君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
二次小説とオリジナル小説の置き場となっています。
同人に傾いているので入室注意★

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☆入室ありがとうございます☆ PN:真城灯火です。 『小説家になろう』で書いています。「なろう」で書いている小説も転載させていますが、ここはアニメ「地球へ…」の二次小説置き場です。本編の『君がいる幸せ』は終了しています。今は続編の『限りある永遠』を連載中です☆まずは、カテゴリーの「はじめに」と「目次」「年表」で(設定やR指定について等…)ご確認の上、お進み下さい。 ブログタイトルですが、これの「君」は自分自身、心の事で、「僕」は自分の身体の事です。 自分の心がそうであるなら、自分はそれに従う覚悟を意味しています。 だから、ジョミーや誰かが一方的に誰かに…って意味ではありません。(小説停滞中) 2021年に、他にあるブログを統合させたので、日常の駄文とゲームの話が混ざった状態になっています。

『君がいる幸せ』 一章「黄昏の海」二話(Yggdrasill)※BL含む^^;

2011-06-14 00:32:59 | 『君がいる幸せ』(本編)一章「黄昏の海」
※アニメ「地球へ…」の二次小説です

  「君がいる幸せ」

  一章「黄昏の海」二話

  三年前・大戦中 Yggdrasill
「キース?」
ジョミーはキースの異変に気がついたが、その意図が計れずにいた。
だがそのままにしておく訳にもいかずに、「何があった?」と言いながらキースに近づいた

 ジョミーはキースより身長が低いので、下を向いているキースの顔を見るには自然と覗き込む形になる。
「何でもない…」キースがジョミーを見た瞬間、幻聴だけでなく黒髪の少年がそこにいた。
「!」
 思いもかけない事に衝撃を受けて、キースは壁まで後ずさった。そのままキースは壁にもたれかかるように何かにこらえていた。
 顔色が真っ青になっていても「大丈夫だ」と言うキースを見て、ジョミーは精神力強い彼をここまでするものは何か?と用心深く周囲を探った。
 イグドラシルでは極端にミュウの能力は制限される。そうも簡単に侵入出来るものではない。
 キースの身に起こっている事はミュウの力でもなく、マザーがやっている事でもないとジョミーは気づく。
 これは、キース自身の何か。だが、それは一体何だ?
 何もない空間を用心深く見るジョミーの前をふっと何かが通りすぎた。
「これは…思念?」
 誰の?
「ああ…」
 この思念を僕は知っている。僕は助けられなかった。
 そうか、彼はずっとキースの傍に居たんだ。叶えられない想いをずっと抱えたまま、そして見守り続けていた。
 ずっとこうして、傍に。ジョミーがその思念を認知したからか、その姿が少しずつはっきりと見えるようになってきた。
 やがて、薄く淡く白く光りキースの目の前に現れた。
「シロエ…」
 キースが小さくつぶやく。
「キース、思い出したのか?」
「いや、誰なんだ。これは何だ。お前がやっているのか?」
「僕じゃない。これは人の想いの塊」そう答えると同時にジョミーは淡く光るシロエにも話しかけていた。
(何故今になって?)
(ここで何をしたいんだ?)
 もちろん、答えはない。
 言いたいことは僕ではなくキースにあるから、僕には聞こえないのかもしれない。
 彼が、キースがシロエを思い出すのが一番良いように思ったが…それを待っている時間はない。ジョミーは厳しい目でキースを見た。
 降下は続いている。
 このままでは多分シロエは消えてしまう。
 ジョミーは再びシロエに話かける。
(助けられないのは、もう嫌なんだ)
「セキ・レイ・シロエ!」
 ジョミーがそう呼ぶとシロエはゆっくりと振り返った。その光景を見て「知っているのか?」とキースが言った。
「キース、貴方も知っている。彼は君と同じ教育ステーションの学生だ」
「何?私は忘れているのか?」
 ジョミーは慎重に二人を見ながら話した。
「そう、思い出すんだキース。君達は辛い体験だけをして、そして、マザー・イライザに忘れさせられたんだ。学生たちは幾度となく記憶を操作させられている。君も例外なくだ。不都合な記憶を思い出すと消される。覚えているか?僕の事を忘れたサムを」
「あぁ…」
 キースはサムや他の学生達が記憶の操作をさせられている事を知っていた。

