☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<用語>
惑星ノア 人類の首都星
惑星メサイア ミュウの星 ノアに近い位置にある
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 戦後十二人の代表で議会制になる
<人物>
ジョミー ノア前副首相 ジュピターという宇宙の軍を動かせる権限を持っていた
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任していたが…
セルジュ 軍事惑星ペセトラの評議会議長代理(現在、軍部で最高位)
『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 二章六話
ベリアルの深層心理
「これが真実か…」
ベリアルはため息交じりにそう呟く。
世界が揺らぐ、もうここには居られない。もう、少し…。とジョミーは願った。
「覚えているかい?あの後、アガレスはどうなったか知りたい」
「記憶は無いが、知らべてみた事がある。ミュウに情報を流した罪で投獄されて、十年後に死んだ」
「…そうか…。だから、君は僕を恨んでいるのか?」
「今はもう…」
ベリアルは言い澱んだ。
「ジョミー。今のだと、あの時、突入してきたのは普通の兵隊だった。最初から、一緒にいるのがミュウだとわかっていたなら、対ミュウ部隊が来る筈だ」
「ううん。あの頃はまだメンバーズエリートの一部で訓練された対ミュウ部隊が出来た頃。突入して来たのが彼らだったら…」
「なら、お前が居たから兵士が来たのは、間違いなのか?」
「多分。僕がいるとは知らなかったのだと思う。ミュウが居ると知っていたら、あの時代は…大戦中なら捕えようとはしない。たとえ、普通の兵士でも、ミュウが居るとわかっていたなら、体の自由を奪うなんて事はしない。直接、ここ、脳を狙って撃つ筈、ミュウは頭さえあれば能力が使えるのだから…」
と、ジョミーは自分の頭を撃つ真似をした。
「…では…最初から…アガレスを狙って?」
「あの時の銃弾で君たちが死んでいるかもしれないと思っていた」
「父と同じ…アガレス・ベリアルの名をもらった。育英都市に送られ、四年後、成人検査を受け、記憶を消された、だが、あの時の記憶は完全には消えず、ジョミーという名前の少女のイメージだけが微かに残っていた」
「君と僕が会った事で、君は同郷のセドルにその話をした」
「ミュウでジョミーと言うと、ソルジャー・シンしかいない」
「セドルの深層で僕が、何故、女性化していたのかの意味がわかったよ」
「…それだけ衝撃的だったって事だろうな…」
「ベリアル。君の疑問はまだあるね」
「何故、子どもがアガレス・ベリアルと居たのか…」
世界が揺らぐ。時間がない。
誰かが僕を呼んでいる…。
「ベリアル。僕は…」
「ジョミー。お前の所為で父が死んだと言う方が楽だった」
「アガレス・ベリアル・ジュニア」
「目が覚めたら、まだ…」
「いいよ。僕を恨んでいればいい」
ベリアルはゆっくりと頷いた。
世界が変わった。
記憶の彼方へ(過去)
思いに引きずられるようにジョミーの心は過去に跳んでいた。そこは、アガレス・ベリアルの事件の直後だった。
ジョミーが目を覚ますと、そこは、白い世界だった。
「ジョミー」
あの優しい声がした。
「……」
うつ伏せで寝ていた僕は、ゆっくりと頭を起こした。そこはブルーの部屋、彼のベッドの上だった。隣を見てもブルーは居なかった。
「ブルー?」
「ジョミー」
とまた声がした。
僕はその声の方を見ることなく、寝たふりをするように枕に顔を埋めて、言った。
「…何故、僕をこんな強引に呼んだのですか…」
「顔が腫れているね…」
「何でもありません」
そう言って、ますます枕に顔を埋めた。
「そんな風ではいけないよ」
「何も言わないでください」
「心配なんだ。いつか、きっと、辛い思いをする時がくる」
「…良いです」
「君の心が壊れてしまうよ」
「僕は、皆ほど柔じゃありません」
「ジョミー」
「もう…何も言わないでください。わかっているとも、わかっていないともです。何も聞きたくない」
「今は、ここで眠るといい…」
そう言うと、ブルーは部屋を出て行った。
「ハーレイ。感情にまかせてジョミーを殴るのは筋違いだ。それは、君の都合でしかない」
「ですが、ブルー」
「彼の行動を見逃せとは言わない。止めたいのはわかる…誰かが教えなくてはいけない。無理をするのと無茶をするのは違うのだと…」
「情報が欲しいと焦っているのです」
「潜入出来るだけの能力が彼にはある。力を使っても感知されないと…」
「ブルー。私が居ます。もうジョミーから目を離しません」
