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勿忘草 6。

2012-10-17 08:00:00 | 勿忘草。
昨夜は、今回引いている風邪の体温で、
36.9度まで上がりました。
同じ風邪を引いていると思われる家族も、
一昨日位にその位あがったので、
その後は、熱が下がるかなと。




勿忘草、最終回です。







それでは、いつものようにいつもの言葉を。








相変わらずの、
妄想なあたしの世界です。
妄想な世界なんて、と思う方は、
お読みになりませんように。


そして、
クレーム、苦情、ツッコミなどは、
ご遠慮下さいませ。

お互いに、
いい気分にはなりませんし、
私も凹みますから。。。
ご勘弁下さいませ。







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勿忘草 6。








朝7時に起きて、身支度を整えて、
昨日調達しておいたパンと飲み物で、
朝食を済ませる。

そして、窓をあけて空気の入れ替えをした。

9時。
荷物が届いて、あっという間に運び込まれて、
おくべき所に家具が設置された。

見慣れたラグとコタツが、座布団が、
置かれたダイニング。
ふうと、コタツに入り。
するべき事をメモって行く。

そうしているうちに、新居はあたしの部屋になっていった。


*******


東京に戻って、半年。
仕事も家にも慣れて、休日には、
戸越銀座で食料調達にいそしむ。

そして、くるべき時が来た。。。
木曜日、あたしが、喫茶室から店のほうに、
ヘルプに入っていた時の事。

入り口が開いたので反射的に、
いらっしゃいませと言ったあと、
妙な沈黙があったので、あたしは、
お客様の方に振り向いた。
そこには.......。


*******


美作さんと西門さん。
・・・・・・。
言う言葉が見つからない。
し、仕事しなきゃ。

「西門様からのご注文の品、お持ちいたします。
少々、お待ちくださいませ。」
「ああ。」

裏の棚へ取りに行って、
あたしは、深呼吸をして、店に戻った。

「お待たせいたしました。
それから........。」

見つめる二人にあたしは。

「お久しぶりです。」

二人は、フッと笑った。

「えっと、井上さん?」
「やっぱりここだったか。みどりちゃん?
久しぶり。」

そこまで、バレテルのね。。。

「相変わらず、独り言は直ってないんだな?」

あたしは、苦笑する。

「いつ分かったの?」
「研修の時。」
「え?」
「必死で隠れてるのに、研修会をぶち壊す
訳にも行かないだろう?」
「分かってたんだ...…?」
「俺らがお前を分からん筈がないだろ。」
「うん。。。」

「美作さんは、京都ぶりだね。」
「ああ。やっと会えた。」
「うん。そうだね。」

ちょうど裏口から女将さんが入ってきて、
二人と話しているあたしをみて、
一瞬、固まる。

「井上さん。」
「女将さん。」
「お二人方に二階の茶室に入っていただいたら?」
「あ。はい。」

あたしは、二人を促して、階段へ案内する。
二階には、広くはないものの、茶室があり、
お茶セットを裕子さんから、持たされて、
あたしは、案内する。

茶室に落ち着き、お茶を出すと、
一口口をつけた西門さんが、フッと微笑んだ。

「腕は鈍ってないな。」

あたしも、微笑む。
そして、言葉を紡ぎ出す。

「あの頃は、自分の心を守るために、
ああいう風にするしか、なかったの。」
「うん。」
「今は大丈夫か?」
「大丈夫じゃない。」
「え?」
「嬉しくて、ドキドキしてるよ。」

西門さんは、口角を上げて笑顔になって。
美作さんは、目を見開いて、それから、
微笑みが浮かんで。

あたしは、その笑顔を受け取った。

「自分から逃げたのにね。」
「うん。」
「離れて、3ヶ月は寂しくて寂しくて、
私を忘れないで。って思いばっかりだった。」
「そうだったんだ。」
「知ってたよ。みんなが探してくれてたの。
本社にも、随分、問い合わせしてくれてたよね。」

ふたりとも、苦笑する。

「ありがとね。でもね。今思うと、離れることが
必要だったんだなって思える。」
「うん。」
「みんなにもあたしにも、そういう時が、
必要だったんだって…。」

「今はもう、大丈夫?」
「うん。西門さんのおかげかな。」
「俺?」
「そう。研修の時にね。」

クスクス。あたしは思い出して笑う。



「西門さんが来て、必死に気配消して、
隠れてた時に、なんで、あたしだけ、こんな思い
しなきゃいけないんだ。
堂々としてていいじゃんって、思えるようになったから。」
「そうだったか。
あの時、我慢して正解だったな。
うん。そうだったかも。」

