君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
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☆入室ありがとうございます☆ PN:真城灯火です。 『小説家になろう』で書いています。「なろう」で書いている小説も転載させていますが、ここはアニメ「地球へ…」の二次小説置き場です。本編の『君がいる幸せ』は終了しています。今は続編の『限りある永遠』を連載中です☆まずは、カテゴリーの「はじめに」と「目次」「年表」で(設定やR指定について等…)ご確認の上、お進み下さい。 ブログタイトルですが、これの「君」は自分自身、心の事で、「僕」は自分の身体の事です。 自分の心がそうであるなら、自分はそれに従う覚悟を意味しています。 だから、ジョミーや誰かが一方的に誰かに…って意味ではありません。(小説停滞中) 2021年に、他にあるブログを統合させたので、日常の駄文とゲームの話が混ざった状態になっています。

『君がいる幸せ』 Missing-link編 「伝えたい言葉」一話

2013-01-27 04:16:00 | 『君がいる幸せ』 Missing-link編
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
  <ここまでのあらすじ>
 地球へとたどり着いたミュウ。地球での対話の後、イグドラシル崩壊から無事に生還したジョミーとキース。
 大戦後、太陽系の木星の基地だった「メティス」から動かないミュウ達。そこを出て人類の中へ。キースの許へ一人向かうジョミー。木星で療養中のキースは戸惑いながらも彼を受け入れる。
 大戦で人間たちは未来と自由を手に入れたかにみえたが、ジョミーには、もう一つの未来を作る使命があった。それは、「地球再生」その謎を追うジョミー。
 キースはジョミーを迎えた。そして悩み苦悩する姿をみて思わず言った「俺を(人間を)好きになればいい」という言葉からジョミーはキースを意識しはじめる。
 木星でキースの護衛をしながら、ジュピターという軍も動かせる権限を与えられるジョミー。そんな木星での暮らしが二年過ぎ、やっと重い腰を上げたミュウ達は人類に用意された新しい星「メサイア」へと移住する事になった。
 それと同時に動き出した新たな「敵」
 カナリア達が住む「スメール」でブルーのクローンの攻撃を受けたジョミー。防ぎきれなかったジョミーは思念を何人にも分割されてしまう。やがて、現れる盗まれた最後の「メギド」それはミュウ達の移住先の惑星「メサイア」と人類の首都星「ノア」を攻撃をしようとしていた。その計画を察知していたキース率いる人類軍とジョミーは協力して対抗する。
 敵であるブルーとジョミーのクローンの二人の寝返りもあり、彼らの力を借りて何とか防ぐミュウ達。 この事件でミュウ達はメサイアが自分達の星なのだと思いはじめる。
 二人のクローンはソルジャーズと呼ばれるようになる。
 「スメール」でのクローンのブルーからの攻撃を受けた際に助けにきたのはキースだった事や、キース自身も問題を抱えながらも人類全体の為に前向きに進むのを身近で見てジョミーの彼への認識が変わってゆく。
 その心が、感情だけが先に動くようにキースに「好きだ」と告げるジョミー。
 そんな危い状態のジョミーを見た事がなかったシドは、木星でジョミーを一人で船(シャングリラ)から降ろしてしまった自責の念と今度は彼の信頼を得て一番近くで助けたいと願うようになる。恋愛感情も含まれるシドの思い。シドは度々思いを遂げようとするが、友人でありたいと強く思うジョミーに拒まれ続ける。
 人類はミュウを受け入れ始めた。だが問題は残されている。
 改革へと乗り出したキースは政治の表舞台へと戻っていった。「ノア」の首相に返り咲くキース。そしてノアは議会制へと変わっていった。その十二人評議会には長い間キースの許で働き軍の学校の教官をしていたセルジュが入った。
 様々な問題を残したまま死ねないと思い始めたジョミーに「地球再生」の時間が迫る。
 そして、「地球再生」の時、ジョミーはトォニィではなく、クローンのブルーの前で倒れてしまう。

 「地球再生」の時空の彼方で出会ったブルーとの邂逅を経て、ブルーの願いや想いを知り、望みを持って能力を解放する。青い地球を眺めるブルーとジョミー。そして小さなひと欠片となったジョミーは最後の力で現在(いま)へと帰還する。
 ジョミーは会いたいと願ったキースの前に現れた。
(↑本編)

