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雑談しめなわ17


17 似合ってるかもなのネックレス。


(おかあさん、)

「はい、これ、プレゼント」と出したものを
あなたは、よこにいたおばさんに開けてと頼んだよ。

「なんなの、これ」とおばさんがリボンをほどくと、
濃い紺色のビロードの布のうえに象牙の白さがこぼれる。
あれまあ、ネックレス!と、喜ばしい出来事のように
おばさんが品物の名前を呼ぶと、
あなたも少し頭をねじって箱を見て、
それからぼくを見たので説明したよ。

オヤジが定年退職の感謝会をするときのためだよ、
どうせそのとき、背広を新調するでしょ。
あなたも一緒に服を作ってもらえばいいよ。
でも服は新しくても、
どうせ自分で自分のために
こういう身に付けるものは臆病だから買えないだろうから
代わりに買っといた。

おばさんは早速それを箱から取り出し
あなたの首にあててみて、
「似合うわ」と高い声で賛美した。
本当はあなた、
そのとき白っぽい浴衣みたいな病院着だったから
白に白で全然似合ってなかったけど、

あなたが、黒目をギロリと移動させて、
困ったような表情でぼくを見た。
似合うよ、とぼくも続いたけど、
あなた、もらったネックレスに
この子はいままでにない高給に目がくらんで
見栄まではるようになっているが、
ちゃんと生活していけるのかと
心配する母親に戻りましたね。

いや、そのくらいはぼくもできるんですよ。
やればできる子なんですから、
ここは素直によろこんでくださいよ、


(おかあさん。)


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