「ところで。」
「?」
「さっきも言ったけど、俺達と同じでさ。」
「うん。」
「牧野の存在感ってのは、隠しても、隠し
きれないから。」
「そうなの?」
「そうだっての。」

美作さんが、そこで口をはさむ。

「あと、その黒い瞳の目力もだな。」
「目力?」
「ああ。その黒い瞳の存在は、いくらカラコン
しても、隠し切れないよ。」
「ああ。美作さんの秘書さん?」
「そういうこと。」

西門さんが?という顔をしていたので、
あたしは、説明する。

「美作さんと京都駅ですれ違ったんだよね。
美作さんは、重役さんと話してたから、
気づかなかったんだけど、秘書の小林さんと、
目が合っちゃって。」
「ああ。そりゃ。隠し切れないだろ。」
「うん。気付かれないように、目をそらしたんだけど。
無理だったな。バレたって、思ったもん。」

「あの時ほど、京都駅の人ごみを恨んだことはない。」
「あはは。美作さんにまで、見つかっていたら、
まだ、あたしの気持ちは整理できてなかったから。。。
多分、日本を離れていたと思う。。。」

今だから、笑って言えること。

「苦労、しなかったか?」
「しなかったって言えば、嘘になるよ。
でも、京都の大学で、いい友だちもいい人脈も
作れたとも、思ってる。」
「そうか、良かった。」
「うん。」

「今は…。目黒だっけ?」
「あはは。バレバレだね。とげぬき地蔵のそば。
会社が配慮してくれて、きちんとしたマンションに
住んでるよ。」

二人が頷くのをみて言う。

「みんなで遊びにきてよ。
前住んでたアパートより、格段に広いし。
まだ、寒いくらいだから、鍋でもしよう?」
「いいな。声かけるよ。」
「うん。」

「それから…。美作さん、ありがとね。」
「ん?」
「NYとフランス。押さえててくれたんでしょ。」

それを聞いて、あきらは苦笑している。

「フランスはともかく、NYは…。手ごわかったぞ。」
「うん。だから、ありがと。」

西門さんが、神妙な顔をしている。
あたしが、その表情を見てなんだろという表情を
浮かべているので、西門さんが口を開く。

「あーあ。」
「何?西門さん。」
「牧野が、大人になってて、面白くない。」
「それはそうだな。」
「何よ。美作さんまで、二人とも失礼な。」
「「「あはははは。」」」

あたしたちはしばらく笑い合って、
あたしはハッとして、時計を見た。

「いけない。そろそろ、店に戻らないと。」
「ん?」
「世間では、カフェタイムの時間だから、
お店も混み始めるのよ。」
「ああ。そりゃ、大変だな。」

あたしは、店の入口まで、二人を案内して、
深くお辞儀をした。

「ありがとうございました。」
「じゃ。またな。」
「夜にでも、連絡するよ。」

あたしは微笑んで、二人が車に乗り込むのを
見送った。

「さーて。忙しい時間だ。
気持ちも晴れやか。がんばろう。」

店に戻ると、女将さんと裕子さん。
そして、同僚のみんなが、笑顔で迎えてくれる。
あたしもみんなに微笑み返して、エプロンを、
付けた。

あたしは、この仕事が好きだ。
だから、美味しいお茶を知ってもらえるように、
心を込めて、お茶を煎れよう。。。



fin

勿忘草 3。

2012-09-16 00:40:00 | 勿忘草。
折角の連休だというのに、台風接近中の為、
天候が不安定です。
困ったもんですねぇ。
おかげで、大気も噴火も不安定らしく、
あたしの左肩も大荒れです。やれやれ。






それでは、いつものようにいつもの言葉を。








相変わらずの、
妄想なあたしの世界です。
妄想な世界なんて、と思う方は、
お読みになりませんように。


そして、
クレーム、苦情、ツッコミなどは、
ご遠慮下さいませ。

お互いに、
いい気分にはなりませんし、
私も凹みますから。。。
ご勘弁下さいませ。









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勿忘草 3。






書類を揃えるため、あたしは3年半ぶりに
東京へやってきた。
あの時とは違う装い。
女将さんから譲り受けた着物を着て、
髪の毛も、明るい栗毛を結い上げて。
そして、目にはカラコンが入っている。

