落合順平 作品集

現代小説の部屋。

北へふたり旅(49) 北へ行こう⑤

2019-11-02 14:16:25 | 現代小説
北へふたり旅(49) 


 
 「8月最後の週。月曜から3泊4日で北海道旅行を考えています。
 きままな2人の自由旅、という形でお願いしたいのですが。
 移動はすべて鉄道でお願いします」


 「8月27日から4日間、個人型のフリープランですね。承知しました。
 宿泊地のご希望はございますか?」
 
 「1日目は函館。2日目と3日目は札幌を考えています」


 スーパーマーケット内、JTBの窓口は今日も空いていた。
待つ必要もなく「どうぞ」と、いつもの女の子に案内された。




 「函館ですと市内のホテルと、ちかくの温泉におすすめがございます。
 どちらをとりましょうか?」


 「温泉?。函館に温泉があるのですか?」


 「北海道の三大温泉の一つ、湯の川温泉です」


 「移動は?」


 「鉄道は函館までです。その先はバスかタクシーの移動になります。
 函館駅から温泉まで、20分から25分ほどです」
 
 温泉と聞いてこころが動いた。
しかし。鉄道が接続していないと聞いて躊躇した。
2人ともうまれてはじめての鉄道旅だ。
移動が複雑化すると負担がおおくなる。疲れすぎないか心配になる。


 「市内でホテルをとってください」


 函館市内のホテルのパンフレットがひろがる。
函館で観光したいのは朝市と、赤レンガ倉庫と函館の夜景。
「それでしたら、こちらがおすすめです」女の子がひとつのホテルを指ししめす。


 「ただし。追加料金がかかります」とほほ笑む。


 「追加料金?」


 「はい。こちらは7000円が追加されます」


 基本料金と追加料金・・・なんだそれ?。
なるほど。パンフレットをよく見ると料金別にホテルがランク分けしてある。
 
 (一泊目です。しょうしょう奮発しても大丈夫。
 そのかわり連泊の札幌は、規定料金のホテルにしましょう)と妻がささやく。


 「じゃそこ。ラビスタ函館べィで」


 「承知しました。空きがあるかどうか確認してみます」


 女の子がパソコンを操作する。
季節や曜日の条件により、ホテルの値段は変動する。


 「とれました。8月27日。
 ラビスタ函館べィ お二人様。
 ご希望通り、喫煙室が確保できました」


 驚いた。
健康増進法で禁煙が進む中、喫煙営業しているホテルがいまだに有った!。
妻と娘はいまだ愛煙家のまま。
「やめたいんだけど・・・」苦笑しつつ、いまも娘と2人で煙草をふかしている。



 ダメもとで喫煙室を希望した。
しかし函館でトップランクのホテルで、喫煙室を確保できるとは
夢にも思っていなかった。
この結果に妻はおおいによろこんだ。
ついに妻はいつも空いているこのJTBの、熱狂的大ファンになった。


  
(50)へつづく