容だよね。

でもね,
ふつー,こんな身勝手な歌は歌えない。

歌えないから,
泉谷も歌えてないよね。

こんなデリケートな歌は,
そうだれにでも歌えるというものじゃない。

身勝手だと知らないと,
歌は,だいたいみんな「サボテンの花」みたいになるよ(笑。

これは,自分の身勝手さを知って,
そのうえで歌う歌なんだ。

自己更正のために,ね。
では,

この歌は誰のために歌われたのか。
「愛する人へ」となっているけど。

もし,
別れたきみに歌うのなら,

「愛した人へ」が正しいね。
でも,そうなってない。

ということは,
これは,別れたきみへの歌ではなく,

別れたきみとのことで学んでもう同じ過ちを犯さないはずのぼくから,
新しいパートナーに向けて歌われたものなのだ。

ひどいよね。
きみに向けて歌っていたはずなのに,

ほんとうはきみのつぎの新たなきみに向けて歌っているんだ。
でも,

そんなに残酷な歌だから,
それを歌えるのは岡林信康本人しかいないのだよ。

泉谷,
ほんまにおれの弟子やったら,これ歌うてみぃ。

どや,
歌えるようになったか。

そうやって,黙って岡林は泉谷が
歌のもつれにからまっていくのを聞いている。



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