東京駅を歩いていると、懐かしさに心が弾む。
みんな、元気かな。

あたしは、以前住んでいた所の役所へいき、
書類を揃えて、持ってきた書類ケースへいれた。

何もなく東京駅に戻り、新幹線に乗る。
普通席だし、皆が乗るなんてあり得ないから、
あたしは、駅弁を食べてのんびりと京都に戻った。

書類も提出して、一安心。
あとは、京都で採用された新入社員達と
研修が待っているのみ。


*******


あの混雑している京都駅のホームで、
まさか、側を通るなんて少しも思ってもいなかった。

「専務。」
「なんだ。」

30mほど後ろで聞こえるどこかで聞いた声。
ああ。忘れないで欲しかった人の声とその秘書の人の声。
そして、あの人の存在感と懐かしい香水の香り。
あたしは、一瞬固まったけれど。

そうか。専務になったんだね。良かった。

ゆっくりとその方向ではない方向へ向いて、
東京にいた時には、しなかったであろう
首をかしげて、その集団から、離れていく。

側を通る時一瞬、秘書の大野さんと目があった
気がしたけれど、あたしは不自然でないように、
視線を動かして、ゆっくりと離れていった。

お願い。気づかないで。。。

あたしの胸は、早鐘を打っていて。
どうにかなるかと思った。


*******


つくしとすれ違って。
その中で、目があったと思われた大野。
大野は、つくしとすれ違って10m経った時、
あきらを呼び止めた。

「専務。」

振り返った専務に、大野は伝える。

「牧野さんらしき人をお見かけしました。」
「なんだって?」
「私と目を合わせず、去っていかれました。」
「洗練された着物を着られて、髪の毛は茶色。
目はカラーコンタクトをされているのではないかと。
ブルーでした。」

専務は、周りをグルッと見回しているが。
見回すも、そこには、人人人の波。

「くそっ。無理だな。」
「さようでございますね。それにしても、
牧野様のあの佇まいと、目の雰囲気は、
隠しようがありませんね。」
「ああ。」

その頃、みどり(つくし)は、
柱の陰で、息を整えていた。

そして、息を整えてから、
気持ちがどうしようもなくて、
店に向かっていた。
あの様子だったら、絶対にバレてる。

あたしは、茶舗の裏口から入り、
従業員用の畳の部屋へ行って、
ぺったりと座り込んだ。

誰かが、様子がおかしいと思って、
女将さんを呼んでくれたようで、
慌てて女将さんが駆け寄ってくる。

「みどりちゃん。どうしたん?」
「女将さん。」

振り返ったあたしの顔を見て、
女将さんは。。。
あたしをギュッと抱きしめる。

「何があったんかわからへんけど、大丈夫。
皆で守るから、大丈夫。」

あたしは、そう言われて、
体に血が戻っていくのが分かった。

「京都駅のホームで、すれ違いました。
まだ、一番会いたくなかった人と。
でも、とても会いたかった人と。
秘書さんに気づかれました。」

あたしの目からは、ハラハラと涙が
伝っていく。
女将さんは、懐からハンカチーフを
取り出して、涙を拭いてくれる。

「うん。分かった。
突然やったから、びっくりしちゃったのね。」

あたしは、コクンとうなづく。

「あちらさんのことやから、すぐにでも、
調べようとなさるでしょう。
今年の研修は、東京にしてもらいましょう。
「でも、あたしだけのことで場所変更なんて。」
「あら。それとも、みどり(つくし)ちゃんだけ、
研修免除にしましょうか?」
「それは。。。ダメです。」
「でしょう。そうしたら、場所変更は、
致し方がないわね。」

女将さんは、あたしを覗きこんで、
茶目っ気たっぷりな笑顔を見せた。


*******


2日後、あたしは、始発の新幹線に乗っていた。
前の日、女将さんに、急にチケットと小さなぽち袋と
メモを渡されて、京都をたった。
用意して来た飲み物とおにぎりを食べて、
やっと、息を吐いた。
始発だけあって人もまばらで、複雑な思いで、
あたしは、東京に再び降り立った。

東京にいる間は、ここに滞在するようにと、
あたしは、社長の好意で、メモと鍵を渡された。
会長が所有するマンションの鍵を渡された。

ちゃんと理由も言ってもらって、
納得して、あたしはそのマンションから通う。
新宿にあって、お手伝いさんが常駐していること。
自分の家のように使っていいこと。
そのお手伝いさんに、なんでも言いつけてかまわない
とのこと。
すべては、あたしを守ってあげたいという、
皆様の御陰。

今は、甘えるべきときと違いますの?