「すまないハーレイ。僕がもっと長く起きて居られたら、僕がジョミーを殴っていただろう」
「……ブルー」
何も言わないで欲しい。何か言って欲しい。
僕は皆に心配をかけたくてあんな事をした訳じゃない。
叱られたい訳でも、褒められたい訳でも無い。
「で…も…何も出来ないのが…嫌なんです」
もう…何も…見たくない。
何も聞きたくない。
「僕の側で、眠ってゆけばいい」
ブルー。
「心配なんだ」
いつ果てるともわからないこの戦いの中で、僕は何をすればいい。
何を…。
部屋の空気が静かに変わった。
「……ブルー?」
「ジョミー。起きた?」
「この部屋から出ていいですか?」
僕は斜め上のブルーの顔を見ながら言った。
「まだ…ダメ」
「どうして?」
「僕はまだ君をここへ連れてきた目的を果たしていないから…」
「ハレーイに叱られた僕を見たかったんじゃないですか?」
「ううん。違うよ。君を抱いていい?」
「…え?」
「ジョミー…いい?」
「あ、あの…」
「それすらも、僕には許されていない?」
「い…いいえ…。そうじゃなくて…」
僕はこの時になって、初めて自分のしてきた行為を後悔した。
「あ…あの…僕は…もう…あなたのジョミーではありません。何も知らず何も…」
「違う…僕はそんな言葉を聞きたいんじゃない…。ジョミー、僕を救って欲しいんだ」
「ブルー…」
「ねぇ、ジョミー。このままだと、いつか、僕が君を殺してしまう」
「……」
「人類をこの手で滅ぼしてもいいと思ってしまう。その前に…」
とても、心が痛い。
君の未来に幸あれと願うよ。
僕らはどこまで罪作りなんだろう。
願い、求め。手に入れた。
その未来まで僕の手に委ねさせた。
どうか、僕の先に、君がゆくのなら、そこには…。
愛と共に君が笑っていられますように。
その為なら、何でもしよう。
「ジョミー。愛している」
「僕は願うよ。君の未来を…」
過去が僕に追いうちをかける。
僕はこの事件の後では身体を使うような事はしなくなった。
魅惑の能力を開発して、人を勝手に動かせるようになっていった。
「ブルー。愛しています」
地球再生の時間を超えたその先で貴方に会えるのなら…。
そう思って生きてきた。
今僕は、それを否定して生きるのを選んだ。
彼の為に…。
僕は過去の僕に反撃をする。
そう僕は、今を生きるのを選んだんだ。
つづく
※話がセドルに戻ります。
<用語>
惑星ノア 人類の首都星
惑星メサイア ミュウの星 ノアに近い位置にある
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 戦後十二人の代表で議会制になる
<人物>
ジョミー ノア前副首相 ジュピターという宇宙の軍を動かせる権限を持っていた
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任していたが…
セルジュ 軍事惑星ペセトラの評議会議長代理(現在、軍部で最高位)
『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 二章六話
ベリアルの深層心理
「これが真実か…」
ベリアルはため息交じりにそう呟く。
世界が揺らぐ、もうここには居られない。もう、少し…。とジョミーは願った。
「覚えているかい?あの後、アガレスはどうなったか知りたい」
「記憶は無いが、知らべてみた事がある。ミュウに情報を流した罪で投獄されて、十年後に死んだ」
「…そうか…。だから、君は僕を恨んでいるのか?」
「今はもう…」
ベリアルは言い澱んだ。
「ジョミー。今のだと、あの時、突入してきたのは普通の兵隊だった。最初から、一緒にいるのがミュウだとわかっていたなら、対ミュウ部隊が来る筈だ」
「ううん。あの頃はまだメンバーズエリートの一部で訓練された対ミュウ部隊が出来た頃。突入して来たのが彼らだったら…」
「なら、お前が居たから兵士が来たのは、間違いなのか?」
「多分。僕がいるとは知らなかったのだと思う。ミュウが居ると知っていたら、あの時代は…大戦中なら捕えようとはしない。たとえ、普通の兵士でも、ミュウが居るとわかっていたなら、体の自由を奪うなんて事はしない。直接、ここ、脳を狙って撃つ筈、ミュウは頭さえあれば能力が使えるのだから…」
と、ジョミーは自分の頭を撃つ真似をした。
「…では…最初から…アガレスを狙って?」
「あの時の銃弾で君たちが死んでいるかもしれないと思っていた」
「父と同じ…アガレス・ベリアルの名をもらった。育英都市に送られ、四年後、成人検査を受け、記憶を消された、だが、あの時の記憶は完全には消えず、ジョミーという名前の少女のイメージだけが微かに残っていた」
「君と僕が会った事で、君は同郷のセドルにその話をした」
