ワインバーでのひととき

フィクションのワインのテイスティング対決のストーリーとワインバーでの女性ソムリエとの会話の楽しいワイン実用書

切子のワイングラスと良子 115ページ目

2009-05-24 23:21:00 | ワインバーでのひととき1~5アイデア集
【115ページ】


             切子のワイングラスと良子



マスター   和さんには、いつもプレミアムワインをいただいているでしょう?

       今日は、私からこのワインをサービスさせていただきます。

和音     どちらのワイン?

マスター   ボルドーのサン・テミリオン地区のシャトー・パヴィ2000年 

       です。

和音     サン・テミリオンのワインはメルロ種主体のワインが多いよね?
         
       このワインもなめらかな口当りの、こくのあるワインに熟成さ

       れているのでしょうね?

マスター   ちょうど飲み頃になり始めたようですよ。

       さあ、どうぞ!

和音     おや、カベルネ・ソーヴィニヨン種主体のワイン?

マスター   ええ?

       シャトー・パヴィはメルロ70%、カベルネ・フラン20%で

       カベルネ・ソーヴィニヨンはわずか10%のはずです。

和音     そうかなあ?

マスター   私も味見しますね。

       和さん、冗談がきついですよ!

       これは、間違いなくメルロ主体です。


116ページに続きます




          

美しい切子のワイングラス 114ページ目

2009-05-24 23:05:07 | ワインバーでのひととき1~5アイデア集
【114ページ】


社長   先生がテイスティング対決用に製作してくれた切子のワイングラスの

     ことです。

     先生のデザインしたカベルネ・ソーヴィニヨンが、和さんの五感を確か

     に狂わせました。

     だからそのワイングラスも差し上げました。そしてそのグラスが、ずっ

     と和さんの五感を狂わし続けるでしょう。

先生   でもグラスを割ってしまえば?

社長   たぶんそれは、できないと思いますよ。

     先生のカベルネ・ソーヴィニヨンのワイングラスに負けたことになるか

     らです。

先生   社長の毒矢が和さんの致命傷になるかもしれないね?

社長   和さんは、どのようにして乗り切るのか楽しみです。

先生   ところで、これが新しい切子のワイングラスです。

社長   すばらしい!

     前回の作品に勝るとも劣らない!

     ありがとうございます。

美しい切子のワイングラス 113ページ目

2009-05-24 20:49:35 | ワインバーでのひととき1~5アイデア集
【113ページ】


先生   その後どうなりました?

社長   本能的に何かおかしいと思ったのでしょう。しばらく迷っていました。

     そして、突然、コルク片が浮かんでいると言って、指で取る仕草をし、

     もう一度テイスティングをしました。

先生   それで?

社長   コルク片を取り除くと、シャトー・ラトゥールよりもメルロ種を強く

     感じるワインだと言いました。

先生   コルク片はたぶん浮いてなかったと思いますよ。

     それに、コルク片を取り除いて、ワインの味が変わったというのも

     変ですよね。

社長   そこなんですよ!

先生   たぶん指でしょう。

社長   指?

先生   指にメルロ種のビロードのようななめらかさを感じたのでしょう。

社長   するとコルク片は、ワインに指を浸ける口実だと?

先生   そう思います。

     さすがうわさ通りのすごい方ですね?

社長   しかし、私も負けて、先生の最高傑作を取られたのはくやしいじゃ

     ないですか!

     最後に和さんに毒矢を放ちました。

先生   毒矢?


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