女将さんの言葉。
はっとした。
だから、あたしは、承諾した。
わかっているんだ。
あたしが、女将さんの言葉に甘えることが
できたのは、F4のおかげ。
人に頼るべき時があると、教わっていたから。
それが皆を、避けるためであっても。
今はまだ、皆の前で、堂々としていられる
あたしの気持ちの準備ができていないから。

さあ。明日から、研修が始まる…。




勿忘草 2。

2012-09-05 02:18:12 | 勿忘草。
蒸し暑い日が続いています。
そして今日は、不安定なお天気。
いつもは夕方な雷が、
日中からゴロゴロゴロ~。
買い物に出られへんやないかい。
と、空をあおぎながらつぶやく
あたしだったのでした。



今日は、あたしにしては、
ちと長めかな。






それでは、いつものようにいつもの言葉を。








相変わらずの、
妄想なあたしの世界です。
妄想な世界なんて、と思う方は、
お読みになりませんように。


そして、
クレーム、苦情、ツッコミなどは、
ご遠慮下さいませ。

お互いに、
いい気分にはなりませんし、
私も凹みますから。。。
ご勘弁下さいませ。






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勿忘草2。






引っ越しの荷物を受け取り、
すぐに生活の準備は整って。
買い物袋を持って食料調達にでた。

商店街が近くて、安い店もある。
発泡スチロールと氷をもらい、
ひとまずはその中へ。

そして、明日からの大学への準備も出来た。


*******


その頃東京では、あたしの消息不明で
大騒ぎになっていた。
親も行き先は知らないから。。
学校にも、口止めしてある。

その頃に届くはずの類への手紙。

旅にでます。
ありがとう。

ただそれだけ。
類にはそれでだけで、わかるだろう。
そう思った。

今頃、NYのあいつが、警視総監に
行ってくるなんて騒いでいるかもしれない。

もし、そんなことになって、
警察が捜索し始めたことを知ったら、
あたしは、日本から消えるだろう。
覚悟はできてた。

1つ気になっていたのは、
西門さんに教わってたお茶が、
途中だったこと。
お茶、好きだったな。
雰囲気も、お作法も。
西門さんが示してくれる教えも。
何もかも、大好きだった。

でも、京都にいたら、お茶を習って
いくことは無理だろう。
西門流は、元から京都本部がある。
東京ともつながりが強い。
あっという間に、知れ渡って
しまうに違いない。

つくしは、離れたいから旅に出る。
つながるかもしれない線を今はまだ、
繋いでおくことは、出来ないくらい、
思いつめていた。

きっと、残されたと思ったかな。
俺たちはそんな程度の仲だったんだと
思っただろう。
それでいい。
あたしは、その為に旅に出たのだから。

どうか皆が、幸せになりますように。
あたしは、遠くの地から見ているから。


*******


冷蔵庫が冷えて、先程買ってきた分を
冷蔵庫に入れていく。
ご飯を炊いて、食べる分以外は、
ラップして冷ましておく。
夕飯も作って、いつものように、
保存容器に入れて、冷蔵庫へ。
これで、数日分、楽になる。

さてと。そろそろ寝ようかな。
今日は動いたから、疲れたし。
明日は、早く行きたいし。


*******


朝、目覚めた時。
今日からは、あたし一人なんだ。
としみじみと思った。
でも、泣いている暇など無い。
折角、編入した大学。
最大限勉強して、私の目標を
叶えたいと思ってる。

いつものようにご飯を食べて、
今日からは、キレイ系な服を着て、
そして、用意をする。

そんな服たちは、みんなからの
プレゼント。
私からみんなの元を離れたのに、
着るのはどうなのかと思うけれど。
でも、それはあたしの鎧。
自分自身を守るための格好。