「ミュウでジョミーと言うと、ソルジャー・シンしかいない」
「セドルの深層で僕が、何故、女性化していたのかの意味がわかったよ」
「…それだけ衝撃的だったって事だろうな…」
「ベリアル。君の疑問はまだあるね」
「何故、子どもがアガレス・ベリアルと居たのか…」
世界が揺らぐ。時間がない。
誰かが僕を呼んでいる…。
「ベリアル。僕は…」
「ジョミー。お前の所為で父が死んだと言う方が楽だった」
「アガレス・ベリアル・ジュニア」
「目が覚めたら、まだ…」
「いいよ。僕を恨んでいればいい」
ベリアルはゆっくりと頷いた。
世界が変わった。
記憶の彼方へ(過去)
思いに引きずられるようにジョミーの心は過去に跳んでいた。そこは、アガレス・ベリアルの事件の直後だった。
ジョミーが目を覚ますと、そこは、白い世界だった。
「ジョミー」
あの優しい声がした。
「……」
うつ伏せで寝ていた僕は、ゆっくりと頭を起こした。そこはブルーの部屋、彼のベッドの上だった。隣を見てもブルーは居なかった。
「ブルー?」
「ジョミー」
とまた声がした。
僕はその声の方を見ることなく、寝たふりをするように枕に顔を埋めて、言った。
「…何故、僕をこんな強引に呼んだのですか…」
「顔が腫れているね…」
「何でもありません」
そう言って、ますます枕に顔を埋めた。
「そんな風ではいけないよ」
「何も言わないでください」
「心配なんだ。いつか、きっと、辛い思いをする時がくる」
「…良いです」
「君の心が壊れてしまうよ」
「僕は、皆ほど柔じゃありません」
「ジョミー」
「もう…何も言わないでください。わかっているとも、わかっていないともです。何も聞きたくない」
「今は、ここで眠るといい…」
そう言うと、ブルーは部屋を出て行った。
「ハーレイ。感情にまかせてジョミーを殴るのは筋違いだ。それは、君の都合でしかない」
「ですが、ブルー」
「彼の行動を見逃せとは言わない。止めたいのはわかる…誰かが教えなくてはいけない。無理をするのと無茶をするのは違うのだと…」
「情報が欲しいと焦っているのです」
「潜入出来るだけの能力が彼にはある。力を使っても感知されないと…」
「ブルー。私が居ます。もうジョミーから目を離しません」
「すまないハーレイ。僕がもっと長く起きて居られたら、僕がジョミーを殴っていただろう」
「……ブルー」
何も言わないで欲しい。何か言って欲しい。
僕は皆に心配をかけたくてあんな事をした訳じゃない。
叱られたい訳でも、褒められたい訳でも無い。
「で…も…何も出来ないのが…嫌なんです」
もう…何も…見たくない。
何も聞きたくない。
「僕の側で、眠ってゆけばいい」
ブルー。
「心配なんだ」
いつ果てるともわからないこの戦いの中で、僕は何をすればいい。
何を…。
部屋の空気が静かに変わった。
「……ブルー?」
「ジョミー。起きた?」
「この部屋から出ていいですか?」
僕は斜め上のブルーの顔を見ながら言った。
「まだ…ダメ」
「どうして?」
「僕はまだ君をここへ連れてきた目的を果たしていないから…」
「ハレーイに叱られた僕を見たかったんじゃないですか?」
「ううん。違うよ。君を抱いていい?」
「…え?」
「ジョミー…いい?」
「あ、あの…」
「それすらも、僕には許されていない?」
「い…いいえ…。そうじゃなくて…」
僕はこの時になって、初めて自分のしてきた行為を後悔した。
「あ…あの…僕は…もう…あなたのジョミーではありません。何も知らず何も…」
「違う…僕はそんな言葉を聞きたいんじゃない…。ジョミー、僕を救って欲しいんだ」
「ブルー…」
「ねぇ、ジョミー。このままだと、いつか、僕が君を殺してしまう」
「……」
「人類をこの手で滅ぼしてもいいと思ってしまう。その前に…」
とても、心が痛い。
君の未来に幸あれと願うよ。
僕らはどこまで罪作りなんだろう。
願い、求め。手に入れた。
その未来まで僕の手に委ねさせた。
どうか、僕の先に、君がゆくのなら、そこには…。
愛と共に君が笑っていられますように。
その為なら、何でもしよう。
「ジョミー。愛している」
「僕は願うよ。君の未来を…」
過去が僕に追いうちをかける。
僕はこの事件の後では身体を使うような事はしなくなった。
魅惑の能力を開発して、人を勝手に動かせるようになっていった。
「ブルー。愛しています」
地球再生の時間を超えたその先で貴方に会えるのなら…。
そう思って生きてきた。
今僕は、それを否定して生きるのを選んだ。
彼の為に…。
僕は過去の僕に反撃をする。
そう僕は、今を生きるのを選んだんだ。
つづく
※話がセドルに戻ります。
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