海と空との間には
海と空との間には
水平線がありました
水平線のその先に
苦い思い出ありました
赤く沈んだ太陽の
ヴェールのような夕焼けと
黒く分厚い夕闇が
苦さを包んでおりました
思い出は過去?
「NO」・・・・違います
ますます「NOW」・・・・に近づいて
ズキンズキンと痛みます
苦いというのはどんな味?
コーヒーカップの底の底
わずかに沈んだお砂糖の
甘みを含んだ苦さです
御宿・勝浦 通過して
長い黒髪なびきます
途方に暮れた夕間暮れ
交わしたキスがよみがえる
仮の名前をエミちゃんと
日記に記しておきましょう
忘れもしない江見駅の
行く手を示す道しるべ
熱く寄り添う内房線
終着駅は両国と
ともに誓ったはずなのに
線路はいつかすれ違い
歳月は時の積み重ね
長いレールを走り行く
老いさらばえた機関車も
潮風裂いて疾駆する
思い出は今も色あせず
うごめき 血潮が駆けめぐる
海にはずんだ青春が
海を見るたび震えます
色彩が豊かなせいもあるでしょうが、
チラリと覗く男女の仲。
そこに酸っぱさがあるような。
だけど、作者はそれを「思い出」に包んでしまう。
読み返すと、
ますます不思議な魅力に取りつかれました。