うっすらと化粧をして、髪の毛は、
ゆるく2つに結んで、ダテメガネをかける。
今日の帰りからは、バイトも始まるから、
ジーンズとシャツも持ってと。

さあ。鍵を掛けて、出発。
今日からのあたし。行くよ。


*******


1限目から、英語漬けの毎日が続く。
人数が多いからか、あたしが入っても、
そんなに騒がれることもない。

この時期に入ってきたあたしは、一人
適当な席に座って、授業が始まるのを待つ。

英語で話していたこともあったから、
あたしにとっては、英語は身近なもので、
楽しくてたまらなかった。

昼休み、休み時間に購買に行って、
教科書を物色する。
府立ということもあって、あたしと同じ
境遇の人もいる。
購買の隅に、先輩たちの中古な教科書があって、
嬉しくなってしまった。
比較的、きれいめで、中をパラパラとめくって、
確認した後、5冊の教科書を手に入れることが
出来た。

今日の授業を終えて、やっと少し力が抜ける。
付いていけそうな感覚があって、ホッとしていた。
はっと気づき、あたしは荷物をまとめて、
バイト先に急ぐ。

家までの真ん中ほどにある、ファミレスが、
あたしの今日の夜からの職場。
16時から21時までの時間をここで過ごす。
裏口から入り、ロッカーに荷物を入れて、
着替えると、さ。戦闘開始。

これからの時間。
かきいれ時だから、気を許すことは出来ない。
入れ替わるバイトさんに挨拶をしつつ。
あたしは、マネージャーの指示に従って、
フロアの担当になった。
本当は、バックヤードに行きたかったんだけど、
経験からフロアの方へとなったのだ。
ここのファミレスは、時給がちょっと良いし、
文句は言ってられない。

なんとかパートさんとも連携を取って、
一日が終わっていく。
深夜バイトも考えたけれど、
今回折角だから、学業を優先して、
生活していくことに決めたんだ。

バイトが終わって、買いたいものがあったから、
近くのドラックストアに寄って、考える。
どの色がいいかなぁ。
自分で染めるつもりで、カラーの前で
悩んでいた。

そして、考えて手にとったのは、
髪に良いシャンプータイプの染剤。
少し高いけれど、慣れないことを自分でやって、
自分の髪が、痛んでしまうのが嫌だった。

その他にも、安くなっていた食材も数種
手に入れられて、満足な買い物をした。

こうして、つくしの新しい生活は、過ぎていく。


*******


週に何回か有る、ホームルームも兼ねた
英語の必修授業に出た。
ホームルームも兼ねているので、クラス編成
になっていて、少なめの人数が教室にいる。

女性の先生が入ってきて、
授業して、そのままホームルームへ。
あたしは、その時に少し紹介された。

ご両親の仕事の事情で、編入されてきた、
井上みどりさんです。
よろしくおねがいします。

あたしは、名前を変えて。
そして、髪の毛の色も少し変えて、
新しい生活を始めた。。。

ホームルームが終わると、前に座っていた男子が
後ろを向く。
あたしは、なんだ?と思いつつ、黙っていると
俺、斎藤知章。ヨロシクね。
あ。井上です。よろしく。

女の子も何人か声を掛けてくれる。
荷物を片付けて、立ち上がる。

さてと。行きます。
ん?なにか用事あるの?
ええ。バイトなんです。
井上さん、バイトしてるんだ。
はい。
じゃ。失礼します。

あたしは、恋愛する気はない。
好きになられても困る。
だから、言葉は最小限。

教室から出て、ハタと思い出し、
図書館へ行く。
ここでも、手続きをして、2冊ほど、
授業のために借りた。

よし。バイト行こ。


*******


今日も一日が終わる。
みんなと離れて少ししか経っていないのに、
寂しい。悲しい。
あたしって、こんなに皆に依存してたんだと
甘やかされていたんだと実感する。

寂しさを紛らわすために、一層英語を頑張った。
レポートも早めに書いて、
なにもかもが順風満たん。
お金を稼ぐのに追われて。
羨望の目に追われていたあの頃とは大違い。