(↓続編)
 死を覚悟して向かった「地球再生」から何とか戻ったジョミーだったが、自分の身体を遺伝子レベルから再構成した為、子供の姿になってしまった。その上、ミュウの能力も無くし、そんな何もかも失った自分を優しく迎えてくれるキース。何も出来ないただの子供になった自分の価値に悩んだジョミーはキースに想いを残しつつも彼から逃げるように「教育ステーション」に入学する。
 そこで待っていたのは、地方の現実だった。
 人類は紛争を繰り返していた。海賊の攻撃でステーション落下の危機を学園の生徒と共に乗り越えたジョミーは自分はミュウの能力が無ければ何も出来ないと思い込みそこから逃げていた自分を恥じた。
 彼の能力は戦闘特化の「タイプブルー」ではなく、結合する能力「タイプオレンジ」へと変化をしていた。
 ステーション落下の事件の後、東方で戦闘が起こる。海賊を利用して軍事から政府転覆を狙った将軍革命は瓦解した。その中、もう一人のクローンと思われていたジョミーがクローンでは無いと発覚する。

 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 戦後十二人の代表で議会制になる
惑星メサイア ミュウの星 ノアに近い位置にある
惑星アルテメシア ジョミーの第二の故郷 ここの教育衛星で学園生活を送る
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 
太陽系木星の軍事衛星メティス 大戦直後キースとジョミーが暮らした都市 
ジュピター キース警護時ジョミーのコードネーム(シャトル所有)
<人物>
ジョミー ノア副首相に就任 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズのブルー 人類が作ったブルーのクローン(タイプブルー)
       ジョミー 本当はジョミーのクローンではない(タイプイエロー)
シド ミュウの優秀なパイロット 今はジョミーの専属

   『君がいる幸せ』 Missing-link編 「伝えたい言葉」一話
※時間軸は「アルテメシア編」の後です。

 僕はやわらかく暖かいベッドで目を覚ました。
「……」
 窓から日が差し込んでくる。
 何処かの星に居るのだろう。
 だが…。ここは?
 手早く服を着て大きな窓から外を見た。
 避暑地と思われるような大きな森の中だった。
 外の景色は本物だ開拓され作られた自然だとしても映像では無かった。
 旧式の暖炉には火がはいっている。
 自分の他に誰かが居るのはわかる。
 何者かが近づいて来る。
 僕はゆっくりとドアに近づきその横に身を隠した。

 ドアが開き黒髪の背の高い男が入って来た。
「何をしている?」
 と、キースが僕に聞いた。
 大きな荷物の下から銃が確実に僕を狙っていた。
 ジョミーの方もキースの首に剣をあてていた。
「君の方こそ、何をしている」
「……」
 僕の顔をじっと見てから彼は銃を静かに下ろした。
 その様子を見て、僕も青い剣を消した。
「調子が悪いんじゃ無かったのか?何故起きてこんな悪ふざけをしている」
「…悪ふざけ?…何がなんだ。ここは何処で。何故、君と一緒に居るんだ?あれから何があった?」
 真剣そのもので聞いてくるジョミー。
「お前の方こそ何があった?あれからとは…いつからだ?」
 その問いを聞いて、混乱した頭を整理するようにジョミーが少し考えてから答えた。
「イグドラシルからだ。僕らは助けられて…まだ起きられる状態では無かったはずだ」
 それを聞いてキースは持っていた荷物をドアの側に置くと、話をしようと言って暖炉の前のソファーに座り僕を呼んだ。

「…これを見てくれ」
 キースは服をまくり上げて自分の腹を見せた。
 そこには古い傷跡があった。
「…これがあの傷だと…言うのか?」
「俺がお前に切りつけた肩の傷、そして、わき腹の傷は無いだろう?」
 ジョミーは服の上から傷口を確認してみた。
「…無い…どういう事だ」
「俺の傷が証拠だ。これはお前の言うような付いたばかりの傷ではないのはわかるな?これはもう十年以上前の傷だ」
「十年以上前!?何故?」
「俺が聞きたい。何故、そんな風に記憶が消えてしまったんだ?」
「…わからない。だけど、今が十年後だと言うなら、その間に起きた事を説明して欲しい…」

