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どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

どうぶつ・ティータイム(178) 『カスリーン・アイオン・キティの記憶』

2014-07-09 05:09:51 | エッセイ

 

   

 

 

 台風8号の凄まじい映像を見ながら、この強風と豪雨の恐怖に曝されている宮古島や沖縄本島の方々の心中に思いを馳せた。

 昔と違って建物も強固になり、しかも気象予測が格段に進歩し、風速のみならず雨量まで推測できるようになった。

 どの地域にどれだけの降雨があるかわかると、河川の氾濫危険水位もわかるし、山崩れを起こしやすい場所も予測できて、早めの避難勧告を出すこともできる。

 50年に一度の巨大台風ということで、「特別」を冠した警報がいくつも出され今のところ大した被害もなく推移しているが、このまま収まってくれれば画期的な成果になる。

 とはいえ、それでも予想通りいかないのが災害だ。

 台風が去ってから、どっと被害報道がなされたりしないことを願っている。

 

 

 そんななか、自分が経験した台風の恐怖のことを思い出した。

 茨城県の西寄りの地域に住み着いて5年も経たないうちに、夜半木造の家が強風に煽られ家ごと浮き上がるような怖さを味わったことがある。

 もちろん寝てなんかいられない。

 あわてて家中の荷物を移動し、風が吹き付ける南西側の廊下に積み上げた。

 家族6人が荷物の間に座り込み、祈るような気持ちで台風と戦ったのである。

 末っ子の僕が小学校低学年だったと思うのだが、そうした記憶を頼りに調べてみるとどうやらその時の台風は「カスリーン台風」だったらしい。

 当時はキャサリン、キャサリンと呼んでいた気がするから、たぶんこの台風だろうと自分を納得させたのである。

 

 その後、毎年のように台風の上陸が続いた。

 昭和22年のカスリーンの被害をなぞるように、23年アイオン、24年キティと続き、25年には小貝川の大規模決壊を引き起こした。

 アメリカ風の金髪美人が、川沿いの町村を水浸しにし、退いても泥まみれにするのだから、なんとも皮肉な命名法であった。

 直接の水害には遭遇しなかったものの、近くの藤代、取手、龍ケ崎あたりの被害状況を写真で見ると、両親が興奮した様子で喋り合う姿が目に浮かんでくる。

 近年になって治水事業が進み、利根川や小貝川の氾濫はなくなった。

 一方、温暖化による気象の変化は著しく、雨にしろ風にしろ暴力的な印象さえもたらしている。

 人間の備えが高まるにつれて、自然界の脅威がさらに増してくる。

 対決姿勢が鮮明で、今後が心配になる。

 「原発」のことだって無関係ではない。

 万全と思う心の隙を、自然は容赦なく衝いてくる。

 利根川・小貝川の決壊ともども、二度と見たくないものである。

 毎年のように「50年に一度」が来ないことを願うのは、僕だけではあるまい。

 

      (おわり)

 

 

 

 

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8 コメント

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毎年の○○年に一度 (知恵熱おやじ)
2014-07-10 04:02:06
40年に一度50年に一度・・・といわれる現象がいまや気象以外にもいろいろな分野で毎年のように起こるようになってきていますね。

いずれも過剰な人間活動がその根っこにあるようで、先進国においてはもうこれ以上便利になる必要はないのではないぞ、という宇宙のバランスを図ろうという何者かからの警告じゃないのかなんて、勝手に思っているのですが。

これ以上息せき切って走りどこへ行こうというのだ。もうほどほどでいいだろ。人類の皆さん。
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50年に一度 (いわどの山荘主人)
2014-07-10 09:43:34
大変なご経験をされたのですね、
近年の台風・自然災害はおそろしい、予想もつかない出来事おこる、がしかし、貴兄が謂われるように「毎年のように50年一度が来ないように願いたいものです、」
特別警戒予報が毎年出るということは50年が毎年くるということですね。
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幸福シンドローム (tadaox)
2014-07-10 16:30:27
(知恵熱おやじ)様、経済をはじめ過剰に欲しがり幸せを求めようとする人間活動に対し、しっぺ返しがなされている気がします。

国のトップに哲学がないと、地球全体が共倒れになってしまいます。
争いの顕在化は、まさに欲のせめぎあい、他人より幸福になりたいシンドロームというしかありません。

いろいろありがとうございました。
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毎年来るような・・・・ (tadaox)
2014-07-10 16:40:39
(いわどの山荘主人)様、農業をやっていると自然災害は身近に感じる脅威と推察いたします。
これからは「50年に一度」が頻繁に起こりそうな気がします。

なんだか心配が絶えません。
ありがとうございました。

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こんにちは (延岡の山歩人K)
2014-07-12 19:06:15
かって「台風に女性の名前が付けられていた」
その様に伺った事は有りますが
実際にその金髪美人台風によって恐怖体験されたのですね

やはり台風に女性の名前は似合いませんね

現在の様に自然破壊が進んでいるとこの先心配になります。
もう少し自然をいたわる心が欲しいものですね

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名前を変えても大暴れ (tadaox)
2014-07-13 11:27:54
(延岡の山歩人K)様、こんにちは。
昔の話ですみません。
進駐軍の姿が目立たなくなった頃から、台風の名前も女性名から○○号というふうに変わったようです。

あの頃も被害はありましたが、近頃の気象は気性が荒くて怖いぐらいです。
九州の山と花、いつも楽しみにしております。
ありがとうございました。
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伊勢湾台風 (aqua)
2014-07-13 11:37:07
こんにちは

伊勢湾台風は
大きな被害だったと
聞いたことがありますが
tadaoxさまも大変な思いをされたのですね

家が飛ぶような台風とか
考えただけでも恐ろしいです
子供の時の恐怖は
トラウマになられたのではないでしょうか?

最近は10年に一度とか50年に一度
被害は想定外だとか
よく耳にしますが
どれもこれも人災のような気がしてなりません

↑延岡の山歩人Kさまがおっしゃるとおり
もう少し自然をいたわらないと
いつ大変なことが起こっても
手立てがないような気がします

いつもありがとうございます


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i伊勢湾台風は最強・・・・ (tadaox)
2014-07-13 19:13:48
(aqua)様、伊勢湾台風は凄かったと記憶しています。
被害の大きさでは、日本に上陸したなかでも最強クラスではないでしょうか。

裕次郎の歌に風速40メートルという歌詞がありましたが、当時としては強烈なインパクトがありました。
しかし、現在では風速70メートルといった予報が連日出され、当たり前のように聞き流しています。
これからどうなるのか、心配です。
ありがとうございました。

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