今のあたしのたからものは、いつだったか、
あの人が入れてくれていた留守電のメッセージ。

それがあれば、いつでも彼を思い出せる。
たまに思い出したように、本屋に寄って
雑誌を立ち読みしたりする。

元気で居てくれれば、それでいい。

今日は、バイトが終わって、家に戻ってから、
小紋の着物を着てみた。
まだ、時間は経っていないから、
簡単に着ることが出来た。

折角だから、とっておきのクッキーと、
抹茶を立てて、お茶にする。

ほろりと涙が出た。
あたし、お茶が好きだなぁ。
西門さん。。。元気かなぁ。


*******


シャンプータイプの染剤は、つくしに合ったようで、
いい具合に、栗色の髪の毛に段々となっていった。
あたしがあたしじゃないみたい。

久々の休みの日。
着物を着て、京都の街を歩いてみた。
抹茶を買おうと思って、お茶屋さんを
探していたのだ。

あ。いつか西門さんがおみやげにくれた
お店の本店だ。
立派な佇まいに、ちょっと立ち止まる。

中から、ふんわりとしたでも凛とした
女性が顔をのぞかせてくれて、
どうぞ。と声を掛けてくれた。

何かお入り用ですか?
はい。抹茶が欲しいのですが。
お嬢さんでしたら、この位のがよろしかろうと
思いますが。

そう言って、目の前に出されたのは、
お品書きに書いてある一番高いもの。

え。あの。

お嬢さん。私達はお茶のプロです。
佇まい。お作法から、わかるんでございますよ。

私は、びっくりする。
そして、フッと微笑んで私は話しだした。

正直に言わせて頂きます。
はい。
今まで、師匠にお茶を用意して頂いていたので、
どのくらいのものを使っていたのか、
詳しくわかっておりません。
抹茶を入れればわかるとは思うのですが。。。

よろしおす。こちらへ。

あたしは、奥にある、喫茶スペースに通された。
こちらかこちらかと思われますので。。。

ありがとうございます。

道具まで貸して頂いて、その場で、手際よく、
でも丁寧にお茶を立てていく。
女将さんは、目を見張っていた。
こ。これは。西門流。。

そして、2つの器に2種の抹茶が立て終わり。
あたしは、黙ったまま。

あの。
はい。
申し上げづらいのですが、この2つとは、
違うと思うのですが。

このお城さんは。。。
女将さんは、フッと笑って話しだす。

お嬢さん。西門流ですね。
あたしは、目を丸くする。
しかも、随分と真面目にお稽古なさって
おられたようで。
確かに、その2つとは違います。
ちょっとお待ち下さいませ。

奥の棚へ行った女将さんは、
一つの抹茶を持ってきた。

特別栽培された茶葉から出来た、抹茶です。

あの。
はい。
言い難いのですが。
はい。
かなりのお値段致します。
そこで、私どもからのお願いがございます。
お願い?
はい。お嬢さんさえよろしければ、ウチで働いて
いただけないでしょうか。
ええと。。。。

実は、人出が足らなくて、働き手を探して
いたのですが、なかなか私の目に叶う方が、
なかなか現れなくて困っていたのです。
お嬢さんが、ウチで働いてくださるなら、
抹茶を定期的に、提供させて頂きます。
もちろん、お給料も、勉強させてもらいます。

そ。そんな。事情があって、師匠から
離れてしまって、それでも尚、お茶に関わっていたいと
思っているあたしには、勿体ないお話です。
私、学生の身ですし、別のアルバイトも入って
おります。
なんとか、なりませんでっしゃろか。

こんなに思って頂いて、なにかとお忙しいと
思われる金、土、日。祭日では、いかがでしょうか。

お嬢さん。。。なんてこと。
え?
よくお分かりになっていらっしゃって。
嬉しく思います。

と、微笑む女将さん。
いつの間にやら、あたしは、有名茶舗で働くことに
なっていた。


*******


金曜日の午前中の授業が終わると、
あたしは、片手に風呂敷を持って、
京都市内へ向う。

初めてのお茶屋さんでの仕事。
裏口から入ると、普段の姿に女将さんが
びっくりした。

みどりはんあなた、いい服着てますなあ。
いいものを長くが、好きなので。。。

あたしは、お店の奥にあるスペースで、
着替えさせて貰って、お店の舞掛けを掛ける。
一緒に働く人達に挨拶をして、今回あたしは、
喫茶室のカウンターに入った。

指定されるお茶を心を込めて煎れる一時。
久々の緊張感。
私の息抜きになる時間になった。

土曜日の午後、いつものように喫茶室に
入っていた時のこと。
いつもはしんとした店内が、にわかに
騒がしくなっていた。
美波さんにちょっと見てくる旨を伝えて
裏から回っていくと、店内で異国のかたと
女将さんが立ち話をしていた。

