ワインバーでのひととき

フィクションのワインのテイスティング対決のストーリーとワインバーでの女性ソムリエとの会話の楽しいワイン実用書

美しい切子のワイングラス 110ページ目

2009-05-22 22:54:14 | ワインバーでのひととき1~5アイデア集
【110ページ】


和音   うーん!

社長   どうしたのですか?

和音   ある疑問が心に引っかかっているのです。

     シャトー・ラトゥールは、社長のお気に入りのワインで、先ほど

     から料理と一緒にいただきました。

     同じワインをテイスティング対決に使用するでしょうか?

社長   ノーコメントです!

和音   ヴィンテージにトリックがあるのかなと考えてみました。

     カベルネ・ソーヴィニヨンの酸味と渋みが強く、まだ熟成があまり進ん

     でいません。2005年のヴィンテージだと最初思ったのです。

社長   和さんが迷うなんて珍しいですね?

和音   切子のワイングラスのブドウのデザインですよ!

社長   ブドウのデザイン?

和音   このブドウの品種をカベルネ・ソーヴィニヨンと当てた時、私は、

     酸味と渋みを感じるからと答えました。

     だから実際のワインのヴィンテージよりも若いと錯覚したのですよ! 

社長   ワイングラスに、和さんの五感を狂わす力が秘められていますか?

和音   おや?  グラスの中にコルク片が浮かんでいる!


和音は、人差し指でコルク片を取る仕草をした。そして指先には、まるでビロード

のようになめらかなワインを感じた。


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