ワインバーでのひととき

フィクションのワインのテイスティング対決のストーリーとワインバーでの女性ソムリエとの会話の楽しいワイン実用書

ワインバーでのひととき ファースト(改訂) 91ページ目 知れば知るほど迷路に

2012-04-17 23:08:09 | ワインバーでのひととき1改訂四話 完
【91ページ】


 マスターは、ルピアックの貴腐ワインを二人のグラスに注ぎ、前に置いた。

和音と良子は、それぞれグラスを手に取り、とろける甘みと濃厚な貴腐ワインを飲んだ。


「とても美味しいワインね? テイスティングしないで飲んだの久しぶりだわ!」

「甘口のデザートワインは、体の疲れと心の悩みを癒してくれますよ。」


和音が、相談しやすい雰囲気を作ってくれたので、良子は思い切って話すことにした。


「和音さん、この頃ちょっとスランプ気味なのです。」

「よかったら聞かせてもらえませんか?」

「私、毎日少しでもワインの知識を身につけたいと思って、仕事の帰り、このお店によって、

ワインのテイスティングをしています。」

「そうですね。」


良子は、先程マスターから手渡されたワインのラベル取り出した。


「そしてマスターにも協力してもらって、テイスティングしたワインのラベルを取って

もらっています。それでテイスティングノートはもう何冊にもなりました。」


「それだけワインの勉強をすると自信がついたのでは?」

「いいえ。」


良子は首を振った。


「今の私は、マラソンでトップからどんどん離されていくランナーの気持ちです。

私が一生懸命走っているのに、追いつかないのです!」


良子はため息をついた。


「ワインの世界って、広くて、奥深くて、高くて・・・・・」