フランス語......。
あたしはそっと女将さんに近寄る。

女将さん。
みどり(つくし)さん。今立て込んでるさかい、後でね。
あ。いえそうでなくて、私フランス語お手伝い
いたしましょうか。
話せますの?
はい。

みどりの(つくし)口から流暢に出てくる様に
同僚たちは、顔には出さないが、
心底驚いていた。

女将さんに通訳をして、フランスからの
お客様を無事に送り出すことが出来た。

驚いたわ。
みどりさん、何国語話せますのん。
今は、5カ国語です。
そんなに。すごいのね。
いえ......。


*******


みどり(つくし)さんは、里帰りしないの?
ええ。戻っても、両親は仕事なので。
あたしもそろそろ、就職活動を本格的に
しないといけないし。

ああ。もう、そういう時期なのねぇ。。。
大学の就職課に行かないとと思っている
ところです。

あたしは、微笑んでそう締めくくった。
次の週の火曜日。
就職課に行き、その日説明会があると
いうことで、自宅に一度戻り、スーツに
着替えてから、就職説明会に出ていた。

うーん。。。
参ったなぁ。興味を引く企業がない。
正確には、大企業も来てて、F4の関係の
企業も来ていて、説明も聞いたのだけれど、
無理だしね。つーか、バレるし。。。
中小企業の個性的なところの説明会に
行ってみようかなぁ。。。

よし、決めた。
就職課に相談しに行こう。
あたしは、その足で、大学に向かった。

クラスメート達数人と、廊下などで会うと、
やはり同じようなリクルートスーツを
着ていて、お互いにやっぱりねと苦笑し合う。

あたしには珍しく、スーツに、髪の毛は
一本に結んでいた。
そのまま、小気味良くパンプスの音を響かせて、
就職課に向かった。

いつも、担当して下さる桜木さんを呼び出して、
話をしだすと、目がまんまるになる。

井上さん。
はい。
まるで、どこかの企業の秘書さんみたいよ。
そうですか?
なんだかそう言われると、ドキドキしますね。

あたしは、クスッと笑った。

あ。それでですね。

あたしは、事情をかいつまんで話して、
折角なので、言語を生かせる職場を
探している旨を話した。

うーん。ちょっと待ってね。
桜木さんは、ちょっと考えて、ファイルから
1枚の紙を取り出した。
それから、ノートPCでその企業のHPを出すと、
あたしに見せてくれる。

ここなんだけど。
社風が個性的で、業績も安定しているし、
井上さんみたいな言語を話せるひとを、
募集しているのよ。
業種で言うと。。。商社ですね。
そうなるわね。研修も海外になるって、
担当者は言ってたわ。

ふむふむ。

もう一つは、ここね。

すみません。これからバイトなので、
月曜日まで、考える時間をいただけますか?
もちろん。キープしとくわね。
いいですか?。よろしければお願いします。
わかったわ。