 キースはイグドラシル後、木星へにいたミュウが惑星メサイアへ移住した話から、木星や月の事、最後のメギドによる襲撃事件とその時のクローンの二人との出会い。ジョミーが地球再生をして戻った事、そして、最近の東部での戦いの後、ジョミーが副総裁となり、今は休暇中でここに来ている事をかいつまんで話した。
 ジョミーは記憶が全く無い訳ではなくて所々で僅かに残っている部分がある様子だった。
「大戦から…そんなになるんだ…。そして、人類は順調に和平への道を進んでいるんだな…」
 そう言いながら、ジョミーは窓に向かって行って外を眺めた。
「嬉しいんだけど…」
 キースは窓に映るジョミーの顔が苦痛に歪むのを見た。
 キースにはもう十年以上も前の事だとしても、今のジョミーにとってはついこの前の事なのだ。
「…なぜだ…か…」
 混乱しはじめたジョミーを見て、キースは立ち上がり彼の頭を抱えるようにして抱きしめた。
「ジョミー。今は何も考えるな。記憶はきっと戻ってくる。だから考えるな」
「クローンだから記憶が崩壊したのかもしれない…」
「そんな事はない。今は考えるな」
 キースの右手はジョミーの頭を抱え、左腕は身体を押さえてジョミーの髪の中に顔を埋めていた。
 ふいに抱きしめられたジョミーはこの事実に驚いていた。
 さっきの話の、木星のメティスで暮らした二年間と二人で月へ行った事、地球再生の間ずっと待っていた事と、今のキースの態度を見ると、きっと僕たちは普通の同僚では無いだろう。
 僕がいつから彼とそうなっていたのかはわからないが、僕には記憶ではなく覚えがある。

 僕は彼を…。
 そして、彼は僕を…。
 キース、彼のこの匂いを僕は覚えている…。
 そして…この身体も覚えている…。だけど…。
「キース・アニアン…」
「……」
「今の…僕では君に応えられない…。僕は…僕はまだソルジャー・ブルーを愛している」
 心の中に燻る二つの想い。
 身体も心も何かを拒絶しつつ求めるような、苦しさがあった。
「知っているから、ジョミー。それは…わかる」
「ジョナ・マツカを愛しているから?」
 この十四年間、ジョミーの口からマツカの名は出た事が無かった。
 抱きしめるキースの身体が小さく反応した。
 今のジョミーは月でブルーに別れを告げ、トォニィを見送り、クローンを守り、地球再生後に自分の許に戻ってきたジョミーではない。
 十四年間自分を見つめ続けた彼では無いのだ。
 ごまかす事は出来なかった。
「ジョミー。俺は確かにマツカを求めていたかもしれない。自覚が無いが、彼を愛していたのだろう。だが、それは…」
「僕を彼の代わりにするの?」
「代わりなどではない」
「では、何?」
「ジョミー。誰かを忘れないままでいてはいけないのか?忘れていないと、愛せないのか?俺は、あいつを忘れないと誓った。あいつは俺の命を救った。俺は忘れない。だが、お前を愛しているのは事実だ。嘘はない」
「いいよ。僕は彼の代わりでも…」
「代わりではない!」
「良いんだ。誰でも愛する人の最初の相手で、そして、最後の相手で在りたいと願う。誰でもね…。でも、こうして僕らは出会ったんだ。忘れなくていいんだ。忘れないまま愛していこう」

 そう…苦しいよね…。
 忘れられない…。
 誰かを愛して…苦しみが増すんだ…。
 教えて下さい…ソルジャー・ブルー。
 何故、人はこうまでの思いで愛するのだろう?
 いっそ、憎しみで殺したい。
 愛で人が殺せるなら、殺してしまいたい。
 ジョミーの心と裏腹に両手がゆっくりとキースの背中に回り、優しく力をいれて抱きしめた。
 静かに時が流れてゆく。
「ジョミー。俺を殺すか?…それとも…」
 窓ガラスに二人が写るのをキースが見つめる。
 その頭上に青い細い剣が浮かんでいた。
「落としていいぞ。二人で逝こう」

 静かに剣が落下した。
 青い剣が二人を刺し貫いている。
 剣の先から血が滴り、二人の足元に血溜りを作った。






  続く