1)企業の決算は、「貸借対照表(B/S)」「損益計算書(P/L)」の2つがある。
2)「企業の儲け」を見るのは「損益計算書(P/L)」。
3)決算データは今期だけみるのではなく過去にさかのぼって変化を見る。
企業の決算発表で、株価が大きく動くシーズンとなりました。今回は、企業決算の損益計算書項目の基本的な見方についてレポートします。
主力企業の3月決算(第3四半期)発表が本格化してます。本日も決算発表後に大きく動く銘柄が散見されています。
企業の決算は、基本的に「貸借対照表(B/S)」と「損益計算書(P/L)」と呼ばれる2つでなりたっています。上場企業については、この2つのほかに現金の入金と出金の動きで作成される「キャッシュフロー計算書」の作成が、2000年3月期より義務付けられています。
決算は通常1年間の儲けやかかった費用を計算して、その期間にいくら利益が出たかを確定させることで、年1回の「本決算」、6ヶ月ごとの「中間決算」、現在発表されているのが、3ヶ月ごとの「四半期決算」です。
儲かっている企業ほど投資家に人気となりますので、今回は「企業の儲け」を見るための「損益計算書(P/L)」で、ケンミレの企業情報に表示されている項目をもとに解説します。
1、売上高
売上高とは、企業がモノやサービスを販売することによって得た金額の合計です。企業が儲けを出すための元になるのが売上高といえます。
売上高が増加しないと最終的な儲けを増やすことはむずかしくなりますから、売上高が順調に増加していることが理想です。仮に最終的に儲かっていたとしても、売上高が減少傾向であれば、コストを削減しているとか、企業努力でなんとか利益を確保している場合も考えられます。
2、経常利益
本業以外の儲けを足して、本業でかかった費用以外の損を引いたのが経常利益です。利息支払いや金利の受け取りなど金融収支を含めた儲けとなります。
本業以外の損益といっても、今期だけの損益の場合には含まれません。毎期「経常的に」発生する損益を含みます。今期だけの突発的な利益(株式の売却益など)や損益(天災による被害など)は「特別損益」として、経常利益を計算したあとに調整されます。
したがって、経常利益は企業が通常に活動した結果の利益ですから、企業活動の成果として重視される傾向がありました。
3、当期利益
経常利益から、今期だけの当別な損益や法人税などを差引いたのが当期利益となります。
営業利益、経常利益が順調に伸びていて、当期利益だけあまりにも落ち込んでいる場合は、一時的な損で落ち込んでいると考えられます。
4、1株当期利益
当期利益を発行株数で割ったものが1株当期利益です。米国などは、1株当期利益を重要視する傾向があり、企業決算は1株当期利益の増減で評価される報道が多く見られます。
株価を1株当期利益で割ったのがPER(株価収益率)です。企業の株価が1株当期利益の何倍になっているかで、割安なのか割高なのかを判断する指標です。ただし、業績が悪化傾向にあるとPERは低めになりやすいので、増益率などと比較して考えることが重要となります。
5、1株当たり純資産
期末の純資産額を期末の発行株式数で割った数値です。企業の解散価値ともいわれ、純資産額よりも株価が安いと「PBR1倍割れ」となります。ただし、純資産も企業の業績が悪化していけば減りますから、PBRだけで割安と判断することは危険です。
6、営業利益
売上高から、売上を得るためにかかった様々な経費を差し引いたのが営業利益です。
営業利益が大きく増加していれば、それだけ本業で儲かったと考えられます。また、営業利益と売上高を比較すると、本業で効率よく稼いでいるかどうか(売上高営業利益率)がわかります。
■まとめ
損益計算書は「企業の儲け」をチェックするための重要なデータですが、詳しく分析できなくてもよいので、まずは基本だけ知っておけば十分だと思います。
なぜなら、発表されている決算が良くても、投資家の期待に反すれば「失望売り」で大きく下がる危険性もあるからです。反対に、決算が悪くても「織り込み済み」となって上昇することもあります。つまり、決算データは過去の結果のため、株価はすでに将来を予想して動いているということになります。
このため、業績の判断はそれを専門におこなっているプロでも誤ってしまうことがありますし、実際に発表されないとわからないことですので、わからないことに賭けるのはリスクが高いといえます。
ただし、株式市場全体が大きく下落したときには、業績の良かった銘柄も連れ安することがあります。株式市場が反発するときには、発表されている業績が良い銘柄の方が安心感があると考えられます。
決算発表シーズンでは、業績発表を予想してリスクを取るより、発表された最新の決算をチェックしておき、株式市場全体が下がったら買う銘柄を見つけておく方法が安全だと思います。
そして、決算で重要なことは「変化」です。決算データは今期だけみるのではなく過去にさかのぼって変化を見るようにしましょう。また同業との比較も重要です。株式投資は比較することが基本ですので、「縦の比較(時系列)」と「横の比較(類似業種)」が基本になります。
レポート担当:ケンミレ株式情報 市原 義明