*******


あたしは、いつもより少々急いで歩き、
茶舗の裏口についた。

すると、休憩室には女将さんがいて、
着替える前に、皆には話は通してあるからと
言われて、2階の会議室に来るよう促された。

何だろう。

2階の会議室には、すでに待っていた方がいて。
なんと、茶舗の会長さんと社長が待っていた。

え。あ、あの。

女将さんの方をみると微笑んでいる。
あたしが動揺しつつも、スッとおじぎをして頭を
あげると。会長さんと社長が、

ん。合格。
ですね。

訳がわからなくてキョトンとしていると、
女将さんに、一枚の紙が渡された。

内定通知書?あの.......。
うん。もしも、就職先で悩んでいるなら、
是非とも家に来てもらいたくての。
そう言うことだよ。みどりちゃん。

女将さんも微笑んでいて。

あたしはもう。
涙目になりつつ、お礼をいうしか無かった。

女将さんや社長から、色々聞いての。
わしもいつも、お茶をいれてもらってから、
是非とも、ウチでと思っての。

とても、嬉しいのですが、皆様に少し、
私の話を聞いて頂きたく思います。

背筋を伸ばし、しっかと目をあけて、
真剣そのものの顔のみどり(つくし)に、
3人は、驚いていた。

自分の名前のことF4とのことを
丁寧に話して言って、話し終えた時、
みどり(つくし)は女将さんに、優しく抱きしめられていた。

なんてこと。辛かったでしょう。
この間、西門さんの所のお使いの時に、
ドギマギしていたのは、それでだったんだね。
はい......、すみません。

あの方達のそばにいた女性だったとは、
思いもせんかった。
会長さんは、目を手で隠しながら、
そう言いはった。


*******


あ。いけない!お店におりないと。
忙しくなったら、呼びに来るよう伝えて
あるから、大丈夫だと思うわよ。
慌てずに着替えなさい。

はい。わかりました。失礼します。

つくしがちょうど、お店に立ち始めた頃、
お店が混み始めた。

皆、タイミング良かったわよ。
それから、内定おめでとう。

と、ポンとみどり(つくし)の肩を叩いて行く。
みんな受け入れてくれてる。
あたしは、この茶舗で働くことを決めた。

大好きなお茶に関わって生きていける。
これほど嬉しいことはなかった。

勿忘草。1

2012-08-26 16:30:38 | 勿忘草。
昨日、ちょっと出かけたお疲れと、
夏疲れを取るべく、寝てました。
のため、少々遅れた更新になりました。
ほっといてくれた家族に、感謝します。


さて、今回から、
「勿忘草」を他の物語を挟みつつ、
6回に渡って、載せていきます。

1~2ヶ月、勿忘草は季節が遅いのですが、
その点についてはご勘弁を。






それでは、いつものようにいつもの言葉を。








相変わらずの、
妄想なあたしの世界です。
妄想な世界なんて、と思う方は、
お読みになりませんように。


そして、
クレーム、苦情、ツッコミなどは、
ご遠慮下さいませ。

お互いに、
いい気分にはなりませんし、
私も凹みますから。。。
ご勘弁下さいませ。









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勿忘草。







公園の片隅にある花壇の端っこで、
君は、そよ風に吹かれていた。
あなたを忘れないよといっているかのように。

I miss you.

覚悟を決めて電話しようと思うけど、
それでも尚、あたしは迷う。
もう一度会いたい。。。
あなたの声が聞きたい。

いつの日か話した公園で、
ブランコに座って考える。
私はあなたから離れよう。
そう考えて。

でもね。
あたしを忘れないで欲しい。
わがままなあたし?
それさえも許してもらえない?

I miss you.

そのブランコの向こうに揺れるのは、
空色の勿忘草。
花言葉を教えてくれたあの人を
あたしは忘れられるの?
忘れなきゃいけない。

なんで、類じゃないんだろう。
それは、優しさを知ってしまったから。
あなたの優しさと気遣いに、見守って貰ったから。
今私は、ここにいる。

最後に声が聞きたい。
でも、それはしちゃいけない。。。
私の指は、携帯の画面をさまよい歩く。

I miss you.

花言葉を教えてくれたあの人を
あたしは忘れられるの?
忘れなきゃ。

あの人の隣で微笑む、キレイな女性(ヒト)を
見てしまったから。
あたしなんてそばにいたら、
邪魔になってしまったらいけない。
そんな風に思うのは、おごりかも
しれないけれど。

あなたのそばにいたいけど。
I miss you.

だから、あたしは一人、逃げてみせよう。


*******


気づかれないように。
少しずつ。

大学には、編入届けを出して。
書類選考で、行く先の京都F大学に
編入が決まった。

家族にも誰にも知られずに。
金曜日の朝、荷物を送り出し。
あたしは、普通どうりに授業にでて。
そして、お昼の新幹線に乗った。

あたしを誰も知らない街。
でも、和に携わっていたかった。
だから、京の街に決めた。

すぐに、不動産屋へ行き、
鍵を貰って部屋に荷物を置いて。
大学へ行き、編入手続きを済ませた。

家は大学から歩いて10分。
年季が入ってるけど、十分なアパートが
借りられた。
10分の間にあった、ファミレスでもすぐに
バイトも決まり一安心。

さあ、新しい生活が始まる.......。


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