 突然緩やかな振動とともにエレベーターが停止する。
 静かに暗闇がおとずれた。
 キース少しふらつきながらもコントロールパネルを開け何が起きたのかを調べ始める。そして何かの危険を察知し機械が止まったようだと言った。
 ぼうっと淡く光るシロエ。
 これはシロエがやった事なのか?ゆっくりとシロエに近づきながらジョミーは言った。
「シロエ、僕は君に謝らないといけない。僕は君を助けられなかった」
 そうしてジョミーはシロエを優しく抱きしめた。
(でも、キースに会えた。それで充分)かすかに聞こえてきたそれはシロエの声だった。
 ジョミーは声が聞こえた事に驚いた。だが、このとても弱い思念ではキースには聞こえないだろう。ジョミーの腕の中のシロエが見つめる先には彼がいる。
 抱きしめたシロエから感情が溢れてくる。
 とても優しく、悲しくそして切ない感情が…。
「君はそれほどまでに…」
 ジョミーはシロエを抱きしめたまま、そっと囁いた。
「僕の身体を、貸そうか…」
 シロエは一瞬ジョミーを見てから、溶け込むようにジョミーの中に消えていった。
 さっきまで感じていたモノより数倍強い今にも泣き出してしまいそうな想いが襲ってきた。
 それを愛と自覚する事もなく、伝える事も出来なかったシロエの想い。
 人の想いの強さに耐えながらジョミーはその想いに意識を集中させキースに向かって歩き出した。
 伝えなければ…。
 段々と意識がシロエになってゆくのを感じながら…。
 キースはせめて非常電源だけでも作動させようとカードキーを差し込んだ。小さな明かりが灯った。
 薄暗がりの中、その背後にジョミーが近づいてくるのがわかり、とっさに銃に手をかけた。
「先輩」
 振り返ると、そこには制服を着たシロエがいた。
「先輩、何をしているんです?」
「無駄ですよ」
 シロエは銃を構えようとした腕に触れてくる。
 シロエから伝わる体温。
「俺は…」
 キースはまだ思い出せない自分を歯がゆく思いはじめていた時に、大きくエレベーターが揺れて倒れそうになったシロエを抱きとめた。
「キース」
 見上げてくる大きな黒い瞳、懐かしい声。
「あなたは何もわかってない」とシロエが言う。
「かわいそうなキース。僕があなたに興味を持ち、そして好きになってしまったばかりにあなたは僕を殺さなくてはいけなくなった。僕がいるから、ミュウがいるからいけないと思うように仕向けられた。そして僕は忘れられた」
「シロエ…」
(泣かないで…キース)
 キースは泣いていた。
 まだ全ては思い出せていないが、胸を締め付ける痛みは甦ってきていた。
 苦しくて、切なくて、何の力もない自分をどれだけ憎んだか…。涙があふれてとまらなかった。
(泣かないで…)
「キース、僕はあなたを愛してます」
 シロエはキースの首に腕をまわし口づけをする。少し驚いたキースだったが、その想いに答える。
 今度はキースから口づけた。

 唇を離した時にはもうキースの目にシロエは見えなかった。
 目の前のシロエだったジョミーを見下ろし、その緑の瞳を見つめ、顎に手をあて唇を少し開けさせるともう一度口づけをした。
 二人の背後で機能回復の文字が流れる。
 回復まであと何秒とカウントダウンが始まり少しずつ明るくなってゆく。
 やがて、静かに降下しはじめた。


   黄昏の海 三話 へつづく