君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

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『君がいる幸せ』 一章「黄昏の海」一話(Yggdrasill)

2011-06-12 18:00:00 | 『君がいる幸せ』(本編)一章「黄昏の海」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です

 「君がいる幸せ」

  一章「黄昏の海」

  一話(Yggdrasill)現在
 キースとジョミーは忙しい合間をぬってなるべく会うようにと決めていたので、今日もジョミーが部屋にやってきた。
 キースは出迎えずにそのまま仕事を続けていた。
「ねぇ、キース。人を好きになるってどういう事なんだろう?」と聞いてきた。
 その問いに返事をしないでいると「種の存続の為?」と微妙な事を言いだした。何かあったのかと聞くと、シャングリラで自然分娩で出産があったという事だった。
 危険なことをしているんだなと思ったが、「子供はかわいいよ」と喜ぶジョミーを見ると言えなかった。
「それなら何故さっきの質問になる?」
「好きならいっぱいいるからよく解らなくて」
 こいつの好きは幅が広すぎるようだ…。下手すると木とか花とかも好きで助ける対象になってしまうのかもしれない。
「許容量が大き過ぎるのも困りものだな」と俺は興味なさげに皮肉った。
「そう?…そうなのかな…」と答えるジョミー。
「だいたい敵意しか人から受けたことのない俺に聞くな」
 これでこの会話は終わったようで、ジョミーは自分の部屋に戻って行った。
「機械の申し子になる必要はどこにもないよ」とだけ残して…。


 機械の申し子とは懐かしい。記憶が遡る……


  三年前・大戦中  イグドラシル内

「キース…」
 何者かに呼ばれた気がした夢の中で… 懐かしい声で… 。
「キース・アニアン」と呼ばれなくなってもう何年になるのだろう。
 皆、私の事を「国家主席」と呼ぶ、私個人などどこにもいない。
 夢の中で俺を呼んでいたのは、誰だ。
「キースと名前で呼んでいたのは、マツカ…」だが…マツカではないような気がした。
 大切な事を忘れてはいけない事を、忘れてしまっているような気がしていた。
 そんな感傷に浸ってしまうのは、明日はミュウとの会談が行われるからだろうか?
 最終段階にあってマザーに覚えた違和感。ここ何年かマザーと意見が違う事がなかった。
「人類の為に行う行為」に関して異論などない。
 自分の意思にマザーが添っているのでは?と錯覚する時さえあった。
 心の中では真逆を思いつつ行動することなど何の罪悪感もなかった。
 人類の為に作られた自分であるならば、当然な行為で当然マザーと同じなはずだ。
 同じはずなどないのにな…。

「ミュウの長 ジョミー・マーキス・シン」
「人類統合機構国家主席 キース・アニアン」
 お互いの肩書きを名乗って対談が始まった。
 対話など茶番劇に過ぎない…彼らは何を信じ、何を求めここへ来たのだろう。
「キース、人はそれで生きているといえるか?」とジョミーが言う。
 言えるはずないだろう?と思う。
 ジョミーと対峙したのは惑星ジルベスター7。ミュウ達がナスカと呼ぶあの星以来…。
 ミュウの長ジョミーは俺の唯一の友人サムの親友だった。スウェナも友人だ。
 ソルジャーブルーが連れ出したフィシス。そのフィシスの遺伝子データを元にして作られた個体キース。それが俺だ。
 この事実とこの繋がり。
 マザーは何をさせようというのだろうか?
 いや、自分は何をするべきだったのだろうか?
 出した答えに不安などない。
 人は人で生きるべきだ。

 グランド・マザーの許に向かうエレベーターがカナリアの部屋を過ぎて、ジョミーと二人になった時に会話を切る為にサムの死を出してしまった所為か、教育ステーションのモニターに映るジョミーの姿を初めて見た時を思い出した。
 キースが 「お前は変わってないな」とつぶやいた時、昨日の夢の中の何者かの声が聴こえてきた気がした。
「キース?」
 自分を呼ぶジョミーの声は聞こえているのに違う声が、あの懐かしい声がかぶってくる。
「どうも…私は疲れているようだ」
 キースは首を振ったが、幻聴は消えてくれなかった。


   黄昏の海 二話 へつづく




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